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People's Life -ピープルズ ライフ-  作者: おむ
第二章 ジャックという悪魔
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第十五話 穴

 薄暗い雑木林の中を息を荒げながら走っていたジャックが急に歩みを止めると、抱き抱えられたルキが不思議そうにジャックを見上げた。


 「どうしたん、ですか?」


 ルキの神経毒も回復傾向にあり、手足はまだ動かすことは出来ないみたいだが、会話は問題なく出来るようになっていた。


 「ルキ、お前を襲ったアイツ以外に誰か他に居たか?」

 「いえ、居ませんでした」

 「そうか」


 ルキはエッティア以外見ていないと言ったが十中八九じゅっちゅうはっく、誰かと来ているとジャックは確信していた。

 エッティアの性格やら行動をそれなりに理解しているジャックからしてみれば、彼女が理由もなく、こんな場所に単独で来るはずがないのだ。

 そうなると、丘下へ避難しようと行動していたジャックだったが、丘下にも誰か居るはずだ。そんな場所にルキを連れて行くには危険すぎた。

 ――誰と来ている?ハミルトンか?だけどハミルトンはエッティアを強く憎んでるはずだ。二人で行動はありえない。カルロス…いや、奴はいま戦力外だと思うから論外。そもそも奴らは『個』が強すぎて、集団で行動自体が引っかかる。

 色々と考えるジャックだが、結局何も分からなかった。とりあえずルキと共に丘下に行くことは避けることにした。

 

 「メラにつくってもらった緊急避難用の穴が近くにあったよな?場所覚えてるか?」

 「はい、分かります」


 ルキの指示する場所を歩くと、意外と穴の近場で一分もかからなかった。

 簡易的に木の板と枝や葉で穴は隠されており、穴と言うより雨風を凌ぐための場所みたいなところで、穴の中を三歩進めば目の前は石壁で行き止まりだ。

 穴の壁付近にルキを下ろしてジャックは穴内部で何かを探し始めた。行き止まりの石壁や地面に両手で触っていると、一箇所だけへこんだ。

 その動作が鍵となり、行き止まりの石壁の中心部が水溜まりが波紋を作るように中心から端へと揺らいでいた。


 「よし」


 この状態で中に入ると、この場所とはまったく違う場所へと移動ができる。この先が何処なのかはメラしか知らないがジャックが下見で覗いた時、木を利用して作られたであろう壊れたブランコがあった。

 ジャックはルキを抱き抱えようとしたが、ルキはそれを拒んだ。


 「みんなと一緒に行きます。一人だけでは嫌です!」


 そう言われてしまい、ジャックはルキから離れる。


 「分かった。だが、もし危険になったら迷わず入れよ?」

 「はい」

 

 後頭部をポリポリと掻いた後、体を反転させる。


 「行ってくる」

 「気をつけてください」


 ルキと一時的に別れ、ジャックは一段と走りを速めた。

 星も月も見えない曇天模様で、遠くの方で雷が落ちているようで時折、落雷音がしていた。

 雑木林を抜け、数十メートル先に町が見えてきたと思ったと同時にドォン!と大きな音と共に建物が崩れ、土煙が舞った。


 「石火ラッシュ


 右靴のつま先が土を蹴ったと思ったら、ジャックの姿は数十メートル先の建物の壁まで接近しており、少し肩を上下にして息を吐きながら、建物の端から様子をうかがった。

 黒色のロングコートを着た人物と、大きさが二メートルはありそうな巨大な犬が三人と交戦中なのが確認でき、相対あいたいする三人はジャックの頼れる仲間のステューシー、ウィスラー、ゼフだった。

 ステューシーは右肩から流れる血を左手で押さえて跪き、彼女を守る形でウィスラーとゼフが巨犬と奮闘していたが、状況は明らかに三人側が劣勢だ。

 こんな場所で見ている場合ではないと悟り、ジャックはすぐに動いた。

 建物の陰から姿を現し、


 「石火ラッシュッ!」


 目で追えないスピードで巨犬の顔の側面まで飛び、殴った。

 いつのまにか右手が黒い爪(燃えてない)状態になっており、鉄のように固い拳を顔に食らった巨犬は横倒しになるように倒れる。

 巨犬の後ろでコートのポケットに両手を入れてニタニタとニヤけながら三人を鑑賞していたグラウディーが愛犬が急に倒れ、慌てた様子で巨犬に近寄った。


 「アリス!どうし――」


 ジャックの存在に気づき、口を開く。 


 「君がここに来てくれて助かったよ。もしかしたら逃亡しているんじゃないかと思っていた」

 

 ジャックの登場でステューシーたちが「ジャックさん!」やら「ジャックの旦那!」と叫ぶ中、当の本人はグラビティーを睨みながら、


 「お前、誰だ?派手に荒らしてくれてんじゃねぇか。お前がエッティアを差し向けたのか?」

 「私はグラウディーという者だ。あのクソガキは君のところに行っていたのか。となると…君がこの場に居るという事は、あのガキは君に負けたようだな、肉体は滅びたか?」

 「頭が無い状態で手足がビクビク痙攣していたが、まだ滅びてないだろうな」

 

 心底といった感じで「残念だ」と言い放ち、続けて口を開く。


 「君の縄張りをこんな風にしといて馬鹿なのか?と思うかもしれないんだが…、戻ってこないか?もちろん君のお仲間も一緒で構わない」


 ジャックが口を開く瞬間、彼らの横の建物に何かが当たり、土煙を上げながら崩壊する。ガシャゴシャンと落下物の音がみ、灰色の土煙の中から白い煙を脇やら鼠蹊部からモクモクと発生させる青髪長髪の全裸女が現れる。右手にローアンの立派なツノを掴んで、引きずりながら。

 ジャックはキレ気味に全裸女を見て、

 

 「お前も誰だ」

 「あ?」


 話しかけられた全裸女は怪訝な顔でジャックを見た後、グラウディーを見る。


 「コイツもいいのか?」


 グラウディーが「まだだ」と全裸女に答え、


 「で、どうなんだ?」

 「アイツを殺すんなら考える」

 「…それは無理だ。戦力がいる」

 「なら戻る気はまったくない」

 「そうか…残念だ」


 まったく残念そうな感じではなく、そう言うだろうなと予想していたようだった。そもそも最初の計画では、フレンチ(幼女)の力を借り、無抵抗のまま連れて帰る算段だったのだが、フレンチ(大人)になった今、そんなことが出来なくなった。

 本人に帰る意思が無く、穏便に生捕りにできないならば、グラウディーの選択肢はひとつだけ。


 「フレンチ、コイツも殺していいぞ」

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