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People's Life -ピープルズ ライフ-  作者: おむ
第二章 ジャックという悪魔
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第十話 お仕置き

 揺れる。数秒後に、また揺れた。

 ドォォン…と鈍い音が遠くから聞こえ、少女は体を起こした。

 部屋に同居する新たに補充された三人も扉の向こう側で走る音で目を覚ましていく。

 ドォォン!とまた音がした。だが今度の音はさっきより近かった。

 普段しない音が鳴り、部屋には緊張感が漂い始める。

 バァン!と近くで音が鳴った。腹に響くようなさっきの爆発音と違って、軽い音だった。例えるならば扉を破壊してる音。

 そうこうしている内に、ゆっくりと土床を踏み締めて歩く複数人の足音が聞こえてきた。

 扉の下から漏れる光源が消え、足音もしなくなった。

 ―――扉の前に誰かいる。

 十一番の少女が察すると同時に、目の前の扉がバァン!と音と共に勢いよく開かれた。

 

 「あぁ?なんだ?こいつら」


 両手を前ポケットに入れながら右足で扉を蹴飛ばして開ける男が、十一番の少女を見下ろしながら呟いた。


 「ジャックの兄貴!こっちに汚ねえ人間たちが居ますぜ!殺しますか?」

 

 仲間らしき人からの問いにジャックと呼ばれた目の前の男は、首だけ仲間の方へ向けて叫んだ。


 「襲ってこないなら殺すな!」


 ジャックの開けた扉を横から覗いた人物が、ジャックの耳元で囁いた。


 「あいつらの人質を私たちの奴隷にしませんか?労働力や財源になるかと」

 

 助言をした人物を睨みながら、ジャックは言った。


 「……その考え方を改めろ。奴と同じになりたいのか?」

 「……すみません、ジャックさん」

 「こっちはいいから、おまえも扉を開けてこい」

 「はい」

 

 男がジャックから離れると、固まって動けない少女をしゃがんでジロジロと顎に手を当てて眺めた後、立ち上がって少女に呟いた。


 「風呂に入れ。可愛いが台無しだぞ」

 

 たったそれだけを言って、部屋を出ていった。

 残されたのは、まだ固まって動かない少女と、無防備に開かれた扉だけで、この瞬間から少女を含む人質たちは自由の身となった。

 別に人質を助けにきたヒーローでもない人たちによって。


※※※


 「ああぁああああぁあぁあああああぁぁぁああぁあッ!!!」


 こもったような叫び声でルキは起こされた。

 物として扱われた時期の夢を見ていたせいか、目尻には涙が流れていた。

 ソファーの上で横になって寝ていたらしく、体の上には毛布がかけられていた。

 寝ている体制から座りに移行する際、肉体的疲労は一切感じなかった。これもメラから作ってもらった飲み物のおかげだ。

 副作用の睡魔に負けて寝てしまったようだが、問題はない。

 部屋を見渡すが誰も居ないし、声ひとつ聞こえない。

 ―――さっきの叫び声?は夢の方?

 初めてジャックと会った日の夢を思い出して、頬が緩み笑うルキ。

 あの日から『ルキ』という名を与えられ、彼女の人生は劇的に変わった。

 目を瞑り、またあの夢の残像を思い出そうとした時、ギシギシ……と上の床が軋んだ。

 ―――誰かいる?

 ルキは立ち上がり、迷うことなく二階に続く階段へと向かった。

 二階には部屋が二つある。上がってすぐ右の扉奥にはジャックの仲間が寝るための大部屋と、奥にあるジャックの部屋だ。

 手前の扉を静かに少し開けて覗くが、誰も居なかった。

 となると、残るはジャックの部屋だ。

 ジャックの部屋へと近づくと、小ネズミが通れるか通れないくらいの隙間が開いており、半開き状態からだった。

 ドアノブに触ろうとした瞬間、扉の奥から今度こそはっきりと叫ぶ声が聞こえた。


 「もうやだぁぁぁーーーーッ!!!」


 叫び声を聞き、開ける扉の速度が速かった。

 部屋の光源は窓から差す沈みゆく太陽の光のみで分かりづらいが、二人の人物がベッドの上に居た。

 ベッドに仰向けで倒れる顔見知りの少年であるアレックスと、少年の下半身付近に馬乗りになる知らない人物が。

 馬乗りになる人物は、アレックスのヘソ付近に人差し指を当てて、首を傾げた。


 「次、叫んだらお仕置きするってぇ、エッティア言ったよにぇ?」


 人差し指の先端部分が淡いピンク色に光ると、アレックスは唸るような声で両手でシーツを力一杯に掴んで、体を痙攣させて何かに耐えていた。


 「う…うっ!ううううう!!ッッゥゥゥ!ゥウうッンンんんッ!!!!!ッ」

 「あはぁ⭐︎すっごいにぇ…まだこんなに出るんだぁ…しかものうこぉー……」


 完全に自分の世界に浸っていた馬乗りの人物だったが、扉を開けてきたルキには気づいていたらしく、馬乗りのまま侵入者の方へと首を動かして後ろを向いた。

 振り向いてきた人物には立派な二つの黒いツノが左右に生えていた。

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