第九話 赤、黒、白
カチャカチャと扉が開ける音が聞こえ、少女は三角座りで俯いた顔を上げて身構えた。
扉が開き、目の前に立つ人物はいつも給餌に来る男ではなく、小さな少年だった。左肩が丸見え状態に破れた衣服には三十七と書かれていた。
少年は目が合った少女に話しかけることなく、扉前に置かれた汚物入りのバケツ三つを重たそうに通路側へと両手を使って一つずつ移動し始めた。
少年の身長は小さく、六歳から八歳くらいだろう。そんな男児を見て、可哀想や手伝ってあげようなどの感情は少女になく、ただただ男児を眺めていた。
男児が汚物入りバケツを全て回収すると、空のバケツ三つが部屋内に無造作に置かれ、扉が閉まった。
少女は新たに支給されたバケツを定位置に置き、再び三角座りをして顔を俯き、何も無い一日を祈り目を瞑った。
※※※
どれくらい少女の意識がなかっただろう。「殺すぞ!ババア!」の大きな叫び声で意識が覚醒し、無意識にその場から立った。
出入り口の扉を塞ぐように立つ男が、いきなり立ち上がった少女を見て怪訝な顔をした。
「座れ、女。面倒事を増やすな」
怪訝な顔をした男が腰に携えた棍棒の柄に触れながら言い、少女は無言ですぐに三角座りになった。
状況が掴めず、同居人の老婆に視線を向けると、可愛らしいピンク色のレースが付いたワンピースが地面に落ちていて、土まみれになっていた。そのワンピースを見た少女は全てを理解した。
強制労働を拒否しているのだ。
――――あの人、処分されるなぁ。
約数時間前に目の前で撲殺された青年のように。
同居人三人が一日に居なくなるのは初めてかもと思っていると、二人の男がやってきて、出入り口を塞ぐ男を払いのけて言った。
「十一番、これに着替えろ」
自分の番号を呼ばれ、少女は立ち上がった。渡された物は高級そうなヒラヒラが付いた上下の赤い下着だった。いつもと少し違う系統の下着で、客の趣味かな?と思った少女だったが、別にそれ以上の感情はなく、男四人がいる状態で恥ずかしがることもなく、少女はすぐにその場で全裸になり、渡された下着を身につけた。
「後ろ向け」
後ろを向けの一言だけで少女は回れ右をして両手をお尻側に差し出すと、頑丈そうな金属製の拘束具が両手をガッチリと拘束した。
少女が一連の行動をしている中でも、老婆と男は一悶着をまだ続けていた。
少女の首から下腹部まで垂れ下がる雑に塗られた緑色の紐が結ばれてた。
「扉を出て、右方向にゆっくりと真っ直ぐ進め」
後ろから男が付いてくる形で少女は言われた通りに進む。
進んでいる最中、自分と同じく後ろ手に拘束された女性数名とすれ違った。九歳くらいの女児、自分と同じくらいの少女、六十歳を超えた老婆の女性三人全員が声を抑えて目から涙を流していた。自分と同じくらいであろう十五、六歳くらいの少女に至ったは、全裸の状態で首を絞められたようなアザがあった。
――――酷い客に選ばれたのかな。
「止まれ」
男から指示が出て、少女はすぐに足を止めた。
足を止めた左側の壁に扉があり、扉の上には『01』と書かれていた。
「全員集まるまで、ここで待機だ」
「はい」
四人並んで通行できるほどの幅はあるが、邪魔にならないように少女は壁際におでこを付けて待機した。
待機して数分が経ち、少女と同じく拘束された女性数名が集まった。みんなヒラヒラ付きの赤い下着を付けていた。やっぱり客の趣味のようだった。ただ一つ違う点は首から垂れ下がる紐の色は全員違うという点だけだ。
「全員、中に入れ!列から離れるなよ」
緑色の紐を垂らした少女が先頭となり、『01』の扉へと入った。
中に入ると、この場に相応しくないような高級な服を着ている二名が居た。一人は黒いトップハットを被り、もう一人はハットを被らず、短髪の茶髪を晒していた。二人とも首には白色の襞襟があって、首元が見えなくなっていた。金の模様が入った赤や黒の正装を着ており、見ただけで二人とも貴族だと認識した。
少女は貴族っぽい二人組を見て、恐怖感が増した。理由は日頃のストレスを全部、相手の肉体にぶつけてくるからだ。
――――私を選ばないで!
今から始まるのは選別だ。
二人の性の捌け口を相手をする人間の。
「遅いぞ」
茶髪の体重が百キロを超えてそうな黒の貴族服を着た人が二つある内の一つの天蓋付きの高級ベッドに腰をおろしながら男を睨んだ。
「すみません。コイツらがノロマで遅れました」
「あと臭い。ヤる前に洗ってくるんだよな?」
「はい。選ばれた物はしっかりと洗います」
男に確認を取ると、黒貴族の前に居たトップハットを被った赤い貴族服を着た高身長で細身の男が口を開いた。
「赤紐、黒紐を頼む。二つでいくらなの?」
「あの二つだと合計、二千ルドになります」
「うん、分かった。洗わなくていいから今から始めよう」
ものの数秒で、九歳くらいであろう女児二名が買われた。二人とも今にも泣きそうだ。
赤貴族は流れるようにパンツ一丁になり、天蓋付きベッドに座って、女児たちに手招きする。
そうこうしている内に黒貴族が質問をした。
「この中に処女いる?」
「白が処女です」
「緑は処女じゃないの?」
「はい。処女じゃありません」
「まじかー、顔がタイプなんだがなー。使用済みなら諦めるか。いくら?」
「処女なので、五千ルドになります」
「了解。早く洗ってきて」
「分かりました」
こうして黒貴族も相手が決まった。
緑色の紐の少女はホッと胸を撫で下ろした。
緑、青の紐の少女たちは用無しのため、『01』から出され、自分の居場所へと帰された。
赤、黒、白の彼女たちが酷い目にあったのは言うまでもない。




