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People's Life -ピープルズ ライフ-  作者: おむ
第二章 ジャックという悪魔
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第八話 十一番

 ザ…ザ…ザ…。

 こちらに近づく足音に気がつき、少女は土床から起き上がり、固く閉まった扉へと近づいて開くのを待った。


 少女の行動を見た白い顎鬚を生やした老爺や他の二名も扉の前に近づいた。

 カチャカチャ…と金属音が擦れる音のあとにバン!とスライド式の木の扉が開かれた。扉を開けた男の左右に棍棒を持った男たち二名が、ちらりと中にいる少女たちを一瞥した。男たち三人は屈強な肉体をしていた。

 扉を開けた男は部屋の中に入ったり、言葉を発する事もなく、目の前で薄汚れた布を纏った少女や青年、老爺と老婆といった合計四人の老若男女の顔を歪ませながら右腕に抱えていた赤い《リゴの果実》を部屋の中へと一気に投げ入れた。

 リゴが土床に落ちると、四人全員がリゴを手に入れようと群がった。

 その光景をゴミを見るような目で見ながら男はリゴをかじって食べる。しばらく眺めると、食べていたリゴを少女たちに向かって投げ入れ、扉を閉めて施錠する。

 少女たちのリゴの奪い合いが終わり、各々は距離を保ちながらリゴを夢中に食べた。

 少女はリゴの果実を一個と男が食べていた食べ残しリゴを手に入れることができて嬉しかった。何故なら、昨日の一日一回の配給の時にリゴの果実とパナナの果物の二種類が投げ入れられ、少女は一瞬どっちを獲ろうか迷ってしまい、結局一個も手にいれることができずに、食べることが出来なかったからだ。

 一日ぶりの食べ物が胃に入り、胃が喜んでいるのがわかった。

 味わって食べたい欲を殺し、すぐに周りにいる同居人へと視線を移した。青年はリゴ一個だけしか食べれなかったようで、近くにいた老爺に近づき始める。

 老爺はリゴを3個も獲得しているようだった。


 「一個くれよ」


 青年の言葉に老爺は、


 「やらん」


 そう言って、リゴを早く腹に入れようと汚らしく急いで食べ始めた。

 老爺の行動をみた青年はリゴを全部食べられる前に奪おうと老爺に飛んだ。

 二人の取っ組み合いを一メートル隣で見ていた老婆は自分のリゴも奪われると思い、彼らに背を向けて食べ始める。

 少女も奪われる可能性があると思い、リゴを一、二回かじり、あとはごくりと飲み込みながら食していった。

 少女が全部食べ終わると同時に扉が開き、先ほどリゴを持ってきた黒髪屈強ごりん頭男と連れが棍棒を手に持って入ってきた。


 「うるせぇぞ!!全員、手を上げろ!!」

 

 一番最初に手を上げたのは少女で、次に老婆、青年と老爺は絡み合った状態で手を上げた。

 コロコロとリゴが転がり、男の前で停止すると、男がリゴを素足で踏みつけて潰した。


 「十二番と十七番、来い」

 

 ほぼ布きれの服に十二と書かれた老爺と同じく布服に十七と書かれた青年に呼び出しがかかる。ちなみに少女は十一番だ。

 番号を呼ばれた二人は怯えた様子で、


 「うるさくして申し訳ございませんでした。もううるさくしないので、お許しを!」

 「悪いのはこのガキです!ワシの食べ物を奪おうとしてきたんですよ!」


 二人は男の前でひざまずき、一生懸命に許しをうが、男には何一つ響くことはなかった。


 「食って騒いで糞して寝るだけの奴は要らないんだ」


 男二人が十二番と十七番に手を伸ばす。

 向かってくる手から逃げようとした老爺は呆気なく薄い頭髪を掴まれ、彼らから逃げれないと悟った老爺は力なく言いなりになった。

 青年は運良く男の手をかわし、薄暗い部屋の奥へと下がった。

 気怠けだるそうに連れが青年に近づいて行く。ごりん頭の男は老爺の髪を掴んだまま、先に部屋から出ようとすると「クソが!」と連れの声が聞こえて移動を中断し、グルっと首を捻り、部屋の奥に視線を移すと、連れが右の手のひらを負傷したらしく左手で右手を押さえて流れる血を止めていた。

 青年を見ると、右手に何か持っているようで、連れに構えていた。


 「おいお前、アイツは俺が対処するからコイツを連れてけ」

 「わかった」


 連れは青年から離れ、ごりん頭の男から老爺を任され、そのまま部屋から出て行った。

 ごりん男は連れよりも一段と体格が大きかった。正直、この見た目で給餌係というのはもったいない肉体をしていた。

 それはごりん頭の彼も自覚しているようで、


 「ありがとよ、十七番。暴力を振るう建前をくれてよ」


 青年が突き出す右手に握る物は、鋭く尖った木のナイフだった。ナイフと言っても手作りで魚も捌けるかも怪しい粗末なナイフだ。斬るよりも刺すための物だろう。

 

 「どうせ死ぬんだ!死ぬくらいならワンチャンこんな場所から逃げれる方に賭ける!」

 

 ごりん頭は十七番に返答せず、近づく。二人の距離が二メートルくらいに縮んで、青年が動き出した。

 見上げる程の身長の男の腹を狙ってナイフを突き刺し攻撃をしかけた。

 ごりん頭の男は防御姿勢をする暇もなく、鍛え上げられた割れた腹に木製のナイフが刺さってしまう。

 青年は男の腹に突き刺すことができ、笑みを浮かべながら、さらに奥に突き刺そうと力を込めた。

 するとポツリと腹を刺されている男が呟いた。


 「このぐらいでいいか」


 男の言葉の意味がわからず、青年が顔を上げると同時に青年の体が真横に飛んだ。男の裏拳で部屋の壁に飛ばされたのだ。

 床に落ちた青年は怯えた顔で男を見ると、腹に突き刺さったナイフがあるまま、手持ちの棍棒を青年に振りかざしていた。


 「や、やめ――」


 青年の言葉を最後まで聞くことはなく、男は棍棒で頭を叩いた。

 肉、骨、液体が混ざるグロテスクな音が響きわたり、老婆と少女は指で耳を塞いで目を瞑ったが、棍棒の叩きつける振動は嫌でも伝わり続けた。

 約十秒ほど続いた振動が止み、少女はゆっくりと目を開ける。

 目の前では根元が割れた棍棒を持つ男と、上半身が肉塊と化した青年の死体がそこにあった。

 少女は恐怖で体を震わす。


 「あぁ〜、スッキリしたぜ」


 男は使い物にならなくなった棍棒を床に投げ捨て、青年の足首を掴んで少女たちに振り返った。


 「次、ここに来るまでに床を綺麗にしておけ」


 それだけを伝えて、死体を引きづりながら部屋から出ていった。

 カチッと扉を施錠する音が聞こえると、少女と老婆はお互いに喋ることなく、壁隅に置かれたバケツと雑巾を持って、肉塊と血溜まりと掃除中に口から吐き出すリゴの実をバケツの中へと詰めた。

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