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People's Life -ピープルズ ライフ-  作者: おむ
第二章 ジャックという悪魔
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第六話 煉湯

 ルキを除いた三名で下級魔術の実戦講習を続けたが、《パークル》を指先から出すことはなかった。

 ステューシーとゼフは丘下の【キッチン・ルキ】に飲みに行った集団と合流しに行き、ジャックはメラと一緒に丘上の建物へ。

 ジャックはルキが横になっているソファーとは違うソファーに腰掛けていた。

 

 「これ飲むと良くなるわよ」


 キッチンを借りたメラが、湯気が出ている木製の器をテーブルに置いた。

 器が置かれ、ゆっくりとした動作でルキがソファーから起き上がる。

 器を手に取り、泡立った黒い液体を見る。


 「これなんですか?」


 嫌悪感がない様子で質問を投げかけた。


 「れんよ。魔女が魔術を使用するエネルギーが枯渇したりした時に摂取する飲み物よ。あと、私の尊厳のために言っておくと、味が不味い飲み物よ。私が作るのが下手だから不味いわけじゃないから、勘違いしないで」


 ちなみに鬱病の患者にも使用されている飲み物でもある。

 メラの説明を聞き、少し怖気付くルキだったが、ゆっくりと湯をすすった。

 

 「なんか、不思議な味ですね…」


 口に広がる味を説明するならば、甘い!と思ったら苦味が後ろから襲ってくる味だ。追加付与で段々と舌もピリピリと痺れる効果も付いていた。


 「副作用で眠くもなるわ。眠くなると言っても個人差があって、眠くならない人もいるけど」


 今のところは眠気はなかった。


 「なぁ俺の分はないのか?」


 ルキが受け取った飲み物に興味を示したジャックがメラに煉湯れんゆを求めた。

 メラが呆れた顔で、Cカップほどの胸の前で腕を組んだ。


 「あなたは魔力を消費してないでしょ。あなたの分はないわよ」

 

 自分のが無いことを知り、ジャックがルキの容器を羨ましく見ると、ルキが器を前に出した。


 「の、飲んでみます?」

 「いいのか?じゃあ少しいただくぜ」


 ルキの飲んでいる容器がジャックの手に渡りそうになり、メラが流れを止めた。


 「作るわよ!作るから譲渡しないで」

 「いや、少し飲むだけだ――」

 「ダメ!そ、それは、そこの彼女の為に調整して作った物なの。それをあなたが飲むとお腹壊すわよ」


 そんな事を言われては引くしかなかった。

 両腕を大きく広げて、足を組んだ。


 「じゃあ頼んだ。量は少なめでいいぞ」

 「分かったわ」


 メラが面倒くさそうにキッチン方面に消えたと同時に、入口のドアが騒がしく開かれた。


 「ジャック!遊びに来たぞー!!、ってゲッ!!姉ちゃんいるじゃん!!」


 訪問者は十一歳くらいの男児で、ルキを見つけて歩みを止めた。

 ルキは男児を見て、


 「ア…レックス…、静かに、して」

 「あれ?姉ちゃんどうしたの?元気なさそうだけど?」


 元気のないルキの代わりに、ジャックが男児のアレックスに説明した。


 「魔術を手から出したら疲れ果ててこの様だ」

 「え!!姉ちゃん、魔法出したの!?すご!!」


 煉湯をやっと飲み干したルキは、ふぅ…と吐息を漏らした後、ジャックを見た。


 「ジャックさんだって、絶対こうなります」


 煉湯の影響が出始めたのか、話す分にはあまり違和感はなくなってきたようだ。

 

 「はい、出来たわよ」


 キッチンから戻ってきたメラがジャックの前に少量の紫色の液体が入った器を置いた。

 器の中を覗き込んだ後、メラを見た。


 「なんかルキのと色が違くねぇか?」

 「、気のせいよ」

 「なんだよ、その間は!」

 「飲まないなら飲まなくていいわ」

 

 器を回収されそうになり、慌てて器を手にとったジャックは改めて、器の中を覗き込んだ。

 見え方によったらルキの黒い液体とあまり変わらないが、紫っぽい液体にも見えた。

 ごくりと唾を飲んで、紫の液体を啜った。

 一部がドュルっとした卵の白身のようなものが口に入り、そのまま喉を通過していった。肝心のお味は…、


 「甘めぇ…」


 強烈な甘さが口の中を包んでいた。

 ジャックは静かに器をテーブルに置いた。


 「ちゃんと全部飲みなさいよ?作ってあげたのだから」


 その言葉にジャックはメラを見つめる。

 見つめられているメラはジト目でもう一本釘を刺した。


 「飲みなさいよ?」

 「…わかったわかった」


 幸い、量は少なめで、ひとすすりで全て無くなる状態ではあった。

 器を手に取り、舌に味が伝わる前に一気に口に流し込み、喉を通過させた。


 「あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ーーー!!」


 しばらくは甘い物は要らないと胸に誓うジャック。

 目尻に涙が溜まる中、メラが口を開く。


 「じゃあ私、帰るわね。煉湯を摂取して体調が改善されなかったら、私を呼んで」

 「…はい。ありがとうございました」


 メラはチラッとジャックを見た後、アレックスの頭に手を一瞬置きながら、玄関から出て行った。

 「あ、」とルキが声を上げると、ジャックがルキを見た。


 「どうした?」

 「メラさんに渡すの忘れてました」

 「…」


 あとで渡そうとしていた袋がソファーに置かれたままだ。

 袋を持って急いで玄関を開け、周りを見渡すジャックだが、猫耳マントの姿はどこにもなかった。

 リビングに戻り、袋を軽く持ち上げる。


 「メラに渡してくる」

 「すみません。ありがとうございます」

 

 ジャックはアレックスを見て、


 「すまんが、ルキを見ててくれ」

 「分かった!任せて!」


 アレックスがサムズアップすると、ジャックは玄関を出た。

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