第五話 七番目
お昼過ぎ。
丘上の草が引き抜かれた歩きやすい場所にジャックとルキ、午前から午後まで見張り塔にいた角刈り男&ドレッドヘアのステューシーの四名は魔術を教わる先生の前に横一列で並んでいた。
先生というには若く、ルキと変わらないくらいの二十代前半の女の子。銀髪のショートボブで、右目が髪の毛で隠れていた。左目の下には月と星のペイントがあった。
猫耳が付いたフードを被り、猫耳フードと一体化しているマントを風で揺らしながら、右手を腰に当てて立つ。
「そんで、なんだっけ?発する言葉は」
右手の人差し指と中指を銀髪魔女メラを指差しながらジャックが聞くと、メラはため息を吐いた。
「そろそろ覚えてもらえる?……《パークル》よ」
ジャックは人差し指と中指をメラに向けたまま、
「《パークル》」
何も起きなかった。
「発動しなくてよかったわね。発動してたら、ゼロ距離で中級の魔術をプレゼントしてたわ」
「あの技だけはやめてくれ……」
ジャックたちが教わっている魔術は、七才の魔女っ子たちが教わる初歩的な魔術である《パークル》。この魔術は閃光を発生させる術だ。
下級魔術なので攻撃性は皆無だが、瞳の前でまともに食らうと数分間は目に異常を抱えるだろう。ちなみに中級版は少し離れた場所からでも相手を失明させるほどに強化している。
銀髪魔女メラに向けていた指の先を見ながら、ジャックが呟く。
「しかし、なんで出ねーんだ?」
「邪念があったり、心から唱えてないからよ。ちなみに聞くけど、体調は万全?」
「体調はみんな良好だ。それに心から唱えろっつってもなー」
後頭部をガシガシと掻いていると、横にいるルキが魔術を唱えた。
「《パークル!》」
唱えてすぐに指先からお尻を赤色を発光させたホタルのような物が現れ、ゆらゆらゆっくりと一メートル先まで移動した後、パチパチパチと音を出して小さく爆散した。
ルキが放った魔術を見て、メラが素直に感心する。
「凄いわね」
メラに続いて、ジャックたちもルキを褒めた。
「ルキ凄いな!連れてきて正解だったぜ」
「ルキちゃん凄いわね。どうやったの?」
「嬢ちゃん、マジか」
「えへへ……」
褒められて、素直にルキは喜んだ。
魔術を扱うのは誰でも可能というわけではないし、練習して使えるようにするとかそういうレベルではない。
第六感の七番目がある感覚だ。
魔女は遺伝的に第七感が備わっているため強弱はあるが、素質が元々あるものだ。
そんな中、不格好で質が悪すぎる下級魔術ではあるが、魔女ではないルキが扱えるのは相当凄いことなのだ。
ルキの秘められた才能を確信したジャックはメラに問う。
「なぁメラ、ルキなら練習すれば中級の魔術も」
「そうね。練習したら中級魔術も扱えるかもね」
地面に尻もちをついて座るルキにメラが近づく。
「倦怠感あるでしょ?あなた」
肩で呼吸するルキは呼吸を整えてから、
「……はい…、これは魔術の影響ですか…?」
「そうよ。魔術を使うのにだって力は必要なの。ジャック、この子を寝れる場所に移動させて」
「お、おう。ステューシー、ゼフ!ルキをソファーまで介護してやってくれ」
呼ばれたドレッドヘアのステューシーと角刈り頭のゼフがルキの両脇を抱える。
「ありがとうございます…」
三人の背中を見送って、ジャックがメラを見た。
「ルキの奴、大丈夫か?」
「……下級魔術だから心配ないわ。症状は倦怠感くらいだと思う」
「そうか、ならよかった」
「どうするの?練習、まだ続ける?」
ジャックは少し考え、
「あぁ、指導してくれ」




