第三話 女の勘
光源が窓からの日光のみの薄暗い部屋にて、女性の一人が窓際で黒いパンティーを穿いていた。次は黒のブラジャーを胸に装着しようとしたところで、部屋の中心に置かれたキングサイズのベッドで、目元を腕で隠して寝ていた男性が目を覚ます。
「アニー、もう帰るのか?もう少し居てくれよ」
Dカップはありそうな胸が黒のブラジャーで覆われ、アニーと呼ばれた女性は肩甲骨まで伸びる黒髪を一つに束ねながら言った。
「私もまだ居たいんだけど、女の勘ってやつ?帰ったほうがよさそうなのよね」
頭が冴えてきつつある男は、左手で顔を覆い、側頭筋を親指と薬指でマッサージしつつ、
「そんな事言わずにさぁ、もう少し一緒に居ようぜ」
マッサージを終え、身を乗り出してアニーの右腕を掴んで引き寄せた。
アニーは小さな悲鳴を上げながら、男の反対側のさっきまでアニーが寝ていたであろうベッドスペースに倒れる。最高級クラスのベッドは、アニーを二、三回バウンドさせると、男がアニーに覆い被さるように四つん這いになった。
下着姿で今にも全裸姿の男に襲われそうな状態だが、アニーは嫌な素振りは一切なかった。それどころか男の誘惑に折れ、男のドッグタグがぶら下がった首元に腕を回そうとすらしていた。
そんなスイートな雰囲気になりそうな時、背後のドアが鳴った。
ノック音で現実に引き戻されたアニーが、男の鼻先を人差し指で触る。
「ほらね、ジャックさん」
「チッ」
男は舌打ちしながらアニーから離れ、一糸纏わぬ姿のままドアを開けた。
「んだよ!?」
その口調には怒りが混じっており、ドアをノックしたドレッドヘアの女は緊張しながら言った。
「ルキちゃんがこちらに向かっているので、お知らせに参りました!」
ドレッドヘア女の言葉を聞き、「あぁ……そうだったなぁ……」と呟き、後頭部を右手でガシガシ掻きながら返答する。
「報告ありがとな、ステューシー」
「い、いえ!」
ジャックはステューシーとの会話を終え、ドアを閉める。
後ろを振り返ると、アニーは毛布で体を隠していたが、二人っきりになった瞬間、下着姿を露わにした。
「やっぱり女の勘って当たるんだね。早く帰んなきゃ」
アニーはベッドから離れて、床に落ちている衣服を拾って着た。
「今度また、腰上でダンスしてあげるね」
「今度は《勝つ》」
「私が勝ったら、いくらくれる?」
ジャックは二秒ほど考えた後、答えた。
「千ルド」
アニーは金額に驚きつつ、舌で上唇を濡らす。
「次回が楽しみ♡」
「俺もだ」
ジャックはドアの方に向いて、叫んだ。
「ウィスラー!」
叫んで三秒くらいでドアが開く。
「ジャックの旦那、なんでしょう?」
ドアを開けたのは、さっきまで下でギャンブルをしていた長髪の男だった。
「アニーを馬車で下まで送ってやってくれ。言わなくても分かるとは思うが、ルキにはバレねぇように頼んだぞ」
「わかりやした。ついでに仲間と一緒に、下で飲んできていいっすか?」
「あぁ、構わねぇよ。ローアンは一階にいるか?」
「ローアンは不在です。今日は非番なので、どっかに出掛けているかと」
「そうか。じゃあアニーを頼んだぞ」
「へい!アニーちゃん、下へどうぞ」
ウィスラーが横に移動して、通路を開けると、アニーはすたすたと歩き出した。
部屋を出て振り返ると、ジャックに向かって手を振った。
「ジャックさん、またねー」
「あぁ、またな」




