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伍 脳は死時にこそ深く回る

一先ず先程の発言は訂正しよう...再ッ悪のタイミングだ...と言うか深く考えずとも先程の猛攻で少し息切れしてるだけの化け物から1分とかこっちに対抗手段(例の刃物)有りでもギリギリだったんだ、冷静に考えて馬鹿でも諦めて死ぬだろう


...取り敢えず落ち着いて状況確認、一先ずは大槌の対処が先だろう...目測で直径1mはありそうもある...流石にそのレベルの大きさなら少しの怯みも有ると思いたいが、期待するのは辞めておこう、此処で...と言うかあいつ相手には何時だって最悪を想定した方が良い。


思った通りに軽々と大槌を持ち上げ、私の頭上にそれが降り注がれる...今から避けようと思っても猶予は1秒もない...当然50cm何て届くはずがない


しかし身体は動く...倒れ込む形で地面を蹴り、瞬間的な速度を上げつつ致命傷だけは避けるように動く...だが足りないこのままでは両足が使い物になら無くなり結局生き残れない


肩甲骨辺りに底面が接触したあたりで前に伸ばしていた右手に何かが触れる...恐らく雑草だろう、それを感じ取った瞬間に文字通り藁にも縋る思いで雑草を力強く握る...骨が削れても握れるもんだな...だが直後に与えられた痛みでそんな思考を回せない現状を思い出す...削がれた部分が酷く痛み、肉が裂けることを強く感じる...しかし縋った藁がここまで使えるとは...体全部を使っても地面が揺れてる感覚すらない


然し飛距離も時間も足りない...取り敢えず膝辺りまでは出ただろうがここまでだ...足が大槌に押され遂には芝生に触れる...それを認識した瞬間に足を曲げる...だが右足は間に合わなかった...指が全て潰れ、根元から逝かれた


しかし思ったよりかはマシだった...及第点と言えるだろう、すぐに立ち上がって次の攻撃に備えなければ...そんな悠長な現状確認をしていれば初めに腹...次に胸にかけて違和感が走る...そう感じた瞬間には私の体は遠くへと飛んでいた...


空中の中で体制を変え、そして数秒して地面へと落ちる...落下の中心となった右足は摩擦を受け...靴が削れて皮膚が捲れ、少し肉を削る...見てみると10何m位先にある大槌が振るわれた場所には小さなクレーターが出来ていた...軽くは無いだろうと思っていたがあそこまでの威力をた出せるとは思っても見なかった...まだ私の最悪の想起は足りない様だ


「何かあの管使ってた時よりやばい事してねえか?何であれ(雑魚い武器)でやってきてたんだ?と言うかさっき短剣ブンブンして息切れしてたの何だったんだんだ?」質問を投げる、今回は思惑...はまあ少しは有るが殆ど単純な疑問だ


カリスネクトは大槌に何かしてるのだろうかそれに右手を(かざ)し動かない...ただ答えるつもりはある様で地面を蹴りながらも口を動かす「まああの時(管を使ってた際)は私の魔力も煙も全然無かったですし...それとあの魔法(くれてやるよ狼の切符)使いながら動くと疲れるんですよ?」作業が終わったのだろう、大槌を再び持ち上げで向かってくる、然し煙か...奴と出会った時にも煙が現れていたりあの管が煙に変わったり種族名が狼煙だったりとこの先煙には注意しなければな...この場を生き残れたら...だが


向かってくるカリスネクトを注意して見てみるが...この草原で初めての風を受ける、緊張していた部位に刺激を受け、身体が無意識に防御を取り瞬きを行う...その少しの間それだけで大きな変化が現れた...カリスネクトが大槌を手にしていない、嫌な予感がして宙を見るとそれが...探していた危険が私の頭上2m先を飛んでいた


安心するのも束の間...大槌は急に起動を変え、こちらへと降り注ぐ、前へ...カリスネクトの塞ぐ先へ必死に逃げる...奴を見てみると大剣を左手に持ち、今にも振りかざそうとしている


瞬時の思いつきとは短絡的で成功した場合には何時だって多大な利益を(もたら)す、今回の例もそれに当たるだろう...靴を地面に突き刺し、少し後ろへと飛ぶ...其れとほぼ同刻に背後...取り分け地面からの衝撃が走る


宙を舞い、瞬時に蹴りの体制を作りカリスネクトの頭部へと向かう...少しして反動が体へと伝わる、それと同時に足を畝らせ後ろへと3回ほど回転して地面へと落ちる


カリスネクトの方を向いてみれば、思った通りに昏倒している...等という事は無く、転倒すらせずに蹴られた部分の髪を掻き分けて抑えていた


「ターツへの手向けと思い、かなりリソースを割いた(分身)を用意しましたが...愚民にすら届くか分からないほどの身体能力でここまで喰らい付ける者が存在するとは...」カリスネクトは随分と楽しいのか声を昂らせ、今まで見たどの笑顔よりも純粋で混じり気の無い笑いを作っている


幾つか独り言を吐いた後「こちらも少し本腰を入れなければならないですね」と呟き地面に剣を突き刺しそれで地を蹴る、1秒ぐらいして頭上から大振りに剣を振り下ろす...即座に横へと避けることは出来たが緊張感は高まる...テクテク歩いて攻撃してくるだけのさっきまでの戦い方とは段違いだ


勿論その攻撃の熾烈さや手段の変化は近接戦でも発揮される...横振りの攻撃を下に避ければ当然のごとく剣を回してそのまま脳天を狙ってくる...その追撃を刃を足蹴に避けたとしても地に剣を刺しやけに硬い土を使って散弾銃のごとき攻撃を行ってくる...殺意と言うか執着が段違いだ


数多もの振り・突き・そして刃面を使った打撃...それらを避けて避けて避ける...ようやく攻撃への対応が後手では無くなってきた...だが、背に違和感が現れた...何か言いようの無い恐怖が向かってくるような、直後それに気付く...大槌が姿を変えたであろう無数の棘が迫ってくる


一先ず速度と範囲を確認するが...大槌とは重さが段違いなのか範囲を確認しようとした瞬間に5つの刃先が向かってくる...一先ず1番近い物を掴み、簡単に動かせる程度に軽いことを確認したらその針を使い、他の針も弾く...2つぐらい弾いてから即座に棘は煙に変わったが残り二つなら余裕を持って避けられる...


他にも大量の針が飛んでくるがそれら掴み、全てを弾き飛ばしていく...前の管と比べて正面からしか来ていないのである程度余裕が出来ていた、然しそれも所詮は微々たる物だった...このままだったらだが


広く視界を持つことが出来てすぐに気づいた、自分の左側の棘がバラバラな方向を向いている...棘の移動に不規則性でも付けたのかと思ったが違う、直後に捉えたのはカリスネクトの大剣だった


棘に巻き込まれることを危惧して攻撃してこない...それか最低でも武器を短剣に変えると思っていたが網膜に映る情報はそれを全て否定してくる...考えてみれば当然のことだ、私が握った管も煙に変えられたのにそれをあの棘にも応用できない道理は無い...


しかし、バラバラに飛んで行った棘を見るにあの棘たちは大剣の風圧で簡単に機動力を失う...考えるべきは大剣だけだ、ならば先程までとほとんど変わらない...問題は無いだろう


大剣の回避ついでに棘の範囲も確認しようと転ぶ様に後ろに回りながら飛び、刃の表面に飛び乗る...然し見た以上には棘がバラけていない様で上側には普通にこちらに向かっている棘がごまんとある...不安定な足場の中でさっきよりも少し少ない程度の棘を避ける...無理だな、名残惜しくはあるが範囲の特定は諦めて下に降りよう


地面に落ちるまでは問題なくある程度バラけて落ちた棘を避けるのが少し面倒だった程度だ...しかし地面に着地してからが問題だ、風圧でバラバラになった棘が視界に入った時間とカリスネクトの振るった大剣を比較した時にある程度理解できる...だからこその違和感、だからこその慢心...着地と同時に棘が襲ってくることなんてありえないはずだったのに


考えても仕方ない、今はともかく目の前の棘たちを避けることに集中しなければ...一先ずは足を伸ばして宙を舞う...しかしこれが悪手だった...目の前に壁の様に広がる棘を見て行動の失敗を感じる、もう一度棘で棘を弾こうとするがいまはそんな余裕は無いだろう...手で少しずつ起動をずらし攻撃を流す...摩擦で手が解け右腕の傷がさらに痛むのを感じr


思わず「は?」と言葉が漏れる、撃ち抜かれた...視認による場所の把握が難しかった左足に一つの棘が貫き、一気にリズムが崩される...そのまま左腕、右頬、脇腹が次々に貫通される...千本程の大きさの針だったので恐らくどこかの内蔵を損傷している脇腹以外は余り問題ない...だが問題はリズムが崩されただけでは説明つかない動きの衰え...やはり体力や集中力の限界が見えてきたのだろう


目がぼやけて頭の中に通る血管の圧迫感が嫌に苦しい...アドレナリンも足りなくなってきたのかこれまで無視してきた痛みが体全体を支配する...無理に動かしていた右手も劇的に動きが鈍る...


だが不幸中の幸いと言えるだろう、漸く棘の壁の終点が見えた...掴み取った棘を録に動こうとしない右手に突き刺し体に喝を入れる...これで少しは動きがましになれば良いが...


手に刺した棘が消えない内に拳を握り込み、手の甲から突き出た棘を使い向かってくる棘をひとつ落とす...空中に落ちたそれを左の手で掴み、他の棘達へと向き直る


終わり(壁の終わり)が見えた今、次に警戒するのはカリスネクト...やつの動向だ、理由は分からないがあれ以降奴自身からの攻撃は無い...何かしら企んでいる子は疑いようがないだろう、ならばリズムを崩す...何回もやられたことだその有意さは自分の()をもって証明が完了している。


この場で普通、私が行なう様な事では無いが不可能では無いこと...脳が回答を思いつくよりも前に体は前へと体を走らせていた...何をするにも距離を取られれば大抵の場合効果は減少する...無数に向かってくる棘を引っ替え取っかえ変えていき煙になる可能性をなるべく小さくしながら壁の終わりに向かい...届く


背後を見てみれば少し先にカリスネクトが居る、そしてあれの周りにある棘や地面に刺さったいくつかの棘...そして攻撃方法として使っていた大剣...それらが煙に変わったかと思うとそれを身の中に閉じ込めた


前に煙を取り込んだ時と同じ様に姿が変化すると考えたが目の前の存在は棘から出た煙を全て取り込みそのまま姿を変えず足を蹴る...


距離もある程度離れているから少しは時間を稼げると考えていたが予想とは別にカリスネクトは一蹴りのままこちらの頭上へと降ってくる、そのまま地に足をつけ、拳を振りかぶる...その拳の速度は先の棘や大槌などの速度をゆうに超えており、その速度への対処は遅れ頬を少し擦る


直後触れた部分が消し飛んだかと思うと風圧により歯の1、2本が飛んでいき、頬の表面に肌は無く肉まで抉れていく...


直後にもう片方の手が飛んでくるのを目に映し...それを認めるや否や振りかぶった直後の腕を掴みそれを起点に体全体を横にずらし、その後、後ろへと体を飛ばした


カリスネクトは後ろへと飛び、自由落下の真っ只中に会った私に足による追撃を加えてくる...しかしここで戦いの終幕だ


風鈴の甲高い音の初めが聞こえ、それと同時に「終いの壁を超える(つまらないメタ推理)」と呟き視界を虚像に落とした

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