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参 エンドコンテンツの初心者狩り

しかし何だろうかこの違和感は...いや正体はわかっている、平和すぎるのだ、ここに来てからメタ世界...つまりまた、こことは別の世界以外で走っていない時間など無かった…だがここには何ない、この草原には私以外全てが消えている。


そんなことを思い、(ほう)けた様に辺りを見渡していくと1つの更なる違和感に帰結する...辺り一帯に...違う私を中心に50mぐらい円形の不自然な()が付いているのだ...


そんな思考を回していると背を削られる錯覚を覚えるほどに鋭い殺意を感じる…牽制ついでに一応拳を振り抜きながらバックステップを取るが殺意の正体はその小さい体に反して長い髪を揺らして悠々と(かわ)した、その中で見たその存在を...正体を視るその視線の先に私は絶望以外の感情を見出すことは出来なかった

狼煙

T

カリスネクト

1


レベルや見た目は確かにこれまでの存在よりも強さを感じはしないがその本剤から感じる空気感の変化...それを感じてしまうと否が応でも危険度はA〜Zの最初に来るほどに高くなると気づいてしまう。


「それで...何を考えて私達(狼煙)に危害を加えてきたのですか?

人間ですら行わない眠る犬どころか狼を起こす暴挙でしょう...」メイド服を身にまとい、灰褐色の髪を揺らし黄の動向を光らせた少女...カリスネクトは呆れたかの様な軽蔑する様な雰囲気でその言の葉を揺らす。


「えーっと?...まあ取り敢えず答えるんだったら理由は単純で駄犬が噛み付く通り越して殺しにかかって来たからハンムラビ法典に則ってサクッと殺したんだが...

こっちからも質問になるが、あんたのその姿の何処が狼煙...狼なんだ?」その言葉を漏らしながらも体は既にメタ世界に逃げる(魔力の回復)事だけの為に動いていた、欠けた髪飾りに挟まれていた髪を揺らし、閉じた右目を隠す、目的は魔力の欄に有った[システム]を開く事


これで魔力の回復方法が綴られていない場合この存在と真っ向勝負となるし、何なら相手がこちらの目論見に気づき攻撃してくる可能性もあるが...反撃もせずにお喋りを楽しむような存在だ、きっと殺害以外に目的があるのだろう。


くるくると回る思考を阻むかの様にカリスネクトが口を開く「はあ...たしかに私の監督不足も有りましたが、よもやここまでの常識(暗黙の了解)知らずが今日日私の前に訪れるとは...」不機嫌さを隠そうともせずにカリスネクトは呟くかのように語るが静かな平原の中では大声で叫ぶのとそう変わらない...その全てが風すら起こらない静寂の中では鼓膜を緩やかに揺らす。


「あーえっと、私のこの姿...でしたよね?

お話の為って言うのが1番ですかね、一応事実確認や動機の確認にそれに対する対策等も必要ですので」...嘘だ、それも誰でもわかる程の...それらが目的ならば今ここで既に私を千切っている筈だし何よりも間がありすぎて答えながら考えているのがバレバレだ。


しかし、そんなことを考える必要も無いし何よりそんなことを考えられるほど私は生に無頓着ではない...[システム]を開いてMPの回復方法とついでの情報を手に入れたのだ...まずMPの回復方法だが至極単純な話で1分間経つ事に消費したMPの10分の1...あと小数点に入る様だったら繰り上げになる様だ、しかもご丁寧にタイマーも付いていてあと10秒もすればMPは4まで回復する...まあ現状終いの壁を超える(つまらないメタ推理)以外に使い道もないから5以上なければ何も出来ないが


...そしてもうひとつのオマケだが魔法を使うには詠唱が必要だと思っていた...しかしどうやら魔法の名称の言語さえ知っていれば名称を叫ぶだけで魔法が使えるようだ...つまりはあと1分10秒お喋りした後に終いの壁を超える(つまらないメタ推理)と叫べば私はあの世界に1分間逃げられる様だ。


だが、状況は刻一刻と変化する...例えばお喋りを望んでいた筈の者がまさに今、私の横を鋭い爪を滑り込ませたり...とか


「どうした?さっきまで本来意味の無いおしゃべりを楽しんでいたじゃないか?」目線はそれにベッタリと付けて背後にバックステップを取り、数多もの斬撃...いや爪撃と言った方が正しいだろうか?その熾烈な攻撃を避けながら問う


「時間稼ぎは十分だと判断したので...実際もう必要はなかったでしょう?私にも...貴方にも」自分の目的が勘づかれていたのは薄々感じていたが、相手も同じ目的だったとはと少し理由も気になりながらも激しい攻撃をかわす事で瞬時に忘れてしまう


「欲をッ言えば...あと1分は欲しかったけどねッ!!」数多もの攻撃は最早壁のようにさえ見える...あの中に入ってしまえばと思うと足元への注意も何もかも全て目の前の攻撃一つ一つに対処する事へと変化させる...一応背後に段差などが無い場所を選んだが恐怖感が体幹を崩していく...時は圧縮され、1秒の重みに身体が耐える事も出来なくなってくる


...だがそんな攻撃は長く続かないのかそれとも別の理由か攻撃を止めて又、会話が始まる「本当は初撃で仕留めるつもりだったんですけどね...それどころかあの猛攻を防ぎ切るって貴方本当に何者ですか?」呆れたかの様な若干高揚しているかの様な弾み方の声を投げかける。


その瞬間、風鈴の音がした...恐らくMP回復したという音だ...だがそんなことに構うことは出来ない、とにかく会話を続ける...とにかくバレないように体力を整える、最早全ての細胞はそれの為だけに動いていた...その中で1つの回答の答えを見つける


「私としてはあんたの正体の方が知りたいけどね...あんたの言い方じゃここ(異世界)でもあんたは例外側なんだろう?」取り敢えず質問を行う...そうすれば奴なら答えるだろう...時間稼ぎにしても喋る必要等無いはずなのにわざわざ喋りに来る様な奴だ余程人と話したいのだろう


「そういえば自己紹介をしていませんでしたね...カリスネクト、この世界を原初から生き残った幸運者(不幸者)...始祖の者の一人にしてあらゆる狼煙の祖先です。まあ冥土にでも届けて下さいね」悪戯っぽく笑うその顔には少し邪悪なそれすら感じてくる

「それでは...自己紹介も終わりましたので貴方がターツを殺した罪の精算をさせてもらいましょうか」


反論の余地もさらなる疑問の余地も許さないままに()()が始まる、周りにうっすらと漂っていた煙が全てカリスネクトの元に集まったかと思うとそれの首...そして腕から先はどこかへと消え、その代わりと言わんばかりに長い管の着いた少しうねった刃物の様な物がうねうねと漂っている


...しかしすぐに動く気配は無い...周りにある煙がどんどんと吸い込まれてその度に管が増えていくのを見て直ぐに体は行動に出た、あの刃物の強靱に耐えうる様な何かを見つけるのだ...足を必死に回して辺りを見渡すが都合良く転がっている剣も...手頃な石さえも見つからない


瞬間...悟る...それが動いた...それが追ってきた...それが私を殺しに来た...すぐに森から適当な枝を取ってくる、走り回ったのが幸いしたと少し過去の自分に感謝しつつその枝のあまりの細さに自分の運に反吐を吐いた。


...来る...それが...絶望が背後に体を向け横へと回ろうと...平原(障害物の無い場所)へと逃げようとするがそれは逃走を許さない、直ぐさま最初の一撃が来る、それに対して枝で守ろうとするが何もしなければサクッと切れるだろうと思う程に手応えなく枝にぶつかる...だが枝を切ろうとして手前を狙ったその管は余りにも手前に置かれて...余りにも手元に近かった


気づいた時にはその管を掴み、周りを別の管が覆っていた、そして数個の管は私を狙って少しの放物線を描き狙ってくる...それに対して暴れる手元の管の動きを考えてその管の刃物が別の管を斬り落とす様に動きを制御する...


斬られ落ち、先に黒い液体の流れている少し長い管とその先に着いた刃物を直ぐさま手に収め、数個の管の動きを見切り、刃先に刃先を合わせると金属同士のぶつかる小気味よい音がしたと思ったら直後、その力に押され、後ろの(みね)が眉間に押し当てられる、このまま行けば皮膚を超えて肉が裂けるだろう...直ぐ様後ろに顔を下げ、手に取った刃物をそれの管に当てる...すると多少の抵抗こそあれど管は呆気なくその動きを止め、自由落下に身を任せる


私を危険だと見なしたのだろうか?胸...心臓付近から私を離すかのように管がうねって外に投げ出される...しかしタダで返そうとは思っていない様でうねって動かされた先には幾つかの刃が姿を現していた...速度的に避けたりはできないと思い、管に刃を突き立てて下への道を無理やり開ける


危険を感じて管を退かしたのか落ちたところが見えた地に伏した管は2、3本だけだったが別にこいつを倒したい訳でも無いから問題は無い、と言うかそもそもとしてろくな武器も装備も無いのに始祖の者達とか言う上澄みも上澄みの様な名前の存在を相手にしていることがおかしいのだ


そんな思考を遮るように身体はこの世界で2度目の自由落下を全身から伝える...ひとまず受け身の体制を取りたいところではあるが、右に7左に3の刃から意識を少しでも離せばいとも容易く刻まれるだろう...


思考を回すが数秒...それも何十と攻撃を仕掛ける管を対処しながらの数秒で解決策を思いつくはずもなく身体はその土と言うにはあまりにも硬い地面にその身を落とすのであった


手にしている武器はやはり血管を通して畝らせるのが通常の使い方で持つとも効率的な使い方だ、そんな物を峰を持ち、管を握り振り回す...そんな事を起き上がれないまま続ける...長く続くはずがない...そもそもとしてのパワーも違う、こちらの歯先を管の部分に当てなければこの状況も簡単に終わる...しかも相手の武器は何十本とあり、幾らでも替えがきく...つまり何が言いたいかと言うと


武器を手放した...敵の猛攻に耐えきれずに少しづつ押され、遂に管を切る速度が...処理速度が間に合わなくなった、ただ不幸中の幸いか活路が見え、少しの緩みを許した相手の隙をつき、立ち上がることは出来た


とはいえ状況としては本当に少しだけましになった程度だ、あの状態のカリスネクト相手にバックステップで避けるだなんてやってても背後からの致命攻撃を食らってバラバラ死体になるとしか考えられない、しかしかと言って背中を向けて全力疾走なんて何が起こるかも分からない。


生き残る為、その全てに思考を回しながら後ろを警戒し、更にバックステップである程度の距離を取りながら偶に来る少しリーチの長い攻撃だけを見切り避けて避けて避ける...少ない攻撃とはいえその一撃一撃は銃弾のそれを超えているだろう...直感だけならそうとすら思えてくる、まあ人間の能力的には違うのだとわかるのだが...それでもそう感じるほどの攻撃を対処する、そんな事をしていて10数秒...いやターツとの戦い、人間に入れられたあの世界の恐怖に加えてカリスネクトどのこれまでの攻防...他にも急な転移などの其々...つまり何が言いたいかと言うと、集中力や余裕、そして体力や足の限界...身体はとっくのとうに限界と言われるものを超えていた


そのことを実感した理由は右手に...いや右腕に訪れた痛み...それに遅れて出てくる血飛沫、骨の絶たれる嫌な感覚...それら全てが証人と言えるだろう


たった一つの刃は腕の大部分を抵抗のそれをどちらにも感じさせずに切り落とす...でもなく抉りとった


だが、不幸中の幸いはまたもや私に味方をしたらしい...風鈴の音がなり逃げ道がようやく現れる...


腕を落とせてよほど嬉しいのだろう、攻撃の隙が大きくなったカリスネクトを心の中で笑いながら「終いの壁を超える(つまらないメタ推理)」とだけ呟き落ちた肉にたかる無数の煌びやかな蝶を片目に私の存在は虚像へと落ちていった

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