弐 だって嫌いじゃん人間なんか
少し時間を使ってしまったのでなるべく早く動くことにする、取り敢えずここで何ができるかを試してみる、地面などあっても分からないような場所だが動こうとすると一定の速度で移動したい先に動けるので問題は無い。
移動の件もあり頭の中でできる行動を探してみる...その中で「情報をまとめる」と頭で考えると文字達が何ヶ所かに集まり、ファイルのようなものに格納された。
色々なファイルがあったがその大多数には鍵のようなものがかかっており開けそうなファイルは[システム]と[物語]だけであった。
[物語]は恐らく最初に見た私のあの世界での行動だろうから[システム]を開こうとする。
「開け」と頭の中で命令しても開く気配がないのでファイルの方向へと移動して取り敢えず触れてみる。
指がすっと通り抜けて触れたファイルから1000文字程度の文字が出てきてが先程まではあった数個のファイル達は全てどこかに行ったようだ。
システムを見ていると化け物と出会った時の些細な不可解を解決する文言を見つける。
『左目だけで生物を見るとその生物の種族 脅威度 名前 レベルが表示される』『右目だけを開けると自分のステータスが表示される』
つまり偶然左目だけを開けていてあの化け物...狼煙のステータスを見たということだ。
そんな新しい知見を得た数瞬後、視界が不安定な世界を見るものから緑色の平原へと変わる、元の世界に戻ったのだろうか?それにしては世界が明るい。
しかし体の感覚は現実の中にいると少しの浮遊感で私の思考を変化させる...浮遊感?
気づいた数瞬後、私の足は地面に不安定な形で着地する、それと同時に少しの遠心力の様なものも感じる...場所が変化している事と関係していそうだが何も思いつかない為単なる謎として処理をする。
とにかく情報を得ようと立ち上がり、辺りを見回してふと視線の先に気になるものが映る、先程私に敵対した兵士たちだ。
森の中から息を殺して何をしているかを確認する、よく見てみると何人もの兵士が警戒しながら例の正方形を回収している。
あれが何かということも気になったが取り敢えず新しい知見を使うこととする、右目を閉じて左目で兵士たちを見る...そうすると
︎︎︎︎ 人間
X
クーター
5
と出てくる、色々と確認を行いたいがクーターとやらがこちらに視線を合わせた...すぐに視線を外して森に入ったから問題は無いと思うが一応奥へ奥へと逃げていく
一先ずはあの文字だけの世界の詳細を知るためにも新しい知見を使う、周りに狼煙がいるかもしれないから余り時間はかけられないかな?そう思い一先ず見晴らしをいい場所を探し、背を木にベッタリと付け周囲を警戒しながらもう1つの新しい知識を使う。
視界を調整しなければと思い、少し首を傾けてから左目だけを閉じる...そうすれば顔から数cm先に1平方cmぐらいで幅の無い黒に金色の...文字だろうか?小さくてよく分からない。
取り敢えずで頭の中で「拡大」と命令したが意味が無いのでとりあえず触れてみる、そうすればやはり指は通り抜けた、ファイルと違い特に文字が展開したりもしないので色々と弄ろうと指を少し動かすとその動きと同期してステータスも動いてくる。
それができるのならともう1つの指も入れてそれぞれを対角線上に動かしてみる...予想どうりにサイズが大きくなり文字が読めるようになる。
レベル:1
耐久力:7/8
魔力 :2/18
EXP :3/15
ステータス
パーティー
装備品
魔法
所持品
ひとまず見回して分かることは魔力が2になっている事とEXPを手に入れている事だ
この世界に来てから魔法の様に見えたのはあの文字だけの世界だけだから恐らくあそこから出されたのは魔力が足りなくなったからだろう。
そしてEXP...これはあの狼煙を殺した時のものだ、そしてこの時点で分かることがある、恐らくこっちの世界の生物を殺した事で手に入るのだろう、もし元の世界で殺した数も入るのならば3程度で済むはずは無いから...
色々と思考を混ぜるが今の状況を思い出し、すぐに[魔法]と書かれている部分に指を通す...狙い通りに指はすり抜けファイルを開いた時とは違い画面が何分割化されてカシャカシャと動いた後に風鈴のなる音がしたかと思うと画面の表示が変わっていた。
【システム】
終いの壁を超える
取り敢えずシステムという物が気にはなるがおそらく隠れることが出来たのは下の[終いの壁を超える]だろう...狼煙がいつ現れるかも分からないから取り敢えず[終いの壁を超える]を開く。
...するとまたもや画面が変化していく、画面が複雑に折りたたまれていき再度開かれた時にはやはり表示が変化していた
その文章を要約したら5n MP消費するとn分だけメタ世界とやらに行ける事と入るためには何かしら神を殺す意を含めた言葉を言えば入れると書かれていた
そうすると気づくことがある...明らかに多いのだ魔力の消費が、本来MP5×nならば最低値になったとしても3だけは残るだろう...しかし実際の残り魔力は2である。
ここからわかる事は至極単純0になれば少なくとも好ましい結果は残さないということだ...魔力の回復方法を調べる為に先程見た画面に戻り[システム]を開こうと試行錯誤するがその視線の先に見たくは無い影が見える。
相手はこちらに気づいていないようなのでとにかく走り森を駆ける...先程の街が見えない場所で安堵したと同時に緊張感が高まる...。
理由は単純ながらもこの世界で1番の恐怖心を感じる、狼煙...先程まで私を追っていたそれがまるでそこの草むらからあそこの木から空から地下から...そして私の背後からありとあらゆる場所から私を睨んでいる...そんな感覚が全身を這い、そして恐怖へと姿を変える。
とにかく視界を開こうとほんの少しだけ木の横に見える淡い橙色を全ての賭けにただひたすらに走る...然し幾ら走れども視線は絶えない、最早目の前に居るかの様なそんな恐怖心に狩られ、最早思考も介さずにただ走りたっていた。
どんどんと足を回す速度は早くなり足の痛みは強くなっていく、思えばここに来てからずっと足を酷使している...本当になんでこんな所に来たんだ?
周りの視線から目を背けるかの様にこの世界に来るまでのことを思い出していると思わぬ収穫を得る、直近の記憶が無い、この世界の少し前の記憶がまるでバグでも起きたかのように認識することが出来ない。
然しその前の記憶はスっと思い出すことが出来る、いつも通りに仕事をしようと最寄りの駅に向かっていたはずだ...
そんな思考で周りの絶望から逃げていたが、そんな思考も必要なくなる、視界の端に少し映る程度だった橙は最早視界の半数を閉めて死角から見えてくる視線の雨も少しづつ減っていく。
最早真後ろにしか緑色が見えない場所にまで来ると安堵感は出てくる...ある程度中央まで歩いて背を地に向け両手を広げ、暗く落ちてきた空を仰ぎ見る...
ようやく余裕が出来てきて先程の魔力のシステムの確認でもしようかと思ったがやっぱりやめて別のことを考える...取り敢えずこの世界でも何かを残してみたい、そうだこの世界での目標だ目標でも考えておこう...。
1つ目にこの世界の事を知る、現状何も分かっていない、この目標次第ではほかの目標も消えてなくなるかもしれない
2つ目にレベルを上げる、少し戦って分かった事だが狼煙...いやあの矢の速度からしてもこの世界の人間にも私は今かすり傷すら付けられない、ステータス欄の中に更に入ってたステータスの事も考えると色々攻撃力とかも入ってるだろうし
3つ目に普通の日常をこの世界で生きる、この世界の人間たちに襲われた以上これは出来るかは分からないけど手に入れる事が出来そうなら積極的に奪っていこう
4つ目だがこれを忘れていたね宣言までしたというのに...神がこの世界にいるのだとすればそれを全て殺すこと
後は...ああそうだこれは必要だ..うん忘れてはいけないただ一つの目標
5つ目にして最後の目標、現状最高目標にして他の全てを諦めたとしても必ず達成するたった一つの目標...
「あの砦のクソ野郎ども全員殺してしまおうか」
終いの壁を超える(つまらないメタ推理)
詠唱:神への殺害宣言
消費MP:1分につき5
等級:ERROR
効果:現実世界にある第四の壁を飛び越えてその世界を探索できる。
元の世界に戻る際完全に同じ場所に現れる
備考:この魔法に対して知識を蓄える度、行動範囲等が上がりMP消費が増える