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壱 神を弒する 故に生く

私は今必死に足を回し、白く長い髪を地面と平行になるほどの速度を出しながら逃げ続けている。


思い返せば数分前、突如どこかも知らない森で目覚めたかと思うと周りを見る暇すらなく背後から化け物が迫ってきた。


その姿はまるで狼を内側から膨らませた様な姿で、裂けた皮膚からは何かを焼いたかのような煙が(なび)いており、その体は、凡そ成長しきった木の半分はあるかと思う程に高く(そび)びえている。


その巨体は私の後ろに堂々と立っていた木を破壊しながら、1寸の距離を離さず酸性の(よだれ)で背の皮を溶かしていた。


走る道はぬかるみ、腐ったツタが足に絡まりに来る、生きる為に出来るだけ木の多い道を走っているが、溶ける皮の感覚と(たま)に刺さる木の痛みがそれ(化け物)との距離を表している。


体力が限界を迎え始めた頃、1筋の光が鬱蒼(うっそう)とした森の中で木漏れ日の如く網膜に映る、その先に街があると信じ、とにかく足を蹴る力を強めた...存外人は死ぬ気となると走ることが出来て、このまま逃げることが出来ると思った...


しかし、その様な甘味な幻想は1つの小枝により打ち砕かれる...迫る地面がコマ送りの様に見え、何度味を見たかもしれない土の味が舌先に広がる。


慌てて背を天から地に向け直すと赤い双眸(そうぼう)が私を見下していた...巨腕が振りかぶられて机上に伏した蚊を叩き潰すようにその手が迫り来る...


間一髪で避けることは出来たが距離が近すぎて、恐らく平地に作られた街には届かない、それどころか先程のように逃げられるかも怪しいだろう...


どうにかしようと周りを見るとふと、折れた木が視界にチラつく、相手がさっきと同じ攻撃をしてくれればもしかしたら折れた木に奴の手のひらを突き刺せるかもしれない。


しかし走っている途中で有り得ない現象を網膜に反射させる...木が再生したのだ、それを不気味には思うがその思考は振り払わなくては奴から生き残れない。


思考を木から自分の命に変える...木の再生はかなり早い、こうなってしまっては手を串刺しにする事も距離を離すことも出来ない...


一先ずは再生した木を使い、視界を遮断して身を屈めて薙ぎ払いを避ける...折れた木を使ってもう1度串刺しを試そうと思ったが、恐らくは再生が先に終わると思い、次の防御策を考える。


しかし、なかなか思いつかずにただひたすらに攻撃から身を守っていた...すると、痺れを切らしたのだろう、手を横に振り払った後に予備動作すら見せずにその巨体を縮め突進してきた。


迫り来る灰褐色に三途の川がちらりと(まぶた)の中に見えたが、ひとつの思考の元にその虚像は直ぐに消滅した。


狼はイヌ科であり古今東西犬とは肉球を持つものだ、肉球とは毛がなく、つまりは滑りにくい...そんな場所に小石を投げればどうなるか想像にかたくない...


もっとも少しでも間違えればその巨体に肉の塊にされるだろうが...


しかして光明見えれば託す他なしという、そこらにあった余り土に濡れていない石をみつけ、滑り込ませる...


これまでの人生経験が功を奏したかすんでの所に爪がかすっただけで狼は背後にあった気を薙ぎ倒し、幹に倒れ込んでいた...


木の再生に巻き込まれて枝の1部となったオオカミを見守った(のち)、ふとこの世界の自然や唐突な転移とは違うたった一瞬に見えた明らかな()()を思い出す。


あの狼を見た時にふと狼の横に上から

狼煙

Z

ターツ

1

とよく分からない物が書かれていたのだ...この世界がもし異世界とかで転移でもしたのなら恐らくステータスとかなのだろうが...


様々な思考をしても分からないので「まあ人に聞いたらわかることだろう」という考えを手に森をぬけて光の元へと向かう...


森をぬけた瞬間に弾丸の如き矢を頬にかすめた...再度撃たれる前に必死になって両手を上げ、街の近くにゆっくりと歩いていく。


声が届く程の距離に入ると緊張か頭も使わずに言葉が出てくる


「助けてくれ!!突然わけも分からない場所に飛ばされて化け物に襲われたんだ!!匿ってくれ!!」


そう喉が痛むほどに叫ぶと兵士たちの血の気が引いていき、甲冑をつけてどこの国の言葉か分からない言語を叫び 、それに合わせて兵士たちが何処からか現れる。


それに気づくと私の足は直ぐに街から距離を取ろうとしていた...しかし


「神よ!!偉大な神よ!!我らが街を救いたまへ!!臆する者 罪を持つ者をすべからずを(たた)え!!そして(すく)いたまへ!!」


数人の兵士がそう叫ぶのを鼓膜に響かせた直後、私の体は兵士が叫んでいた時に投げたのだろう、正方形の光を一切反射していない黒色の何かに引きずり込まれていた。


もはや引力とさえも呼べぬその力に一瞬と呼ぶのも相応しくない程に早く黒い何かに入れられてその暗黒と言うには暗すぎる世界に入れられる。


理不尽を感じ、恐怖を覚え、ただひたすらに世界への、神への侮辱を叫び、神への殺意を言葉に変えた。


然し、そんな言葉を叫んだその刹那、世界に色が戻る...否、視界に訴えてくるような()()では無い、言うなれば頭の中...実際には見えないが見えているようになっているだけの危うい視界、然して実際にはとても安定したそんな虚像。


その虚像には文字が見えた、前後左右に等間隔で並べられた何十 何百行もの文字がこちらを見ているのはいっそ恐怖を感じる。


それでもとにかくあの虚無から抜け出せたことに安堵し、それと同時に何かのきっかけで急にあそこ(深淵)に戻るかもしれないと考えてしまい、唐突に焦燥感が生まれ始めた。


とにかく何かをしようとその文字たちを見てこれまた恐怖する、これまでに私が感じた感情や叫んだ言葉がつらつらと綴られているのだ。


先程感じた気持ちたちが│の様な形のものに次々と綴られていく(創られていく)...そん中でも特に異質なものを見つける。


【この文章を声に出して呼んでください】

そんな私に対して語りかけるような文字、一通り下にある文字を見てから問題なさそうだと思い少し喋りやすく改良はしたがその言葉を声に出してみる。


「この物語は人の物語

神は観測を諦めた

箱庭いじりを見ることは無い

題名通りの物語を見たいのなら今すぐ帰ることをおすすめしよう

地獄を征きて 絶望を生きて そして逝く

そんな物語だ そんな地獄だ

そんな地獄が好きならば 私は歓迎をする

是非楽しんでくれ」


この文章を読み終えた瞬間、私は何かが始まった気がした

終いの壁を超える(つまらないメタ推理)

詠唱:神への殺害宣言

消費MP:1分につき5

等級:ERROR

効果:現実世界にある第四の壁を飛び越えてその世界を探索できる。

元の世界に戻る際完全に同じ場所に現れる

備考:この魔法に対して知識を蓄える度、行動範囲等が上がりMP消費が増える

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