5.誘導尋問する母、それにひっかかる父
パフェ王妃が、神妙な顔でジッ~と王様の顔を見つめる。
王様は、その視線を見る事が出来ず、天井を見るように目を反らす。
『そういえば、自分、昨日も、一昨日の夜も、夜中にベッドから出て行ってたわよね・・』
『ワタシはてっきり、トイレかと、ズッと帰って来ないから、てっきりお腹を壊したのかなって心配してたのよ・・』
『ヒューッヒューッ・ビユッ・・』
天井を見ていた王様は、誤魔化すように口笛らしき音を出そうとするが、口笛が下手で、3回目で止まってしまったのです。
王様は多分、自分の心の動揺を隠そうと口笛を吹いたのでしょうが、まったくの逆効果になってしまい、その音は、王様が慌ててる事をその場にいるみんなに伝えてしまったのでした。
王妃様は、表情を変えず、淡々と言葉を続けました。
『・・・・一昨日は、ポテトチップ、その前の日は、蒸かしておいたおイモが・・御団子も』
王妃様がそう言うと、王様が大きい声で反論する様に言いました。
『ダンゴは、違うぞ、ダンゴ何か、何処にも無か・・、ハツ・・』
王様は、王妃様の誘導尋問に自分がひっかかってしまった事が分かり、言葉をのむ。
『・・・自白したわね・・盗み食いした事を・・』
『・・・スミマセン、美味しそうで、ツイ』
王様は、天井に向けていた視線を王妃様の顔に戻し、観念する様に、白状したのでした。
『謝ってすむ事ですか、王様ともあろう御方が情けない・・子供達も自分のお父さんが、自分達のオヤツを盗み食いする・・、ワタシも情けなくなって来たわ』
王妃様の声が。冷たい声から怒った声に変わり、口調ももとに戻りました。
(ママの口調が戻った、・・良かった)、自分達の母を良く知るプリンとアラモードはその変化を敏感に感じ取っていた。
『ワタシは、アナタの身体を心配して、食べるのを控えて欲しいと言ってるのよ』
『それなのに、ワタシが見てない所で、盗み食いをするなんて』
『こんな人を好きになるなんて、あああ、情けない。私の青春返して欲しいわ・・』
王妃様は、そう言うと自分の席にあった、紅茶を持ち、自分を落ち着かせようとするように少しだけ飲みました。
『・・・レモネード料理長、侍従長のグラタン殿は、もう出勤してるかしら??』
『ハッ!未だですが、グラタン殿は何時も出勤が早いですので、もうじきかと・・』
『そう・・、分かりました。それでは、悪いけど、グラタン殿に代わり、アナタが盗み食いをした犯人をお城の地下にある牢屋に連行して下さい!』
『エッ、犯人??、王様を地下の牢屋に・・ですか??』
『当然よ・・・わが国では、身分に関わらず、ドロボーをすれば捕まるのよ・・』
『上に立つ者ほど、襟を正さなければいけないの!』
王妃様の物言い、決断にその場にいるみんなは揃ってビックリしてしまう。
唖然とするみんなの様子をみて、王妃様は、確認する様に王様に聞きました。
『アナタ・・異論はありますか?』
王妃様から、そう問われた王様は観念したまま、両目を閉じていた。
『ナイ、・・弁護士を呼んでくれ』
大人は成す術なく、その場の状況を見守る事しか出来なかった。
そんな状況の中、王様を助けようと動いたのが、二人の子供達でした。
『ママ、パパを許してあげて・・』
『父上にもう一度やり直す、機会を・・』
『パパの牢屋行きを許してくれるなら、代わりに私達も罰としてオヤツ食べないから、だから許して!』
(エッ姉上、ワタシ・・・たちって、僕も??・・聞いてないよ・・相談ないんダモン)
アラモードは、姉の突然の提案に少し抵抗もあったが、優しい彼は、最終的にそれを受け入れた
『・・・あなた達が其処まで言うのなら~、本当にいい子達ね。お母さん、夫には恵まれなかったけど、イイ子達に恵まれたわ・・』
プリンの提案は、王妃様も含め、収拾がつかなくなりそうな大人達の事態を救ったのでありました。
『それでは、アナタ、今度盗み食いしたら、牢屋行き・・・、3人には罰として1ヶ月オヤツ抜きを命じます』
王妃様は、本当は子供達のオヤツ抜きを一週間にしたかったのですが、王様に罪の意識を感じさせることが大事だと思い、一ヵ月にしました。
子ども達が自分の罪を被ってしまった事に、王様は凄く反省している様でした。
そんな王様の様子を見て、王妃様、チョコ夫人、レモネード料理長も、これで王様が盗み食いをしなくなると思ったのですが・・・・。