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第7話 女の心は猫の眼(女性の心理は、猫の目のように変化しやすい)

 作者「ポニテとツイン、どっちも好きなんですよ。でも妹キャラには黒髪ツインが譲れなくて……()」


「……お願いします。どうか私を……いえ、私たち母娘を拾ってくださいませんか!?」


 ま、マジか。


 動物が捨てられていたら、たとえそれが人間だろうと放ってはおけない! なぁんて調子のいい考えで行動してしまったが、この返しは全く想像していなかったぜ……。



「や、やっぱり無理ですよね……」


 自分でも無茶なことを言っていると思ったのだろう。


 雨か涙なのか、もはやなにで濡れているか分からないビショビショの顔で、不安そうにこちらを見つめてくるお姉さん。


 そんな表情を女性に向けられた経験が無い俺は、思わずたじろいでしまう。


 なにしろ相手は超美人なお姉さんだ。それにこの庇護欲をかき立てる上目遣い……。これはヤバい!


 心情的には今すぐ「はい、喜んで!」と言ってしまいたい。



 だが落ち着け。冷静に言葉を選ぶんだ。もしかしたら新手の詐欺かもしれないし。


「あの、拾うというのは一体どういうことで……?」


 おそるおそる(たず)ねてみる。

 すると話を聞いてもらえると思ったのか、彼女は花の咲いたようにパアァ、と明るい笑顔になった。


「(その笑顔はズルくないっすか……)」


 不意打ちにそれを見てしまった俺の心臓が思わず跳ねた。この人、無自覚に人を魅了させてくるな……ファンタジー世界のサキュバスかよ。



「聞いてくれますか!? 実は私たち、どこにも行く当てがなく「お母さん、やっぱりダメっ!」あっ、ちょっと美愛(みあ)!?」


 お姉さんが自身の境遇について話し出そうとした時、それまで黙っていた少女の方が急に声を荒げた。


「って……え? お母さん??」


 さすがに突っ込まずにはいられなかった。


 だって、この女の子……俺と同年代にしか見えない女性を、お姉さんではなくお母さんと呼んだぞ!?



「お母さん……この人はダメ」


「だ、ダメってなにが!?」


「ミアはお母さんさえ居れば、家なんて無くても大丈夫だから!! こんな見ず知らずの男に頼る事なんて無いよ!」


 美愛と呼ばれた少女の方は、ただでさえ若く見えるお姉さんを更に幼くしたような感じの美少女だった。


 彼女は猫みたいな大きい瞳をスゥッと細めて、俺を値踏みするかのようにジッと観察し続けている。


 この視線が痛い。恨みでもあるかのように俺を睨みつけている。

 可愛いけど怖いな、この子。そのうち怒り狂った猫のように、フシャーとか言って飛び掛かってきそうだ。



「いや、俺はまだ何も頼ってくれとは「こんなエッチな顔をした奴について行ったら、ミアたちなんてその日のうちに妊娠させられちゃうよ!」――キミはいったい、何を言ってるのかなぁぁ!?」


 人を犯罪者みたいに言いやがって!

 近所の誰かに聞かれたら、勘違いされるじゃないか!!


 それに俺はコータと違って真面目顔だ!

 ……たぶん。



「んむー!(苦しい!)」


 おっと、いけない。

 不穏なワードを叫ばれたから、つい反射的に彼女の口を塞いでしまっていた。


「もがー!!(離せ変態!!)」


 何を言っているかは分からないけど、絶対に悪口だ。この状況で解放したら、確実にさっきより酷いワードを叫ぶだろキミ。


 ジタバタと暴れる彼女をどうにか押さえていると、お姉さん――もといお母さんが申し訳無さそうに頭を下げる。



「あの、ウチの娘がすみません……」


「こちらこそすみません。妹と喋ってる気分でつい……」


「んむー!(勝手に妹扱いするなー!)」



 ――ゴスッ


「お゛~っ!?」


「さいってー。やっぱり男はみんなクズだね。ぜんぜん信用ならない」


 彼女は俺が油断した隙をついて拘束を振りほどくと、その勢いのままに回し蹴りを()()()()に叩き込んだ。それはもう、見事なクリーンヒットだった。


 しかも彼女のポニーテールが鞭のようにしなり、俺の顔面をビンタするというオマケ付き。


 フルコンボだドン。そんなアホなことを脳内で実況するほど、痛い。脂汗が顔に(にじ)む。



「ちょっと、ミア! むやみやたらに男性の股間を蹴るのはやめなさいって、いつも言ってるでしょう!」


「だってお母さん! 絶対にコイツ、ミアに対してイヤらしいことを考えてたもん!!」


「なら、ヨシ!」 


 あまりの痛みに(うずくま)って(もだ)え苦しむ俺を他所(よそ)に、母娘は仲良く家族の会話を始めていた。



「ひどい……成長したらお母さんみたいな美人になりそう、なんて想像をしただけなのに……」


「え? あらあら、嬉しいわ~」


「ちょっとお母さん! こんなヘンタイに騙されちゃダメ!!」



 あの、お二人ともめっちゃ元気ですね……。俺が助ける必要、あります??



 ◇


「それで、話ってなんでしたっけ……」


 数分かけ平常心を取り戻した俺は、仕切り直してお姉さんに問いかける。


「そ、そうでしたね! 実は私たち、帰る家が無いんです!!」


 ……あ、やっぱ聞き間違えじゃなかったわ。


「それはどういったご事情で……?」

「えっと、その。お話ししますね……」


 黒髪の爆乳お姉さん――名前を砂霧(すなぎり)華菜(かな)さんという――はこう見えて32歳のバツイチ子持ちなのだそうだ。その子供とは勿論、今も隣に居る美愛(みあ)ちゃんだ。


「夫とは、社内恋愛でした。娘の美愛には申し訳ないですが、あの男に惚れた私が間違いだったんです……」



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