表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/44

第5話 馬鹿は類を呼ぶ?


 馬鹿コータのお陰でアシュフィールド(グレートおっぱい)助教授に注意されてしまうという一幕(ひとまく)があったものの、生物の講義は無事に終了した。


 助教授のお叱りが効いたのかコータも真面目に勉強に取り組み、本日最後のコマである数学の講義も無事に終了した。



「……おいソーゴ! お前のせいで怒られちまったじゃねえか!」


 公太は反省文代わりに与えられた生物学の課題を解きながら、恨めしそうに文句を言ってくる。


 まぁ確かに俺にも非はあるが……9割がたはコイツの自業自得なので同情はしない。むしろアシュフィールド先生と会話できたんだから俺に感謝してくれと思う。



「そういやお前、今夜のテニサー主催の飲み会には来るんだろ?」


 のんびりと帰りの支度(したく)をしていると、コータがそんな質問をしてきた。


「テニサー? ……あぁ。肝心のテニスをしないで遊んでばかりな、あのなんちゃってテニスサークルか?」


 コータの付き添いで入ったはいいものの、ほとんど参加していなかったから存在を忘れかけていたわ。


「部長が忘年会のリハーサルをやるんだって。すげぇ張り切ってたぜ」


「はぁ? なんじゃそりゃ」


 なんだその、忘年会のリハーサルって。


 ただの飲み会に予行練習なんて必要無いだろう。



「やっぱそこ気になるよな? だから俺も部長に聞いたんだよ」


 まぁ、あのチャラい部長の事だ。

 なんとなく、しょうもない理由な気がするけど。


「そもそも今年の忘年会って、クリスマスの一週間前へ開催日が変更になったんだよ。なんでもその理由が、他のサークルと合同で開催することに決まったとかで」


「あー……。クリスマスの当日付近は、都合が悪い奴がいるだろうしな」


 クリスマスの予定を既に立てている奴も多いからな。そりゃあリア充たちは忘年会よりも恋人を優先するさ。人を集めたきゃ日程をずらすだろう。


 俺? もちろん家で陽夜理と楽しくパーティをする予定だったけど?



「……で? それが忘年会のリハーサルと、いったいどう繋がるんだよ?」


「相手のサークルに、部長が本気で惚れた女子が居るらしくてさ」


「はぁ~? 女に見境の無いあの部長がガチ恋? ははっ、冗談だろ」


「それがマジなんだって。だから部長もテンション上がりまくってて――


『忘年会で俺は彼女に告白するぜ。そしてクリスマスはその子と一緒に過ごすんだ! だから確実に成功させる為にも、今から予行練習じゃー!』


 ――なぁんて意気込んでいるんだよ。なんだか必死過ぎて笑っちまうよなぁ!?」


 ようやく課題を解き終わったコータは、ゴソゴソと鞄の中に解答用紙をしまいながらゲラゲラと笑い声を上げる。


 ちなみに俺はその隣で妹の陽夜理(ひより)からのメールを確認している真っ最中だった。あいにくと、部長の恋愛模様には一切の興味が無い。



「で、どうする? ソーゴも行くだろ??」


「ん~、妹と夕飯を作る約束をしてるから俺はいいや。悪いなコータ、また今度埋め合わせするから」


「そっか、なら仕方ないか……」


 残念そうにガックリと肩を落とすコータだったが、すぐにまた笑顔に戻る。本当に切り替えの早いヤツだぜ、まったく。



 俺はスマホをカバンにしまうと、コータに別れを告げて教室を出た。


 廊下に出てからふと窓の外を見てみると、空がどんよりと黒い雲に覆われているのが目に入った。


「おいおい、マジかよ……」


 (さいわ)いにもまだ雨は降り始めてはいないが、いかにも冷たそうな風が木の枝をザァザァとしならせている。この様子だと、いつ雨が降り出してもおかしくはないだろう。


 俺の記憶違いで無ければ、今日の天気予報は一日中晴れだったハズなのだが。



「はぁ。マジで予報なんて当てにならないな。雨に濡れる前に帰れるといいんだが」


 ついブルーな気分になっていると、さっきまで居た教室から公太のやかましい声が響いてくる。他の友人とくだらない話でもしているのだろう。


 友の変わらぬ能天気さに苦笑いを浮かべながら、廊下に(たむろ)する学生たちの合間を縫うようにして歩いていく。



「うぅ~、さみぃ!!」


 屋外に出ると、想像以上の寒さに身体がぶるりと震えた。


 思わず小走りになりながら門の外に出る。すぐさま、かじかんだ手をジーンズのポケットに突っ込み、クシャッと凹んだタバコとホイールの錆びた鈍色(にびいろ)のオイルライターを取り出した。


 そして少しだけ湿気(しけ)っているタバコを口に咥えると、ライターをザリッ、ザリッと音を立てて火を付けた。


「あー、冬は嫌いだ。喫煙者に優しくねぇ」


 ――そういえば両親が居なくなったのも、こんな寒い日だったな。



「……早く帰って、ヒヨリに美味しいご飯を作ろう」


 空の黒さを煙の白で塗り替えるように溜め息を吐くと、俺は家路(いえじ)を急ぐことにした。



作者「友人がクリスマス付近で妙に付き合い悪くなったと思ったら隠れて恋人を作っていたこと、あると思います(号泣)」



フォローや星のレビューをいただけると大変励みになります。よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ