第二話︰は?
目が覚めるとそこは、森の中だった。いや、森の開けた場所に寝っ転がっている。
俺は何をしていたんだっけ?…そうだ、俺は確か死んで、そこで…
『お目覚めになりましたか?』
突然メッセージウィンドウがあらわれ、そこにはこう綴られていた。
思い出した、神とかいうやつに異世界にとばしてもらったんだった。
となると、ここは異世界で…はっ!俺の体!俺の体は理想の細マッチョ体型に なっているのか!
期待をこめて見た自分の体は…いつもの見慣れた化け物マッチョ体型だった…
『クククッッッ、騙されてやんの!こんな簡単に引っかかるとは思わなかったぜ!』
失望していた俺はその言葉で我に返り、
「騙されて?お前俺を騙したのか!お前は神じゃないのか!」
『神?そんなわけないだろ!俺はただの悪戯好きの悪魔さ。死んだお前の魂が彷徨ってたから呼び寄せてやったんだ。逆に感謝しろ!』
何なんだコイツ!ムカツクし、殴りてぇ!
「俺を元の世界に帰せ!」
『元の世界に帰せだぁ?お前は死んでいるんだ。元の世界に帰れるわけ無いだろ!』
なっ、たしかに俺はあっちの世界で死んだから、元の世界に帰ることはできないな…
『まぁ、お前はこの世界で生きるしか、他に道はないんだよ。良くて一週間生きられるかどうかだがな!クククッッッ!』
その文字を最後にメッセージウィンドウが消えてしまった。
「くっそー!あのやろー、いつかあったらボコボコにしてやる!」
大声でそう叫ぶと、近くの草から、ガサガサと音がした。
「誰だ!そこに誰かいるのか!」
その言葉に反応したように草から出てきたものは…猪だった。いや、元の世界の猪とはちょっと違う。角が生えているのだ。
「グゴォォォ…」
その猪は唸り声のようなものをあげると、一直線に俺に突っ込んできて───!
俺はそれをなんとか避けたが、猪はそのまま木に突っ込み、その木はなぎ倒されてしまった。
ヒイエェェェェェェェ!!あんなのに突っ込まれたら体に大きな穴があくぞ!
その猪は木に突っ込んだにもかかわらず、ピンピンした様子で、またこちらに狙いを定めている。
とりあえずこれは逃げる一択だ!俺は木々を走り抜け、猪は木々をなぎ倒しながら近づいてくる。
これ…自然めちゃくちゃ破壊しているけど大丈夫か?こういうのは、俺が今倒すのがいいんだろうが、あいにくとそんな力はない。
いやまて。あの突進を避けさえすればいいから、避けながらその辺のものを投げればいいんじゃないか?そうだ、なんのために鍛えた筋肉だと思っているんだ。
そう決意した俺は、いま来た道をUターンした。流石にこの行動には猪も驚いたようだが、変わらずに俺を追いかけてくる。
そうして、元の場所に戻ってきた。猪はここで仕留めると言わんばかりの目つきで、俺を睨んでいる。
互いに一歩も動かない状況が一分近く続いたが、とても長い時間に感じた。
突然猪が動き出したが俺はそれをギリギリで避けた。そして、手に持っていた石を全力で投げた!
ズドン!!
少しでも体力を減らせるだろう、という俺の予想とは裏腹に、その石は猪を貫き、後ろにあった木にめり込んでいた。
「へっ?」
俺はそんな変な声を出してしまうのだった…