Prologue:Cronus System
おふざけで書き始めた俺TUEEEEモノです。
あらすじ盛りに盛ってますが、当方エターナル未完結常習犯ですので、そこまで行くかどうかすら分かりません。
そこのところよろしくお願いします。
『いいか、暁人。もし母ちゃんや父ちゃん、それかお前自身が危ない目に会っても、この時計がお前たちのことを護ってくれる。
だから、この懐中時計は絶対に肌身離さず持っておくんだぞ』
昔はとても快活で毎日のようにお祭り騒ぎを起こしていたじいちゃんは、ベッドの上で弱々しく震えながら俺に懐中時計を渡し、その一月後である昨日にポックリと逝ってしまった。
家族仲は勿論良好で、親族も皆じいちゃんの事を慕っていたし、町の人からもかなりの人気があったのか、今日行われていた通夜には相当の人数が参加していたみたいだ。
「……」
懐中時計を渡された時点で少し嫌な予感はしてたんだ。あのじいちゃんが肌身離さず大事そうにいつも持っていた懐中時計を、なんの前触れもなく突然俺に渡してきたんだ。なにも感じないはずがない。
「ただなぁ……」
じいちゃん、これは聞いてない。
まさか、じいちゃんの通夜の最中に急にバケモノが現れた挙句、ふとポケットの中の懐中時計を触ったら、急に周囲の時間が止まるだなんていうわけのわからない自体になるとは……
オカルトと言うべきかファンタジーと言うべきか、はたまたSFチックであると言うべきなのか、そんな訳の分からない事態に、小説や漫画の主人公たちなら興奮するんだろうが、さすがに目の前の惨状をみてそんな気は起きなかった。
周囲の灯りは急に無くなり、頼れるのは時計と同じくポケットに入れていたスマートフォンのライトだけ。ご都合主義と言うべきか、もう長らくライトをつけたままにしているのに電源が切れる気配はない。
問題はそのスマートフォンも俺の手を離れると光が消えてしまうという事で、暗闇の中周囲の状況を探るのにかなりの時間がかかってしまっていた。
スマートフォンのロック画面も、懐中時計の針も一様に時間が止まっていることを示して来て、割と精神的に参ってきている。
動かない時計の代わりに時間を計るための手段として、スマートフォンのストップウォッチ機能を使ってみてはいるが、数日が経った頃にはもうほぼ見ることがないくらいには時間の進みが遅く感じられた。
進んでいるのは確かなのだが、しかし精神的な焦りのせいか、経っていて欲しい時間と実際に経過している時間が一致しないのだ。
一寸先は闇とはよく言ったもので、未来も視界もずっと明るいままだと思っていたんだが、周囲の時間の動かし方も分からなければ、安定した視界の確保もままならないこの世界では、二重の意味でその言葉の意味を思い知るしかないようだ。
「にしても無駄にでかいな、このバケモノ……」
少なくとも斎場を歩き回った限りでは動く生き物もなにも見つからないこの世界で、一際存在感を示す巨大な球体。
生き物であるかどうかすら怪しいソレはしかし、現れた時に金切り声のような音を発して近くに居た人々を食い漁っていた。
今でこそただの球体にしか見えないが、現れた時には明らかに金属質なその体に人のもののような目を3つ携え、人であれば肌が裂けていそうなほどの大きな口を開いていた。
そんなところを見ると、やっぱり知らないだけで何かしらの生き物なんだろう。
とりあえず俺が触った機械類はネットワーク接続以外の、その機械単体で済む動作は行うことができるようで、オンラインゲームは出来ないけれどオフラインでも動くゲームはプレイできることも確認済みだ。
人間も触れると俺が動かすことは出来るけれど、意識が無いというか意思疎通が取れないというか、とにかくただ固まっていた状態のものが動かせるようになるだけで、割とどうでもよかった。
「……どうすっかな」
この事態を引き起こした原因だと思っていた懐中時計はどれだけいじっても反応無し。バケモノに関しては触って動き出すと普通にまずいというかキモいので触らず置くとして、なんとかこの事態を解決できないものだろうか。
腹も減らず、体力も減らない不思議状態のまま、半ば投げやりというか、宛もなく解決策を探す日々は続き……
……気がつけば3年ほどが経過していた。
ストップウォッチは3回付け直され、2年目の頃には1年経つ事にリセットをする習慣が付き、毎日スマートフォンのメモに適当に日記を書くことで時間の感覚を維持し、疲れない体を利用して過度な筋トレを行った結果、心做しかガタイが良くなったような気がしなくもない。
そんなこんなで疲労の無い体は夢の365日24時間フル稼働を実現させていたけれど、結局は精神的な部分での疲労感は拭えなかった。
3年目に入って「実はこのバケモノが原因なのでは?」とやっとのことで思い至り、今日、1週間かけて用意したこの会場で、このバケモノをぶち殺す計画を実行することにした。
周りに居た人間たちはみんな斎場の外に運んだ。別に視界が確保できるようになった訳じゃないけれど、何度も歩いた場所だから、もうどこに何があるのかは何となくわかっていたし、動かなくて生気が感じられないそれらでも、何となく気配が分かるようにはなってきた。
大体3m半から4m位の高さのこの球体のバケモノはどうやったら死ぬのだろうかと、安直に原始人宜しく皿の破片をモップに括りつけて作った槍でバケモノを突いたが、刺さりはしても決定打にはならなかった。
ただ、刺さるということはわかったのだ。そこからは早かった。
1週間かけてありとあらゆる鋭利なものを斎場中からかき集め、球体に直接触れることがないようにしてひたすらに刺しては割いてを繰り返す。
切り裂いた肉片すら直接手には振れないようにモップや箒で慎重に啄くようにして部屋の隅へと並べていく。どうやら直接触れていなくてもこの程度のことはできるようで安心した。
1番面倒だったのは血の処理で、動かないまま留まる赤黒い液体を、液体を吸う掃除用具等やタオル類等をひたすらにつぎ込んで、直接触れることはないように除去した。
そうして現れたバケモノの体内の中央には、いかにもこれが心臓ですというように存在感を示す特大の赤黒い肉があり、なんというか見るに絶えなかったのでとりあえずぶっ刺して肉片と同じように処理をした。
『【願望の天使】の消失を確認。対象の存在強度を上昇させます』
突然聞こえた自分以外の何者かの声に耳を疑う。確かに人間の声に聞こえた。この世界で今俺以外に喋る存在なんて、それこそSir〇くらいのものだ。合成音声と人間の声の差くらい、多分分かる……と思う。
しかし、よりなんというか、声音に人間味を感じるはずなのに、人間以外の存在に声をかけられているかのような寒気を感じる。
『システムによる世界の掌握開始。システムに【願望】を同化。システムに統合。システムを対象に可視化』
声はこちらに話しかけるような素振りもなにもなく、ひたすらに用意されたセリフを淡々と喋るように、短い言葉を続ける。
『対象の認知機能に合わせた形態に調整。『怠惰』『勤勉』『節制』『慈悲』『環境汚染』の干渉を確認。システムに統合。システム成長度14%。システム成長限界到達。作業を中断します。対象はコントロールパネルを確認して下さい』
その音声を最後に声は途切れ、代わりに目の前には大層ご立派な〇padが浮いている。
軽率ながら手に取ってみると、一体どうしたらこんな酷い顔になるのか、死んだ魚のような目をした青年の顔写真と、よく分からない文字列が映っている。
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【name】
葉山 暁人 Lv.99(上限解放可能)
【skill】
解体 Lv.40
生物非生物問わずありとあらゆる物を正確に解体できる。
工作 Lv.7
有り合わせのパーツでもそれなりの性能の物を生み出すことが出来る。
考察 Lv.1
状況を1からまとめられる。
【gift】
カシエル Lv.1
解決が困難な状況に直面した時、
自身の力を増幅させる。
ミカエル Lv.1
自身の勝利が確定している状態においてのみ、
対象に即刻慈悲の光を与える。
ガブリエル Lv.1
対象が自身よりも強大な存在である時、
それを打ち倒す明確な解を浮かび上がらせる。
エフェソス Lv.1
対象に対し煮え滾る血の槍を降らす。
ベルフェゴール Lv.1
対象の精神的意欲を削ぎ、行動、思考力を鈍化させる。
バアル・ペオル Lv.1
《ベルフェゴール発動時のみ発動》
対象の周囲に対象に対してのみ効果を有する身体を蝕む雨を降らせる。
【Achievement】
クロノスシステム起動 (☆4)
人造天使殺し【願望】 (☆3)
人造天使の解体【願望】 (☆5)
悪魔の吸収【怠惰】 (☆4)
天使の統合【勤勉】 (☆4)
天使の統合【節制】 (☆4)
天使の統合【慈悲】 (☆4)
悪魔の吸収【環境汚染】 (☆5)
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「いや……なんだこれ?」
とりあえず書かれている内容からしてこのヤバい顔をしてる、今にも人を殺しそうな死んだ魚の目の青年は、恐らく、多分、きっと自分なのだろう。とても信じたくはないが。
「というか、ゲームっぽい中身にしては色々と内容が雑だな……ん?」
画面をたまたま、本当に偶然に指を滑らせた結果、先程までの画面の下にさらに文字列が見えた。
「【Quest】世界救済シナリオ……? 人造天使7体の討伐……?」
何が何だか全くもって分からないが、とても面倒なことに巻き込まれたのであろうことだけは、何となく、状況とテキストから合わせて理解せざるを得なかった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
気が向いたらぼちぼち更新していきますのでよろしくお願い致します。