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95.まさかの手がかり

心結にもモンチラにもすっかりとなれたのだろう。

子供たちを含めてラオの部屋でお茶会が開かれていた。


「おねえさん、モンチラちゃんは何が好きなのですか?」


フェリィちゃんはもうすっかりモンチラの虜だった。


「果物とかが好きかな。

あとは甘いものも大好きだよ」


『キュ!キュュ!』


フェリィの膝で嬉しそうに飛び跳ねるモンチラ。


「この干しアブリゴをあげてもいいですか?」


心結は微笑みながら頷いた。

男の子達も恐る恐るモンチラと交流をはかっているようだ。



「今回は、子供たちが我儘を言ってすみません」


ラオは申し訳なさそうに心結に頭を下げた。


「かまわないですよ、モンチラちゃんの許可もおりていますし」


「普段は大人しいイイ子達なのです。

まさかこんな大胆な事をしてくるなんて私も驚いています」


そう言いながらも子供たちを見るラオの目は優しかった。


「子供の好奇心は凄いですね。

本当はきっと怖いものだと思っていたのでしょうね。

でも目の前で見てしまったら、触れてみたくなったのでしょう」


心結はモンチラを中心に楽しそうに笑ったり……

時には驚いたりしている子供達をみて自然と笑顔になった。


「ここの子供たちは外の世界を知りません。

知識を得るのは本の中や大人から聞く話からだけです」


「そうですか……」


(今の情勢では、外に出ることは叶わないのだろうな)


心結はなんともいえない気持ちになった。



「失礼します」


若いコウモリ獣人の男性が部屋に入ってきた。


心結と子供たちの姿に一瞬ギョッとしたが……

直ぐにラオの元にいき、そっと耳元で何かを囁いていた。


「…………わかりました」


二人は深刻な顔をして頷きあった。


「すみませんが、少し席を外します。

あなたたちもそろそろ家へと帰りなさい」


「はい……」


子供たちはきちんと返事をしていた。

が、まだまだ帰りたくない様子だった。


帰るのですよと目で諭しながら……

ラオはその男性と連れ立って部屋を出て行った。


「じゃぁ……俺たちは帰るわ。

お姉さん、今日はありがとうございました」


そう言ってふたりの少年は部屋を出て行った。


「気を付けて帰ってね」


心結は二人が見えなくなるまで手を振って見送った。


「フェリィ……俺たちもそろそろ帰るぞ」


「…………やだ……帰らない」


フェリィはぎゅっとモンチラを抱きしめたまま

いやいやと首をふって動かない。


「フェリィ……わがままを言うな。

お姉さんにモンチラを返しなさい」


キールは無理やりにモンチラをフェリィから奪おうとしていた。


「待って、キールくんだっけ?」


「はい、キールです。フェリィの兄です」


(兄弟だったのか!?)


心結はかがんでから、フェリィの目をみて言った。


「フェリィちゃん、どうして帰りたくないの?

モンチラちゃんとまだ遊びたいの?」


「…………」


フェリィは目に涙を溜めながら首を横にふる。


「じゃぁどうしてかな?」


「…………から」


消え入りそうな声で何かを呟いた。


「ん?もっと大きな声で教えてくれるかな?」


「…………ちゃん…………から」


フェリィはすこし言うのを躊躇っているようにも感じた。

しかし幼子心にもこのままではいけないと思ったのだろう。


「……エリゼちゃんに……モンチラちゃんを会わせたいから」


ついに泣きながらそう言った。


「エリゼちゃん?」


心結は首を傾げた。


「フェリィ!! そのことは誰にも言わない約束じゃないか」


キールがもの凄い剣幕でフェリィに詰め寄った。


『キュッ!!』


驚きのあまり、モンチラがフェリィの腕の中から飛び出して

心結の元へと戻ったくらいだ。


「大きな声をださないで!

モンチラちゃんがびっくりしているから……」


泣きながらもフェリィはキールに反論する。


「えっと……どういう事かな?」


心結は二人に再びソファーに座るように促した。


暫くの間二人は、睨みあって黙っていたが……

やがてキールが語りだした。




「なるほど……」


キールの説明をきいて心結は頭をかかえた。


「嘘みたいな話なんですが、本当です」


二人の視線が不安そうに心結に注がれていた。


(あー、どうしようかな。

これはラオさんに内緒にできない案件だわ。

でも誰にも言わないでって、最初に念押しされたしな)


話を纏めるとこうだ……。


キールとフェリィちゃんが遊んでいた時の事だ。


入ってはいけないと言われている禁止エリアに

ボールが入ってしまった。


少しならいいだろうと二人で入ってみると

偶然小さな横穴をみつけてしまい、いけないと思いながらも

つい探検したくなり入ってしまった。

するとその道がなんと神殿へと続く道であった。


それは神殿のとある部屋まで続いていて

そこには朽ち果てた女神像と祭壇があったらしい。


それから毎日のように大人の目を盗んで二人は

そこに遊びにいくようになった。


二人は女神像と祭壇を奇麗に掃除して祀った。

時には花を飾り、お菓子も供えた。


そんな日々が続いていたある日……

何故か祭壇の上に木の実が置いてあった。


二人が不思議に思い木の実を触ろうとした時に

それは起こった。


木の実がひとりでに動いて“こんにちは”という

文字を模ったらしい。


それから今日まで姿の見えない者と木の実を通じて

やり取りをしていたらしい。


(ファンタジーなのかホラーなのか

わからない現象だな……話だけ聞くと……)


心結は若干ひいていた。

子供の適応能力ハンパないな……。


「それで、なぜモンチラちゃんに繋がるのかな?」


気をとりなおして疑問をぶつけてみた。


「エリゼちゃんが言っていたの……。

昔は山の中に動物が溢れていたんだって。

みんなエリゼちゃんのお友達なんだよ」


フェリィは自分の事のように自慢げに語った。


「でも今は誰もいなくなっちゃったんだって。

エリゼちゃん寂しいって泣いているようだった。

だからモフモフで可愛らしいモンチラちゃんと

会わせてあげたら元気が出るかなって……」


最後は自信なさげに声が小さくなっていった。


「…………」


心結は悩んでいた。

どうしよう、どうしたらいいのだろう……。


神殿へと続く秘密の道……。

女神……、祭壇……、姿の見えない何か……。


エリゼちゃんか……。

ん?エリゼちゃん……待てよ!

この名前どこかで聞いたな。


「空の神“エリゼ”様です」

ラオの言葉が思い出された。


「あっ!!」


心結がいきなり大きな声を出して立ち上がったので

二人はびっくりしてソファーの上で跳ねた。


(行方不明の女神様とおんなじ名前!!

まさか……まさか密かに戻ってきていらっしゃる!?)


心結はどう受け止めていいかわからず……


「女神様……勘弁してくださいよ」


宙を見上げて呟いた。



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