85.需要と供給
心結はオネェ神こと……海洋神“マラハン”様
いや、違うな……マーくん降臨にかなり狼狽えていた。
が、慣れとは恐ろしいものだ。
今は一周回って冷静になっていた……。
「マーくんは海を司る神様でしょうか?」
「そうよ、海の女神よ~。
水に関する事は、私の力が及ぶ範囲かな」
(あくまでも女神なのか……)
本人がそういうなら、この際もう何も言いますまい。
「だから、私の機嫌がいいと大漁のお魚が取れるのよ。
でも人々があまりにもおいたをすると……
海があれて嵐や津波が引き起こされちゃうかもね」
(ねってそんなに爽やかに言われても……
規模が軽く恐ろしいんだけど)
「でもね……最近凄く海が汚れてきているのよ。
私……それが許せなくて。
水が綺麗じゃないと、私の力も弱るのよ」
「それは人々が引き起こしているのですか?」
「そうよ……一部の人達だけどね。
根こそぎ珊瑚や海の宝石を取ってしまったり……
必要以上に大量に魚などを取っているわ。
それどころか、珍しい海の生き物を生け捕りにしたり
装飾品にして加工したりもしているわ」
(あー、どこの世界も同じような事する人がいるのだな)
心結はその言葉に表情を曇らせた。
「そうすると生態系が崩れて、海が荒れるのよ」
マーくんことピンクイルカは、怒りの為か少し色が
濃くなってまっピンクイルカになりかけていた。
海の恵みを頂くのは、生きるためには仕方がないことだけど
限度というものがあると思う。
漁師さんとかもあまりにも小さい小魚だと海へ返すって
聞いたことあるわ……。
何が正解かはわからないけど……
何事も行き過ぎは駄目ということよね。
心結はそんな所業を行っている者に対して怒りが湧いていた。
「それを阻止しようとして尽力している
子たちがいるのも知っているわ……。
だから今はなんとか保っているけれども……
これ以上こんな事が続くと私……
久しぶりに荒ぶっちゃうかも!!」
最後の方はドスのきいた声で言われ、心結は固まった。
「マーくん、それはもう少し待ってくれませんか。
真剣に考えて行動している人達もたくさんいますし
きっと何かいい方法を考えていると思いますから」
津波なんか起こされたら、目も当てられない!
心結は慌てて全力で止めにかかった。
「そうね……。
毎回、私の大好物の可愛いお菓子を備えてくれて
必死に海の為に頑張ってくれているものねぇ」
「…………!!」
シャークさん達の事か!?
もしかして、可愛いお菓子制作をするようになった
きっかけって……マーくんの為じゃないのか!?
「このみかんのお菓子、とっても美味しいわ。
不思議食感が癖になるわよね!
かわいこちゃんが、開発したんでしょ?
気に入ったわ~」
(マーくんはグミ食感がお気に入りなのか!
よかった、喜んでもらえて)
「かわいこちゃんがそう言うなら……
特別にもう少し待ってみるわん」
その発言を聞いて、心結はホッとした。
「じゃぁ、お約束のやつやるわね~」
ピンクのイルカは華麗に一回転を決めてウインクした。
【ピューイ……ギィッギイ……ンンニャァ~!!
精神力:278に上がった!
運 :282に上がった!
スキル:危険回避のレベルが25に上がった!
新しいスキル:自然回復能力 レベル10
:大漁祈願 レベル20
特殊スキル
:メロメロまっしぐら魅惑の調理 レベル25に上がった!
新しい特殊スキル
:海のお友達が召喚できる レベル15
新しい称号: 海の女神の乙女心をキュンとさせた聖女候補
を手に入れた!】
イルカって、猫みたいに鳴くんだ……。
ンンニャァって……。
ちょっとリアルで聞いてみたい!
そんな事をおもいながら、心結は丁寧に頭をさげた。
「たくさんの力を授けて頂きありがとうございました」
「それから、これを」
マーくんは綺麗な和紙で包まれた……
書状のようなものを心結に差し出してきた。
「…………これは?」
(果たし状みたいなもの出てきた!!)
「女神さまからの一言よん。
書をしたためてみました。
恥ずかしいから後で読んでね」
ピンクのイルカは恥ずかしそうに、顔をヒレで覆った。
(どういうこと!?
だんだんおかしな方向にいってないか?
女神の一言って……一体……。
何故に書にしたためる必要があるのか……。
言葉にすると憚られることがかいてあるのか!?)
心結はドキドキしながらそれを受け取った。
「それから、一つ質問をよろしいでしょうか?
海のお友達が召喚できるとは……
具体的にどのような事なのでしょうか?」
「そうね……
かわいこちゃんの運次第なんだけど……
大亀たちだったり?
もちろんイルカやサメもあるわね。
大成功すれば、私はもちろんの事……
ウンディーネやシーホースとかも来てくれちゃうかも」
「来てくれちゃうかもですか……」
ロシアンルーレットか!
毎回一か八かの大勝負じゃないですか!!
(ラインナップが尋常じゃない……。
使うのが怖い!!
どうか使う日が来ませんように)
心結は心の底から慄いた。
「それじゃぁ、またね。
今度は噂のイケメン狼くん連れてきてね。バァ~イ」
投げキッスをしながらピンクイルカは像の中に消えて行った。
(何故だろう……凄く精神力を使った気がする)
軽くスルーしちゃったけど……。
私は海の女神の乙女心をキュンとさせたのか。
海の女神の乙女心ねぇ……。
どこがキュンポイントだったのかまったくわからんが
よしとしよう!
心結は一先ず果たし状……じゃなく
マーくんからの書状をひらいてみた。
「達筆すぎて読めん!!
んー本当にあの人規格外だな……。
まぁこれでギャル文字とかだったらそれはそれで
ちょっともやるけど……」
なんとか試行錯誤して解読して出てきた答えが
また心結をうんざりさせた。
「信じるか、信じないかはあなた次第。
選んだ道によって運命は別れる。
ある道は黒き者の真実を……。
ある道は黄金の者の闇を……。
最後には一つとなって大きなうねりとなるであろう」
「…………」
いつになったら私はモフモフパラダイスの日々に戻れるのだろう。
片っ端からフラグへし折りたいわ!!
もうこれって一種のモフモフ詐欺ですよね!
モフモフの日々……何処に行った!?
アナースタシア様、クーリングオフを希望します!!
心結は祭壇に頬杖をついて盛大なため息をついた。




