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80.意外と心配性のようです

次の日の朝早く、心結が部屋の扉を開けるとそこに狼がいた。

心結が出てきた音で目が覚めたのだろうか。

伏せをした状態で顔だけ起き上がらせた。


「狼さん!! 何故ここに?」


心結は狼の元に駆け寄った。

すると狼も心結の傍に来てお座りの態勢をとった。


「おはようございます」


そういって首元にぎゅっと抱き着いた。

狼は一瞬ビクッとして固まったが、そのまま大人しくしていた。


(ふぁぁぁぁ、すごくいい感じのモフモフ!!

全く獣臭くないし、むしろお日様のいい香りがする。

あと甘い花の香?もする……。

でもかなり毛皮が冷たいのは何故だろう……)


「…………!! 狼さん……

まさか昨日の夜からここにいたの?」


心結は驚いて狼の顔をまじまじとみた。


〈案外するどいな……〉


狼は気まずそうに、視線を宙に彷徨わせて目をそらした。


心結はそんな狼の顔をガっと両手で挟んだ

それから自分の方に強引に向かせると……

顔の横の毛をわしゃわしゃと撫でながら言った。


「風邪ひいちゃうよ……駄目だからね。

そんな無理したら!」


嬉しそうだが少し怒ったような口調だった。


心結が部屋に戻ったあと、色々な意味で心配だった。

だから部屋の扉の前で勝手に見張りをしながら

一晩中休んでいたのだ。


シレーヌの部屋も近いし、馬鹿な真似をするやつはいないと

思っているが用心に越したことはないと思っていた。


案の定……用もないのに、この部屋に続く廊下の前を

通る若い魚人達がチラホラいた。

なので、思惑通り牽制になっていたらしい。


〈地獄の番犬ケルベロスみたいな狼が佇んでいた〉


〈一歩でも近づいたら食い殺されそうだった〉


〈姉御の部屋に伝言を届けにいく係、今晩誰か代わってくれ〉


などと物騒な評判が一夜にして船内に駆け巡っていた。



そんな事とは露知らず、心結は元気よく言った。


「朝ごはん食べに行こうか」


黙って頷くと、狼は心結と並んで歩き出した。


幼体モンチラちゃん達は、籠の中を覗いたら……

スヤスヤと眠っていたのでそのままにしてきました!


悶絶するくらい寝顔が可愛かったよ!!

朝からいいものみたぜ……へっへっへっ。

今日はいい日になりそうだ!



二人で大食堂に繋がる廊下を、歩いている時だった。

心結が突然とんでもないことを言い出した。


「そうだ、それならば今日からは一緒に寝よう」


「グル…………!?」


ラウルは転びそうになった。


「そうしたら、狼さんは寒くないし。

私もモフモフに包まれて最高だし!一石二鳥だよね」


心結は目をキラキラさせながら破顔した。


(馬鹿か! そんなことできるか

アウトだろ完全に……常識を考えろ……ったく)


スンと真顔になり、狼ことラウルは首を横に振った。


「駄目なの?いい考えかと思ったんだけどな。

天然のモフモフ布団の夢が潰えた……」


「…………」


(布団扱いかよ)

ラウルは遠い目になった。



大食堂に着くと、やはり昨日のように活気で溢れていた。


「おはようございます!」


心結が元気よく挨拶をすると、あらゆる方面から声が返ってきた。


「おはよう、今日も夕食楽しみにしているぜ」


「ウッス、朝から二人で登場か!

かぁぁぁ~独身の俺達には目の毒だぜ」


「オオカミの旦那、羨ましいね~」


などと一部よくわからない挨拶?ヤジ?を

乗組員の魚人たちから二人は受けていた。


〈あいつら後で全員……嚙みコロス!!〉


ラウルだけが青筋を浮かべ軽く唸っていた。


そんな挨拶を聞き流しながら、鉄板の前で何かを焼いている

シャークの前に進んでいった。


「おはようございます、シャークさん」


「よっ、ご両人おはよう!よく眠れたか?」


相変わらず迫力のサメフェイスであたたかく迎えてくれた。


「はい、おかげさまで」

心結はすっきりとした笑顔で嬉しそうに微笑んだ。


「ほぉぉぉ~」


ニヤニヤしながら、心結とラウルを交互にみるシャークだった。


「…………?」


何故か皆の視線が生暖かいんだよね。


恋愛に関しては激鈍い心結は、一人でその視線の意味が

全くわからず首をひねるばかりであった。


「グルルル……」


ラウルは不満そうに鼻に皺をよせてため息をついた。



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