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74.行きつく先は地獄か天国か!?

「海にお船を浮かばして~行ってみたいな~」


なんだ!?その歌はという視線を浴びています。


え?黄金の国ジャパンというところの代表的な童謡

海のうたですが……何か?


ただいま見知らぬ大型の狼さんと船旅の真最中です。


狼さんは、話しかけても言葉を一切発してくれません。

こちらの言葉は理解しているみたいだけどな……。

やっぱりただの純粋な獣体なのかな?


(ある程度知能が高い獣体なら……

意思疎通できるはずだけどな……)


狼はただ黙って地平線の先を見つめていた。



船は何故か勝手に進んでいってくれています。

きっと何か魔法がかかっているのかな?


行先はどこなのだろう。

まさかのセラフィン殿下の元だったらいやだな……。


身震いがして、心結は自分の身体を自分で抱きしめた。


『キュッ…キュキュッ』


幼体モンチラちゃんも二匹そろっています。

私の膝の上で寛いでいます。

またいつの間にか、ついて来ていたみたい。


「本当に君たちの力には驚かせられるよ。

今回はいっぱいいっぱい助けてくれてありがとう」


心結は二匹を抱きしめると、思いっきり頬ずりをした。


『キュゥゥゥ、キュキュ』

二匹も大好きというように、心結に頬ずりをする。


それを横目でみながらなんとなくラウルは面白くなかった。

苛立たし気に、尻尾を揺らした。


〈いちおうそいつらもオスだぞ……。全く〉


時々チラチラ、勝ち誇った顔で幼体モンチラが

わざとらしくあいつに甘えてみせるのも気に食わん!!


心結の知らないところで、密かに水面下での男の戦いがあった。



どの位の時間がたったのだろう。

心結はいつの間にか、眠っていた。


「心配をかけんな……このおてんば娘が……」


誰かが優しく頭を撫でてくれている気がする。

凄く安心……。

心結はその手を腕の中に抱き寄せて、頬ずりした。


「な…………」


まさかそんなことをされるとは思わなかったので

ラウルは赤くなり狼狽えた。


「ったく……」

溜息はつきながらも、もう一方の手で優しく撫で続けるのであった。



んん……なんか騒がしい……。

せっかくいい夢みているのに……ラウルさん……。


その時心結の頬にヒンヤリとしたものが当たった。


「ひぁやぁ!」

びっくりして飛び起きると、それは狼の鼻の先だった。


「びっくりするじゃない……もう」


と言って顔をあげたら、更にびっくりする光景が広がっていた。


小舟はすでに、浜辺に漂着していた。

さらに仮面をつけた男たちに、槍を突きつけられて囲まれていた。


(海の神様が持っているみたいな槍だな。

先が三つにわかれているやつ!

トライデントだっけ?)


『キュゥゥゥゥゥ!!』

幼体モンチラ達もびっくりして、心結に抱き着いている。


(一難去ってまた一難とはこのことか!!)


しばらく膠着状態が続いていたが……

男たちはある一点を見つめて急に騒ぎ出した。

明らかに動揺がはしった感じだった。


埒が明かないので心結は立ち上がった。

するとザっと男たちが横に飛びのいた為に

中央から海が割れるかの様にきれいに道ができた。


「えっ?」


更に船から降りて一歩踏み出そうとしたら……

もっとうしろに飛びのいた。


「あの……」


心結は、ここが何処か聞こうと口を開こうとしたが

その前にリーダーらしき仮面の男が言った。


「お前……上級テイマーか。

モンチラ使いのテイマーか!?」


「テイマー?」

聞きなれない言葉に心結は首を傾げた。


「多分違うかとおもいますけど」


それを聞くと奇異なものを見るような目で心結をみた。

周りの男たちは、もっとざわつき始めた。


「テイマーじゃないのに、モンチラを従えているのか?」


「しかも後ろの狼だって、あれは最上級クラスのものだぞ!!」


「ありえん!! 何者なんだ」


聞こえているからね!全部!!

心結が苦笑していると、後ろから声が聞こえてきた。


「何を騒いでいる、やつはきたのかい」


振り返ると一人の艶やかな女性が立っていた。

声もちょっと掠れたセクシーボイスだ。

貝殻のビキニが、これまたセクシー。


艶やかな紫色の髪を編み込んで、ポニーテイルのように

高い位置で結んであった。


その髪には、珊瑚や真珠や宝石などでできた簪が

いくつもささっており身分の高さがわかる。


驚くべきなのが、耳と言っていいのだろうか……。

髪よりも淡い紫のヒレのようなものが

ついているのが見える。


頬や首……

腕の至る所にウロコのようなものも見える。

もしかして海の国の人なのかな?

キラキラ光ってきれいだな……。


「それが、姉御……。

なぜかコウモリは乗っていません。

その代わり女と狼とモンチラが……」


リーダーらしき男が、困ったように頭をかいて言った。


「モンチラだって!!

なんだってそんなヤバイおまけがついて来ている?」


(ガレット達よ、本当に恐れられているのね)

心結はちょっぴり悲しくなった。


「あんたは一体何者だ」


訝しむ様に、上から下までみられて問われた。


「……。桐嶋心結です。こんにちは」


心結はぺこりと頭を下げた。

それを真似して、幼体モンチラもぺこりと頭を下げた。


モンチラの挨拶に仰天しつつも女はこう言った。


「あたしはこいつらの頭領で“シレーヌ”だ」


「シレーヌさんとお呼びしてもいいですか?」


「かまわない」


「その前に聞きたい、コウモリはどうした?

あんたはコウモリの商品だろ」


「色々あってあの人には、かなりムカついたので……。

振り切って逃げてきました」


心結は心底イヤだという顔をしながら答えた。


「アハハ……アハハハハハハハ。

やるね!お嬢ちゃん、ミユウだっけ?

あいつから逃げおおせたなんて、あんたが初めてじゃないか」


周りの男たちもざわつき始める。


「信じられん、さすがモンチラ使いだけあるな」


「可憐な姿からは想像できんな……」


言いたい放題……騒ぎまくっているようだ。


「まぁいいや、ついてきな」


心結は一先ずシレーヌの後に続いた。


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