63.ゲットだぜ!!
今日は再び女神さまの元へご報告に行きたいと思います。
もちろん籠いっぱいのロメンパンを持参しております。
幼体モンチラちゃんも相変わらず肩に装備されております!
最近ではカモフラージュの練習なのか……
知らないうちに、背中や頭やはたまた鎖骨辺りにへばりついて
いることもあります。
驚くからいきなりはやめて……。
今日も自由にその辺で遊ぶらしく……
何処からともなく楽しそうな『キュッキュッ』
と鳴く声が聞こえる。
今日も絶賛ピンク色の湖が眩しい!!
だんだん新緑の季節になってきました。
だからなのでしょうか……
緑の木々と妙にピンク色がマッチして
イイ感じの景色になっているところがニクイ。
ドローンがあったらさぞかしいい写真が撮れただろうな~。
浮かんでいる島もハートの形だしな~。
そんな事を思いながら橋を渡った。
心結は祭壇にロメンパンを捧げるとひざまづいて祈った。
(食の女神“キュイジーヌ”様……
いらっしゃいますでしょうか……)
「は~い、いらっしゃいます」
顔を上げると女神像の頭上に、プティブランカがとまっていた。
なにやら木の実のようなものを咥えているのが見える。
「こんにちは、キュイジーヌ様。
今日はロメンパンを持ってきました。
よかったらご賞味ください」
「ありがとう~約束を守ってくれたのですね~。
お礼にこれあげる~」
プティブランカこと女神さまは、心結の掌に何かをポトリと落とした。
「わっ……」
心結は落とさないように両手でキャッチした。
それは一粒のピンク色をした宝石だった。
「肉球の欠片ですよ~」
「おぉ!一つ目の肉球の欠片ゲットだぜ!」
心結は親指と人指しでつまみ、肉球の欠片を空にかざしてみた。
(奇麗な宝石だな……透明度が凄い!!)
そのままステータスオープンして黄金のコンパクトを
久しぶりに取り出そうとして驚いた。
なぜならば、コンパクトは魔導書の表紙に収納されていた。
もとからあった飾りのように埋め込まれていたのだ!
「えぇ!!いつのまにこんなことに!?」
思わず二度見したくらいだ。
「取り外しできますよ~」
「至れり尽くせりですね」
心結は黄金コンパクトを表紙から取り出し……
一番左側の肉球の部分に、一つ目の肉球の欠片をはめ込んだ。
(コンパクトという割には、開かないのよね……)
(きっと肉球の欠片を全部はめ込んだ時に
パカッと開くのだと推測しているけど……)
手にとり、何度か開いてみようと試みる。
(本当にただのコンパクトだったらどうしよう。
普通に最新のファンデーションとかが、入っていたら暴れるわ!)
心結は心の中で独り言ちた。
「いまやロメンパンは、シーブル王国では誰もが知る
人気パンになりつつあります。
これからもどんどん美味しいパンを作りますね」
「ありがとう~。美味しいパン楽しみにしています。
それでは恒例のやついきたいと思います」
そう言うとプティブランカは、心結の手の甲にとまった。
そのままバザッと羽を広げてポーズをとった。
いつものように、心結の頭の中に声が響いた。
【チーチーチー……チュピチュピ……ジュリリジュリリ
クラス:もはや異世界からの迷い人なのかな?馴染みすぎ!
スキル:危険回避のレベルが15に上がった!
:動物魅了のレベルが30に上がった!
特殊スキル:動物と意思疎通ができる レベル25に上がった!
新しい特殊スキル:レア食材を手に入れられる レベル20
:メロメロまっしぐら魅惑の調理 レベル15
称号:無類のモフモフスキー 変態レベル12に上がった!
新しい称号:いっけなーい!遅刻!遅刻!を極めし者
:食の女神の胃袋をギュッとつかんだ聖女候補
を手に入れた!】
心結は絶句した。
(また変なもの増えているし……)
クラス:もはや異世界からの迷い人なのかな?馴染みすぎ!
って……もはやクラスじゃないよね……。
ただのコメントとしか思えないのは気のせいでしょうか。
スキルと特殊スキルはいつも本当にありがたいのよ。
でもね、でもね!!
称号がやっぱりおかしい……物申す!!
変態レベルもグングンあがりすぎじゃなくって!?
そんなに私モフッたかな…モフ……、モフ、モフスベ!!
あっ……、うん、モンチラちゃん達に毎日のように……。
あわわわわわ……ガクガク……プルプル……。
ノーコメントでお願いいたします。
いっけなーい!遅刻!遅刻!を極めし者
あれって極めたの!
一回で極められるほどの出会いだったか?
真っ白イケメンモンチラくんと恋に落ちたわけでもなく。
甘酸っぱい青春の1ページすらもなかったけどなぁ……。
猫吸い免許皆伝者くらい……いらない称号だわ……。
「なに得なのこれ?」
心結はこめかみをおさえながらげんなりと呟いた。
そんなことはおかまいなく、女神は続けた。
「あっ!忘れるところでした。女神様からの一言いいますね!」
(また口頭ですか、持ちまわり制度も続行していると……)
「黒い者に翼をもがれ、遠い国へと流される。
金につらなるものと空飛ぶ者に守護され……
新たな道が開けるだろう」
「…………」
(何ですと!もうフラグたちまくりの一言!
流されるってなに……!?
ランベール王国に帰れるのは、まだほど遠いようだな。
ディーくんたちに会いたい!モフりたい!!)
心結はどんどん自分の目が、死んでいくのを実感していた。




