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6.なんか可愛いものいた!

「今の位置を確認してみないと」


心結は再度、魔導書を開いた。


地図のページを開くと、まだ湖と周辺の森しか

書かれていないのがわかる。


行ったところしか、表示されないらしい。


「南に行くには……」


地図の左端の上にある方位磁石のマークで

南の方向を確認して本を閉じた。


ところでこの本は、何処に収納すればいいのだろうか?

持ち歩くにはちょっと重いかも……。


心結は、脳内会議を開催した。

そして出た答えがこれだ!!


(クローズ ザ ブック!!)


心の中でひっそりと唱えてみた。


すると手の中にあった本が自然に消えた。

正解だったみたいです。


唱えると何処かに収納されるらしい。


その点については、深く突っこんではいけない!

そういう仕様なのだ!たぶん……。


そのまま南に向かって歩き出そうと意気込んでいたら

ガザガザ、バサバサ……。ガサガサガサ……。


急に後ろの森の方から、草をかき分ける大きな音が

近づいてきた。


「えっ……、うそ、どうしよう」


姿はみえないけれども……

確実に何かがこっちに向かってきている。


逃げなければと頭ではわかっているのだが

怖さと驚きで足が動かない。


(あぁ……もうだんだんと音が大きくなってくる)


危険回避スキルは、何も表示されないから大丈夫か?

と思った瞬間それは現れた。


向こうも驚いたようで、手に持っていた籠を落とし

唖然とこちらを見ている。


「二足歩行の柴犬?」


それはどこからどう見ても、茶色の柴犬であった。


思わず二度見したが、やはり柴犬だ。


犬の中で柴犬が一番大好きな心結は……

一瞬その愛らしさに狂喜乱舞した。


しかし通常の柴犬と違う部分が多々あった。


頭の上にはメイドキャップ、フリルのついた

メイドエプロン装着。


極めつけは、まるでリスのような縞模様の渦巻

モフモフ尻尾が装備されていた。


(普通の柴犬ではないな、うん……)


サイズも大きいし……。

尻尾も違うよね。


向こうは目を見開き、こちらを凝視したまま一歩も

そこを動かない。


「あの……どちらさまでしょうか?」


こちらもかなり動揺していたとはいえ

出てきた第一声がこれですか!?


我ながら可笑しな問いかけを、してしまったかと思ったが


「ディーヤと申します」


柴犬さんは可愛らしい声で答えると、

ペコリとお辞儀してくれた。


(返事返ってきたぁぁぁ!

言葉通じた!!

チート万歳!)


「お嬢様は、どうしてこちらに?」


首を傾げる姿が尊い。


ディーヤの可愛さにキュン死しそうだが

平然顔を保ちながら、なんとか答えた。


「気が付いたらここにおりまして……。

私自身も戸惑っています」


悲しそうに瞳を伏せてみた。


「…………!!」


その発言に耳をぺたんと折って、円らな黒い瞳を

ウルウルさせたディーヤが近づいてきた。


そして心結の手をそっと握った。


(肉球柔らかい~幸せすぎる。プニプニしたい!

今すぐプニらせて欲しい)


などと心の中で葛藤していることも知らずにディーヤは

目を潤ませながら、なおもぎゅっと手を握ってくれている。


「私と一緒に公爵様の元に行きましょう。

公爵様なら何かいい知恵を授けてくれるやもしれません」


「公爵様がいらっしゃるのですか?」


「はい、此処は公爵様がおさめるペタラという地域です。

しかもこの湖は聖域なのです」


「聖域とは…?」


「湖の周りに咲いている

”音階の花”の数少ない生息地なのです」


この虹色に光るスズランのような花の事かな。


「貴重で神聖な花なのです。乱獲されないように

防御壁の魔法が森全体にかかっています。

だから本当は許可された者しか入れない地域のはずなのですが」


(ヤバくないかこれ、私疑われてる!?)


もしかして……連行!?

公爵様の元に連行されるのか?


オロオロする心結の心配が伝わったのだろう。


「違います、お嬢様を疑ってはおりません。

この国で、防御壁を突破できる方は公爵様と

あと一人しかおりません。

ですからお嬢様はもしかしたら、異世界人様ではないかと」


「…………」


なんと答えるのが、正解なのだろうか。


「完全な人型というのも決め手になりました」


この世界は、人型が存在しない世界なのか……。

これって、いい事なのだろうか!?


改めて、ディーヤさんを見た。


うん、どこからどうみても二足歩行の柴犬だ。

もっふもふのうるうるの柴犬なんだよ……。


「………………」


そんな私とは裏腹に……。


大丈夫ですよ!お嬢様!

このディーヤにお任せを!


くらいの勢いで、ディーヤさんが期待に満ちた瞳で

私をみております……。


(アナースタシア様、本気で勘弁してください)


私…この世界でかなりのレアキャラだったよ!




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