56.第一回パン会議
今日からパン作りを始めたいと思います。
もはやもう人質でもなんでもないよね、これ。
シーブル王国に留学?
モンチラの隠れ里にホームスティでいいんじゃない?
くらいの気持ちで桐嶋心結がお届けします。
黒モフモンチラちゃんのお父さんがパン職人ということで
今日は第一回“モンチラ村パン会議”が行われています。
メンバーは、私、ガレット、黒モフちゃん、黒モフパパ
黒モフパパの弟子のモンチラさん二人と
何故か……長老とセクシーモンチラのノーブルさんが
いらっしゃっています。
どこから聞きつけたんだろう
朝パン屋さんに行ったら、もうスタンバっていらしたよ。
ガレットも驚いていたから、知らなかったのだと思う。
「それでは、記念すべき第一作目のパンを発表します。
誠に勝手ですが、独断と偏見で私の大好きな
“メロンパン”にしたいと思います!!
思い入れのあるパンなんだ。美味しいしね!」
『メロンパン……』
『メロン……トナ』
『……メロン……?』
そこにいたモンチラ達がざわついた。
「あれ?メロン知らない?果物なんだけど。
その形にみえるから、メロンパンっていうんだけど」
みんないっせいに知らないと首を傾げる。
「えっ?こういう果物だけど……もしかしてない?」
心結は紙にメロンの絵をかいて、みんなに説明した。
『アー、ロメンノミデスネ、オソラク』
弟子モンチラの一人が言った。
『タシカニ、ロメンヨ。コウキュウナクダモノヨ』
ノーブルも賛同するように頷いた。
(この世界でも、メロンは高級果物だったか
ロメンって言うんだ……。ロメンねぇ)
「じゃぁ……ロメンパンになるのかな」
『ソンナコウキュウナモノヲ、ツカッテツクルノカ?』
ガレットは呆れたように呟いた。
「あー、果汁を入れて作るレシピもあるけれど。
基本は入ってないよ。
あくまでも見た目がロメンに似ているってことなの」
なるほど、というようにモンチラ達は頷いた。
が、想像の域を出ないようだ。
『トリアエズ……
イッカイタメシニ、ツクッテミタラドウジャ』
長老は大きなお腹を揺らしながら言った。
「そうですね!一回作ってみます。
現物を見た方が、話が早いよね。
それで皆さんに食べて頂いて、また議論しましょう」
『ダナ』
そこにいた皆も納得というように頷いた。
「出来上がったら、またお呼びしますね」
『ウム、タノシミニシテイルゾ』
長老はノーブルにエスコートされながら帰っていった。
「それでは、作ってみますか。
黒モフパパ、職人の皆様よろしくお願いいたします」
『ハイ』
ビシッとモンチラ達は敬礼した。
ガレットと幼体モンチラちゃん達は、作業場のガラス越しの
向こう側で責任もって見守ることになった。
モンチラパン職人たちは、てきぱきと動き出すと
割烹着のような服を着だした。
しかも頭には三角頭巾を巻いているではないか。
(か……かわぇぇぇぇ。なにこの装備!!
毛が入らないための工夫なのか
給食当番モンチラの出来上がりか!?)
両手を口に持っていき、真っ赤になりながら震えた。
心結はその姿が可愛すぎて悶絶しそうになったのだ。
勿論その本人も全く同じ格好なのだが……。
〈あー、またこいつの悪い癖が出ているわ〉
ガレットと幼体モンチラは……
生暖かい目でその様子を見つめていた。
ディーヤがいなくても、しっかりと残念な様子を
突っ込まれている心結であった。
「材料は……強力粉と、薄力粉、塩、牛乳、卵と……」
卵をみると、案の定……蛍光ピンクや青や緑の卵が
籠いっぱいに積まれている。
鶏冠がやばい色をしていた鶏さんたちが産んだ卵は
やっぱり危険な色だったか……。
ちょっと使用するのが怖い……。
「この卵の中身なんだけど、蛍光色だったりしないよね」
『フツウノタマゴデスヨ』
黒モフパパが一個割って見せてくれたのだけど
黄身が三つある……。
「当たりかな?」
『……?ツウジョウノカズデスガ』
(さようですか……、やっぱり普通じゃなかったか)
気を取り直していってみよう!!
「砂糖にバター……、砂糖……
もしかしてこの砂金みたいにキラキラしているのが砂糖かな?」
『ハイ、オウゴンシュガーデス』
派手か!砂金かと思ったよ。使いづらいわ!!
もう何が来ても驚かない。
その隣をみると、ロメンも3~5個置いてあった。
どうしよう……ロメンの皮の色が“緑”と“赤”なのですが。
赤いほうなんて、爆弾か!?
もう危険物にしかみえないのですが。
「この皮の色違いって、どういう事なのかな?
味が違っていたりする?」
『カンジュクドアイノチガイデス。
アカクナレバナルホド、アマミガマシテイキマス』
「なるほど……。後で味見させて!
ロメンパンなんだけどさ……
ロメン果汁を入れたものと、入れないものと二種類作ろうか」
『イイデスネ、ソウシマショウ』
早速心結たちはパン生地とクッキー生地を作り始めた。




