55.許可をくださいプリーズ!!
モンチラ達は終始黙っていた……。
一通り説明は終わった。
後はそれをどれだけ納得してくれるかどうかだな。
心結は、モンチラ達をぐるっと見回した。
「……………」
それぞれ、思案しているようだった。
心結は固唾をのんでモンチラ達を黙ってみていた。
その時、比較的若いモンチラだろうか。
一匹のイカツイ真っ黒なモンチラが凄みつつ
鼻で笑いながらで言った。
『ソンナハナシヲ、オレタチガシンジルトデモ
ホンキデオモッテイルノカ、ヒトガタノセイジョヨ』
(う……、正論がきた、そうですよねぇ……
普通の人には女神様見えないもんね。
ちょっとイッチャっている人の作り話レベルよね……)
「ですよね……」
心結は愛想笑いを浮かべるしかなかった。
『タトエソノハナシガホントウダッタトシテモ
セイジョチャンハ、ドウヤッテメガミサマヲ
ヤルキニサセルノカナ?』
イケメンモンチラが、少し意地悪そうに楽し気に
微笑みながら言った。
「美味しいパンを作ります!
ここには、小麦粉じゃなかった、ブレも豊富にあるし
見たところ、牛も鶏もいますよね。
果物もたくさん栽培しているようだし!
材料には事欠かないじゃないですか
まずは、美味しいパンを作って国の食文化を豊かにしたい」
胸を張って、拳を握りながら力説をかましてみる。
「この村には人気のパン屋さんもあるでしょう!
パンを作る環境も技術もある!
美味しいパン屋さんとして国内外に知名度も抜群だし。
何よりも看板娘の黒モフモンチラちゃんが可愛い!!
モフスベで可愛い!!モフりたい!!」
何を言ってるんだコイツ!
というガレットの視線を感じたが、敢えてスルーした。
若干他のおじさまモンチラ達が引き気味だけど、かまわん!
『キュゥ…!!』
『キュッ!キュ!!』
そうだそうだと肩の上で幼体モンチラも応援してくれている。
『フム……コノタンキカンデ
ヨクムラヲ、ミテイルヨウダナ』
ホッホッホッ、感心感心というかのように
グレー毛色で、ちょっとヨボヨボで髭をたっぷりと蓄えた
長老風なイカツイモンチラが、体を揺らしながら目を細めた。
『ハナシノシンギハトモカク……
ヤッテミテモイイト、ワシハオモウガノォ』
『チョウロウ!!』
何匹かのイカツイモンチラが立ち上がった。
(本当に長老だった!! 見た目を裏切らない長老感!!
ちょっとプルプル震えているけど大丈夫かな?)
『ヨロシイノデスカ?』
ガレットも驚いたように、再度確認をする。
『ワタシモ、メガミサマノケンハトモカク
オイシイパンガタベタイワ……フフ』
セクシーモンチラさんも援護射撃してくれている。
『ソコマデイウノナラ、イツモノゴトク
タスウケツデキメヨウカノゥ』
長老がモンチラ達を見渡して言った。
多数決をとった結果。
賛成が5 反対が3
でパン作りの許可が可決されました!
(やったぁぁぁ!チャンス頂いた)
心結は密かにガッツポーズをきめた。
『マッテクダサイ!
イキナリヤッテキタ、ヨソモノノイケンヲ
ウノミニスルノデスカ!!』
なおも反対派モンチラは食い下がる。
『モンチラカイギデキマッタコトニ
イギヲトナエルノカ!!
ソレナリノナットクサセル、リユウガアルンダロウナ』
ガレットに牙を剝かれ、本気で睨まれたモンチラは
ヒッと顔を強ばらせて黙り込む。
『アリマセン……』
悔しそうに、モンチラはすごすごと引き下がった。
『ソレデハ、カイサンシヨウカノォ。
ヒトガタノセイジョヨ。ジユウニヤルガヨイ』
長老モンチラは、心結の肩……は届かないので、
手の甲に優しく励ますように肉球でポフポフと
2回触れると部屋を出て行った。
「ありがとうございます」
心結はそのうしろ姿を見送るように見つめていた。
すると帰りぎわ……通りすがりに舌打ちが聞こえてきた。
『チッ……チョウシニノルナヨ』
『ヒトガタノセイジョカナニカシラナイガ
オレタチハミトメン』
(この感じ、久しぶりだな……)
出会った頃の冷徹執事を彷彿させるこの感じ……。
免疫がついたのかな、こんな嫌味へでもないわ。
心結はそれが何か?くらいの勢いで平然としていた。
更に聞こえるように嫌味を言いながら、反対派モンチラ達は
部屋を次々に出て言った。
『キニシナクテモイイヨ。
ナニカアッタラ、ボクニイッテネ』
そう言うと、イケメンモンチラは
ちゃっかり心結の手をとりぎゅっと握った。
(うー、なんか背中がむず痒くなるが、肉球ホワホワ!)
心結は嫌悪とモフモフ大好き本能の間で戦っていた。
その隙に手の甲にチュとキスをしようとしたので
幼体モンチラ達が怒ってイケメンモンチラに
飛び掛かかるという騒ぎになった。
『オット、コレハタノモシイナイトタチガイルヨウダネ。
ザンネン、ジャ、マタネ~』
ちっとも懲りてないのか、さわやか笑顔で去っていった。
(またはありませんよ。イケメンモンチラよ)
グッと眉間にしわをよせる心結であった。
『ギュゥゥゥゥルルル』
『フゥゥゥゥギュウゥゥ』
部屋を出るまで全身を使って、威嚇する幼体モンチラであった。
セラフィン殿下に通じるものがあるな、このチャラモンチラ!!
略して“チャラえモン”と呼んでやる。
『ワルイヤツデハナインダ』
頭をかきながら、苦笑するガレットであった。
「うん、わかっている」
(ああいうのって……一種の病気だよね、うん)
心結とガレットは会議場を後にした。




