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53.女神の嘆き……

見た目はすこぶる可愛い小鳥姿の女神様。

愛らしくてモフモフで、つぶらな瞳がたまらない女神様!


この国……つまらないから、やる気が出ないだと!!

さらりと無慈悲なことを言われてしまった……。

どうするのよ、これ。


モンチラをはじめたくさんの者が、頑張っているのに。

ヒグマか!この国の頂点のヒグマがやらかしたのか!ああん?


心結は苛立ちを隠しながら、つとめて冷静に言った。


「つまらないとは……具体的にいうと?」


プティブランカの女神様は、ひょいっと花の中から

飛び出すと、心結の手の甲に飛び移った。


(本当に小さい!ホワホワだ。白い綿毛のようだ)


そしてバサッと翼を広げると、声高々に語りだした。


「…………。

昔はね、活気があったのよ。

私を祀るお祭りもたくさんしてくれたし……。

美味しいお供え物も滞ることがなかった!

それなのに、今では国内で生産された作物は

ほとんど他国に輸出されるようになってしまった。

その為に、庶民が余裕をもって食べ物を楽しむ文化が

失われつつあるの」


(急に機関銃のように喋りだした……!!)


「皆……生活することで精一杯なんですね」


「そう!だからつまらない……」

ふてくされるように、頬を膨らませる。


(やっぱりヒグマのせいじゃない!!

女神様めちゃくちゃご不満だよ、おい!)


「もっとみんなが楽しく、おいしいご飯が食べられて

活気ある国になればいいのですね!」


「そう!美味しいお供え物欲しい。

女神の力の源は、みんなの幸せな気持ち……

この国はそれが枯れかけている」


確かにランベール王国の花の祭典の規模は凄かった。

それ以上に皆がとても幸せそうで、活気に溢れていたな。


女神様の力の源か……。

だからソルテール様は、あんなにも元気いっぱいだったのか?

いや……あれは元々の性格だな……。



よし!モンチラの村から美味しいものを作って

国内に発信してみよう!!


「女神様、美味しいものを作って流行らせたら

少しは考え直して頂けますか?」


「ん……」


心結の手の甲を行ったり来たりして思案しているようだ。


「甘いパンはお好きですか?」


「大好物!!」

飛び上がって、心結の周りを一周して肩にとまった。


「ならきっとお気に召すと思いますよ」


「わかった!楽しみにしています。人差し指だして」

「えっ?はい」


心結が人差し指を出すと、約束というかのように……

プティブランカは足で人差し指をギュッとつかんだ。

そしてそのまま女神像の中に飛んで消えていった。


(なんか約束が、かわされたっぽいな……)


「よし!早速帰ってから、ガレットに相談だ」




一方その頃……


「遅くなりました」

大きな狼が執務室の窓に飛び込んできた。


「おぉ……待ってたぜ。どうだった?」


執務室で報告書を読んでいたジェラールは

顔を上げると、狼に向き合った。


「無事は確認いたしました」

奇麗なお座りをした困惑顔の狼がいた。


「なんだ、その複雑そうな顔は」


「……。予想外というか、いや……案の定というか

随分とモンチラ達に溶け込んでいるようでした」


「ブハッ……やっぱり心結ちゃんだね。

あの子のモフモフに対して発揮される

社交能力の高さは異常だからな」


「特殊スキル能力のせいではないのですか?」


「違うな、あれは天性だ。

無類のモフモフスキーは後付けのようなもんだ

まぁ何であれ、大事にされてんならかえって好都合だ」


「やはり繋がっているようですね」


「だろうな、そうでなければ心結ちゃんの存在を

知ることはできないからな」


「厄介ですね」


と、ジェラールはラウルの足に不器用に巻かれた包帯を

目ざとく見つけて、不思議そうに聞いた。


「ところでその怪我はどうした。大丈夫か?

自分で巻いたのか?

かなり下手くそな巻き方だな、お前らしくもない」


なんでも器用にこなす、敏腕執事が処置したとは

思えない巻き方だった為、気になったのだ。


「フ……かすり傷です。

これはこのままでいいのです」


そう言ったラウルの顔は、何故か嬉しそうだった。



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