52.やる気が起きないって……
相変わらずピンクの湖にはなれないな。
絵具かなんか流しました?感がどうしてもぬぐえない!!
心結と幼体モンチラ達は、祠がある湖の前に来ていた。
そういえば、初めてこの地に降り立った時も湖だった。
信じられないほどのエメラルドグリーンに引いたわ。
思い出し笑いをして、苦笑してしまう心結だった。
橋を渡ろうとすると……
幼体モンチラ達が、心結の肩からおりて一声鳴いた。
『キュッ……』
近くで遊んでいるから、終わったら声をかけて
と言われた気がした。
優しく二匹の頭を撫でてから言った。
「わかった。あまり遠くに行かないでね」
二匹は頷くとじゃれながら、大きな木の洞を目指してとんだ。
どうやらそこでお昼寝をするらしい。
「小さくても、しっかり飛べるんだな」
変なところで感心してしまう心結であった。
橋を渡り、さっき買ってきたパンを祭壇にお供えし
いつものように、膝まづいて祈りを捧げた。
(食の女神“キュイジーヌ”様……
いらっしゃいますでしょうか……)
「……………」
特に何も起こらないようだ。
(またこのパターンですか!?)
心結は盛大なため息をついた。
(キュイジーヌ様~いませんか~)
少し投げやりに問いかけてみた。
「…………。そう何度も呼ばなくても聞こえていますが」
「えっ?」
心結は驚いて、顔を上げた。
「ちなみにさっきからずっと目の前にいますけど」
「えっ?どこ……ですか?」
心結は目を凝らして祭壇や女神像を見つめる。
しかし声はすれどもみつからない。
(おかしいな。見えない……。
なにこの状況!探し物ゲームみたいなんだけど)
心結は何度も目を瞬かせて辺りを見まわしてみる。
「ここ、ここです!」
声を頼りに見てみると、祭壇の上にある白い花に埋もれて
小さなフワフワッの真っ白い小さな鳥が
ちょこんと座っているのがみえた。
「鳥……ちっさ……シマエナガですか?」
(ほとんど白い花と同化しています、女神様……。
10㎝あるかな?小さいよ。
罠なの!! 発見する難しさMAXレベルですよ!これ!)
「こちらの世界ではプティブランカと呼ばれています」
(どこからどうみてもあのシマエナガさんだよね!!
北海道に生息している“雪の妖精”さんですよね。
この世界にもいるんだ……
可愛い~モフモフ?モッチモッチ)
って、またモフモフ仕様で女神様現れたよ……。
そういう申し送りいらないって言っているでしょうが。
心結はちょっぴりげんなりした。
「何か御用ですか~」
花の中から微動だにしない女神様……
もといプティブランカがゆるい感じで聞いてきた。
(今回の女神様やる気ないな。
ソルテール様と足して二で割ったらちょうどいいんじゃないか
くらいやる気ないな)
「あの、差し出がましいのですが
この国の食文化事情がちょっと質素すぎませんか?」
「………………」
「ここ最近作物の実りも悪いともききました」
「………………」
「キュイジーヌ様!? 寝ちゃってます?」
あまりにも反応がないので、そっと小さな体を
人差し指で軽く突いてみる。
(思いのほかモフモフ……)
「起きていますし、聞いてますよぉ」
「どうか女神様の恩恵を授けてはくれませんか」
「ん……やる気が起きない」
可愛い見た目に反して、気だるそうに答えた。
「…………、は?」
心結は目を剝いた。
唖然として、なんとか動揺を抑えようとしていたが
更に女神の言葉に再度驚くことになった。
「この国……つまらない……」
(つまらないって……なに?)
顔を引きつらせながらも、女神の言葉を理解しようと考える。
どうしよう、この感じ。
初めての女神様拒否に、途方にくれる心結であった。




