51.パン事情
おはようございます。
人質生活にも少し慣れてきた今日この頃です。
ガレットは、モンチラ会議があるという事なので
幼体モンチラちゃん達と一緒に、村の中の散策をしています。
『コンドムラノソトニデタラ……
ワカッテイルナ……』
とガレットに鋭い牙と爪をチラつかせられながら叱られた!
(奴は本気だ……目が本気だったもん……)
大人しく村のお店めぐりしようかな~
農作物の収穫のお手伝いなんかに精をだしてもいいな。
『キュ…キュ…!!』
今日もモンチラちゃん達はモフスベで可愛い!!
残念な顔で心結はデレまくっていた。
そのモンチラちゃん達は、14㎝ちょっとの大きさだ。
心結の肩の上がお気に入りなのか……
ちょこんとそれぞれ左右の肩に、バランスよく
可愛く収まっている。
相変わらず装備感が半端ない……のは気のせいだろうか。
お……パン屋さんから焼き立てのいい香りがする。
入ってみようかな。
獣人さん達にも好評らしく、お土産として買われる
事が多いために、店も普通に人が入れる大きさで作られて
いるんだって!! モンチラの技術凄いな~!
というかここ隠れ里だよね!?
暗殺依頼……あ!言ってしまった、うん、その……。
お仕事依頼のついでに買ってかえるのか!?
美味しいパンを土産として!?
緩いな……いいのかそんな感じで。
『イラッシャイマセ~』
「こんにちは」
話せるモンチラさんが!店番だ!!
真っ黒な毛色の美人さんモンチラちゃんだった。
(おそらく看板娘に違いない。
若いオスモンチラの憧れのモンチラちゃんかな……)
三角関係とか発生するのかしら……
アオハルかっ!くぅぅぅぅ~
勝手な妄想をしてニヤついてしまう心結であった。
(どんなパンが売っているかな~楽しみ)
パンの棚を順番に端から見てみた。
食パン……ロールパン、クルミパン、レーズンパンかな?
卵サンドとハムチーズサンドかな……以上!!
「ん……え?種類すくなっ!」
思わず声に出して、棚を二度見したくらいだ。
(朝早いから、まだ仕込み途中かな……?)
「あの、これでパンの種類は出揃っている感じかな?」
心結はおそるおそる、黒モフモンチラちゃんに聞いてみた。
『ハイ、ゼンシュルイソロッテイマス』
可愛らしい笑顔で答えてくれた。
心結は心の中で盛大に吠えた!
あんパンとかクリームパンとかメロンパンとかどこにいった!!
チョココロネとかカレーパンとかデニッシュとか
他にもパンの種類は無限にあるだろうが。
食の女神様に愛された国じゃないのかい?
定番商品の半分の種類もないなんて……。
これは女神様に一言申さなければならないだろう!!
謎の使命感に駆られ、心結は再び祠に行くことを決意した。
交渉にはお供え物だ!うん。
「よし、クルミパンとレーズンパン二つください。
って、あっ!お金……」
(確か、50,000モルス持っていたけど
シーブル王国で使えるお金なのかな……)
「モルスって使えます?」
「ランベールオウコクノ、ツウカデスネ。
オオキイシヘイデナケレバ、カノウデスガ」
申し訳なさそうに、こちらの顔色を伺いながら
黒モフモンチラちゃんは震えながら答えた。
心結は1モルスと書かれた紙幣を差し出してみた。
「アッ……コレダトタイリョウノオツリガ
デマスケドカマイマセンカ?」
黒モフモンチラちゃんの顔にどうしようと
書いてあるのが見て取れた。
(こんなことなら、ディーヤにちゃんとお金の
使い方習っておけばよかった……
まったく単位や価値がわからない)
それよりも異常にこちらの顔色を伺う
黒モフモンチラちゃんの態度の方が気になる。
これはあれかな……。
心結は悲しくなった。
ジェラール様やその周りの人々の顔が浮かんだ。
優しくて素敵な獣人さんもたくさんいるんだよって
声を大にして言いたかった。
「かまわないよ。こちらこそなんかごめんね
お店に迷惑かからない?
これからくるお客さんの為のおつり確保できる?
厳しそうなら取っておいてくれる?また後でくるよ」
心結は黒モフモンチラちゃんを気遣うように優しく微笑んだ。
『…………。ダイジョウブデス』
目を見開いて一瞬固まった。
思ってもみない対応が返ってきたので、黒モフモンチラは
戸惑いを隠せなかった。
〈聖女様は優しい人型なんだな……
こんなに気遣ってもらったのはじめてだ〉
獣人はいつも態度が大柄だった。
無理難題を平気で言ってくることは当たり前だったので
今回も怒られて怒鳴られるかと思ったのだ。
心結は布の革袋にぎっしりの硬貨とパンを手に入れた!!
なんだかな……。
一万円で300円くらいの買い物しちゃった感じかな。
ひとまず祠に向かいますか!!
心結の散歩は続く。




