50.少女漫画の定番なんです!
かなり長い時間外にいたからだろうか、急に寒気がしてきた。
そんな心結の様子に気がつき、ガレットが言った。
『ソロソロカエルカ。
ディナーハ、アタタカイ“キノコノシチュー”二シテヤル』
照れ隠しなのか、ぶっきらぼうに言った。
(ガレット……耳の後ろまで赤くなってる)
「フフ……ありがとう」
心結まで妙に照れくさい気持ちになり、行きとは違う意味で
何とも言えない空気が漂った。
だからだろうか、油断していたわけではないが
心結が森を抜けて村へ入ろうとした時にそれは起こった。
ドン…………ッ!!
何かが腰のあたりにぶつかってきた衝撃を感じた。
「あっ……!」
『キュッ……!』
気がついた時には、頭からたくさんのパンをあびていた。
一瞬何が起こったかわからなかった。
が、我に返り辺りを見てみると……
目の前には若いモンチラが倒れていた。
どうやらお互いに死角だった為、派手にぶつかったらしい。
その後には、更に果物や花を持ったモンチラ達がいて
驚いて固まっているのが見える。
「大丈夫!? ごめんね」
急いでモンチラを抱きおこし、砂を払ってやり
落ちているパンを拾い集め籠に戻した。
「キュッ~キュッ……」
モンチラは“大丈夫です!ありがとう”
と言っているかのようにペコッとお辞儀をした。
(かわいい~!! 美形モンチラ降臨したぁぁぁ)
全身真っ白な若いオスモンチラだった。
もちろん……モフモフのスベスベ装備は完璧!!
対照的に大きい目が黒目がちなのが、またいい!!
耳まで真っ白なイケメンモンチラであった。
余りも蕩けたウットリとしたキラキラ目で心結が
イケメンモンチラを見つめているので……
ガレットが咳払いをして、目の前で手をひらひらさせた。
『コ……コホン。オマエダイジョウブカ!?』
「ちょっとガレット今、大事な場面なんだから
浸らせてよ……もう」
心結はズイッとガレットにつめよった。
「このシチュエーションはね!
日ノ本ジャパンという国の少女漫画におけるてっぱん!!
“いっけなーい!遅刻!遅刻!”という技なの!
運命的な出会いのシーンなんだからね!!
めったに発動しない、憧れの技なんだからぁ」
『ハ……?』
『キュッ……?』
『…………』
ガレットをはじめ、そこにいたモンチラ達は一斉に首を傾げた。
構わずプリプリ怒りながら心結は、力説を始める。
「主人公のパンを咥えた女子とイケメン転校生が
出会い頭にぶつかり、恋に落ちるという伝統技なんだよ
今まさにそれ!!」
『ハァ……』
『キュウッッ……!?』
(そもそも、お前パンなんて咥えてないだろうが!
転校生ってなんだよ!!)
ガレットは激しく突っ込みたい気持ちを抑えた。
よくわからんが、とりあえず心結の気のすむままにしようと
意見がまとまったモンチラ達だった。
後でまた女神様に怒られても知りませんよ!!
そんな伝統芸および技なんてないからね!!
「はぁ……まさか異世界で体験できるなんて思わなかったな」
心結はご満悦であった。
いいのかそれでお前!!
いくら無類のモフモフスキーでも、どうなのそれ?
せめてイケメン獣人か現実世界の男子高生相手で
やって欲しかったです!!
と、アナースタシア様からのお言葉を頂きました。
だからでしょうか……
心結の知らないところで、密かに変態レベルがあがり
新たな称号が付与されていたのだが、それは次回また!!




