49.国の現状を知ることも大事!
「ぐす………。ごめんね、ガレット……。
信用してくれて、村の散歩を許してくれたのに
こんなことになっちゃって……」
心結は泣きはらした目で、しゅんとしながら森の小道を
ガレットと共に並んで歩いていた。
『オ……オウ……』
心なしガレットの耳も髭も悲し気に下がっている。
気まずい何とも言えない空気が二人の間を流れているようだった。
あの後、部下モンチラ達に促され、二人は村の祠に向かっていた。
〈ボス、祠に案内したらどうですか?
あそこは何より景色が素晴らしい〉
〈俺たちも落としたい女がいる時は、必ず誘う
デートスポットですから。聖女様もきっと喜ぶはず〉
何故かみんな自信満々に行けとおしてくる。
何か違うのではないかと?とガレットは思ったが……
心結の気持ちを落ち着かせるために祠へと誘った。
森の暗い細い道を抜けると、目の前が急に開けて
眩しい光が見えた。
「ふゎ……ピンクの湖だ」
面積は小さいがピンクの湖が見えてきた。
湖の中にハート型の小島のようなものが浮かんでいる。
渡るためだろうか、石でできた橋がかかっている。
「フフ……ハート型なんだね。かわいい」
『シゼン二デキタ、カタチダ』
心結の笑顔を見たお陰か、ガレットの表情も少し和らいだ。
その小島の中央には、祠が建てられていた。
クリスタルのような煉瓦が幾重にも積まれて作られており
屋根の部分は、緻密な文様が彫られている。
祠の中には、乳白色の石でできた女神像が飾られていた。
「小さな神殿みたいだね。
太陽の光と湖に反射した光とでキラキラ光って奇麗」
『センゾダイダイ、セイイキトシテマツッテイルトコロダ』
祠の周りには沢山の花が植えられていた。
祭壇にはパンや果物など、お供え物も供えられている。
「素敵なところだね」
『アア……』
二人は暫く女神像の前で、静かな時間を過ごしていた。
心結はそこではたと気が付いた!
女神様チャンスではないか!
このままお会いできれば、また一歩前進するのではないか!
早速ガレットに詳しいことを聞かないと。
「ところでこの女神様は、何の神様なの?」
『ショクノメガミ“キュイジーヌ”サマダ』
「食の女神……」
(料理とか食べ物とかそういう恩恵に与れるのかな?
確かに生きていくうえで、食べる事って大事だもんな……)
「この国……そういえば国の名前も知らなかった。
ガレットこの国の事教えて」
『………………』
えっ?そこからみたいな顔されたけど
私……異世界人だからね!!
ランベール王国に落っこちてきて、ほやほやの時に
あなたに攫われて今、ここだからね!!
目に込めて、ガレットに今の心情を伝えてやったわ。
伝わったかは不明だけど。
『コノクニハ、“シーブルオウコク”ダ。
コクオウハ、ヒグマノジュウジン。
カナリゴウマンデ、コウカツナオトコダ」
「シーブル王国ね。
ランベール王国との関係性はどうなの?」
『オモテムキハ、モンダイナイナ。
タダウラデハ……
キナクサイウワサモ、チラホラアルッチャアル』
「力関係は互角?」
『ランベールオウコクノホウガ、ジャッカンウエダナ。
オマエノクニニハ……コウエンノヤジュウコト
“ジェラール=レオポルド”ガイルダロウ』
「紅炎の野獣!?ジェラール様が!?」
奥さんにデレデレで、ちょっぴり残念なイケオジ獣人の姿
しか知らない心結は目をぱちくりさせた。
『ソノミギウデノ“ギンヒョウノアクマ”モヤバイ』
「銀氷の悪魔……」
なんでだろ、ストンと素直におちてくるこの感じ。
確かにラウルさんは悪魔だよ!! 冷徹な氷の悪魔感満載だよ!
うんうんと頷いてしまう心結であった。
『ホカニモセイエイブタイガ、タクサンイルダロ。
ナニヨリモコクオウガ、オダヤカデヘイワナクニダ』
そうなんだ……。
知らなかった、比較的のんびりした雰囲気だったから
あまり感じなかったわ。強い国なんだね……。
「シーブル王国は違うの?」
『イマノコクオウハ、シタノモノノコトハ
カンガエテイナイ。
ネンネンゼイリツガ、アガッテキテイル。
シュトデサエ、ヒンコンニアエグモノモオオイトキク』
(税を納める制度があるのか!聞けば聞くほど
びっくり情報がでてくるな、この国)
「よろしくないね。
でも何故なの?
この国は食の女神様の恩恵を受けているのではないの?
食べる事には困らない気がするのだけど」
『ソレガナゼカ……ココスウネンフサクツヅキダ』
「…………。女神様を怒らせるようなことした!?」
『サアナ……。アノコクオウナラ、ヤリカネナイガ』
複雑な思いで女神像をみつめた。
(女神様!! 何か……怒っていらっしゃいますか……)




