5.ステータスに異常あり!?
「それでは頑張ってくださいね。
あなたの旅に幸多からんことを」
黄金の梟はそう一声鳴くと、天高く飛んで消えていった。
急に現れて、またもや急にいなくなるのね……。
それにしても、賑やかな女神様だったな。
その姿を見送りながら、思わずクスっと忍び笑いが出た。
「ええっと……
一先ず自分のステータスを見てみようかな」
アナースタシア様から必ず確認してね!
って言われたしなぁ。
神様はそれぞれ自分の司る分野の力を
多く授けることができるらしい。
アナースタシア様は、知識・知恵の女神様だと
先ほど知った。
だから黄金の梟の姿だったのか。
昔から梟は、知識や学問の象徴だと聞いたことがあるし
勉学の場で、梟の銅像とかが立っているのを見た事あるわ。
すっかり腹をくくった心結は、現状を受け入れ始めていた。
周りを一応確認して……。
よしっ、誰もいない。
「ステータスオープン?」
恥ずかしさからか、そっと呟くような声になってしまった。
と、同時に心結の手元に、一冊の立派な皮張りの本が現れた。
「えっ?本!?
魔導書的なアイテムかな?」
驚く間もなく本が勝手に開き……
最初のページにRPGでみかけるお馴染みの項目が
綺麗に浮かびあがった。
(うわぁぁぁぁぁ!本当に出た。
ステータスきたぁあぁ)
名前:桐嶋心結
年齢:18歳
クラス:異世界からの迷い人かな?
HP:328
MP:155
知識:650
精神力:172
運:220
所持金:50,000 モルス
スキル:動物探知 Lv.3
:危険回避 Lv.7
特殊スキル:動物と意思疎通ができる Lv.15
:レア動物や植物を引き寄せる Lv.10
称号:無類のモフモフスキー 変態Lv.5
:知識の女神にひっそり見守られし聖女候補
アナースタシアからの一言:モフモフ愛が強すぎます。
少し自重しましょう。
南に行くと素敵な出会いが
あるかもしれません。
「ツッコミどころ満載のステータスを
ありがとうございます」
今ここにいないアナースタシア様に……
問い詰めたい気持ちを抑えながら、更に読み進めてみた。
このステータスが、チートなのかよくわからない。
”異世界の迷い人かな?”
ってなに、そのフワっとしたクラス。
迷いたくて迷った訳ではないのに、この仕打ち。
「……。っ……」
(危ない、舌打ちしそうになったわ)
先に進めよう。
知識が高いのは嬉しい。
そこはやはり知識の女神様の力かな。
危険回避もありがたい。
マストでいるスキルよね。
私……丸腰だからね。
問題なのは、称号なんですよ!!
”無類のモフモフスキー”は、いいとする。
でもその後の”変態Lv.5”ってなに!?
今後何かしたらレベルが、あがっちゃうよね、これ。
凄く気になる項目。
心結は、その項目を改めて見た。
二度見したと言ってもいい……。
(変態って……。レベルがあるんだ)
自分の事ながら、しみじみとそう思ってしまった。
モフモフに関しては、うっすらそうじゃないかとは
自覚していたけれども……。
文章にしてはっきりと突きつけられちゃうとね……。
心結は苦笑しながら、その文字をつついた。
「変態のレベルがあがる未来しか見えてこない」
心の声が思いっきりでちゃうのもしょうがないと思う。
今更だけど……
自分のことながら悲しくなってしまうわ。
しかもですよ!
”聖女候補”ってなによ。
いりません。
本当にいらないから。
緩くひっそりとモフモフ達と戯れて、
過ごしたいのですが……。
平穏で普通の生活が一番。
(もう確実に何か大きな意思がはたらいているよね、これ)
アナースタシア様からの一言もわからん。
お告げなのか、お小言なのか。
はたまた神様の戯れの一環なのか。
こまめにステータス確認してねって言っていたから
更新はされていくのであろう。
他にもパラパラと本を捲ってみる。
「あっ、神様の欄にアナースタシア様載っている!
詳細情報はほとんど空欄だけど」
他にも、地形、動物、虫、植物、鉱物など
多岐にわたる項目がたくさんある。
図鑑を製作していく感じかな。
(もしかしたら……
埋まれば埋まるほどスキルがあがるのかな?)
心結は、パタンと本を閉じて、思いっきり伸びをした。
「とりあえずお告げ通り、南をめざしますか」
進まないと、状況は変わらないしね!
いざ南に行かん!
モフモフ目指して、出発だ。




