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48.銀色の狼

お散歩~お散歩~楽しいな。

何よりもモフモフ達がそこかしこにいるんだよ。

何処をみてもモンチラ天国!!

軽くスキップとかしちゃおうかな。


そんな人型を生暖かい目でモンチラ達が見ていたことを

浮かれている心結は、知る由もなかった。


しばらく歩き続け、気づけば村はずれの果樹園にきていた。


おぉ……巨大な桃みたいなものが生っている。

甘い香りがたまらん!食べ応えもありそうだ!


あっちには葡萄かな?

これもまた大きい!顔ぐらいあるよ!


なに、大きいのがデフォルトなの!?

モンチラ達……

この大きさを収穫するの大変そうだな。

届くのか?持てるのか?


プルプルしながらモンチラが頑張る姿を想像して

一人悶絶する変態……もといモフモフスキーがいた。


梯子を上り下りして収穫するモンチラもかわいいかも……。

果てしない妄想は止まらなかった。



と、後ろの方でガサッ!! ドサッと何か倒れる音がした。


やだ!本当にモフプル事件が起きたんじゃないよね!

音のする方へとつい進んでしまい……

心結は知らずに村を越えて森に入ってしまっていた。


運がいいのか悪いのか、たまたま誰にも見つからず

仕掛けにも引っかからず、するりと入ってしまったようだ。


森の奥は薄暗いので、最初は何かわからなかったが

そこで見つけたものは、大型の狼だった……。


(血の匂いがする、どこか怪我をしているのかも)


心結の視線の先には、ギラギラした目で威嚇する獣がいた。

荒い息遣いも聞こえる……。


(狼いた……しかもかなり大きな個体!!

魔物じゃないよね?獣体だよね?)


「グルルルルル」

近づくなと言わんばかり、牙を剥き出して唸り声をあげている。


あぁ……かなり警戒されている。

でも怪我をしているみたいだしな、言葉は通じるかな。

遠目からだとよくわからないな。


「どこか痛いの?大丈夫?」

できるだけ優しく声をかけてみた。


「グルルルルル……キュ……グウ」


警戒は解いてくれそうもない。

しかも傷か痛むのか、ときより苦しそうな声をあげる。


心結は更にジリジリと近づいてみた。

そこではっきりと狼の全体像をとらえることができたのだが

思いもよらない姿に、驚きの声を上げてしまった。


「何故に独眼竜(どくがんりゅう)仕様なのさ!!」


(凄い奇麗な狼!! 

銀色と黄金が混ざったモフモフ狼!!

だけど眼帯しているってどういうこと!?)


心結の謎の雄たけびに、今度は狼の方が固まった。


〈独眼竜ってなんだ!?〉


その隙にさっと近寄り、心結は狼の傷の具合を確かめた。


「後ろ脚を怪我しているね。

折れてはいないみたいだけど、傷が深い」


〈いつの間にこんな近くにきたんだ!こいつ〉


唸って威嚇しようかと思ったが、力がでなかった。


「いい子だから、噛まないでよね」


心結はそう言うと、水筒の水を傷口に優しくかけた。


「グルキュウウウウ……」


染みるのか、痛いのか苦痛な声をあげる狼。


心結は自分のスカートを引き裂くと傷口にあてて血を拭い

さらに布を裂いて包帯のように足に巻いた。

諦めたのか狼は大人しくされるがままになっている。


取れないように仕上げとして結んだ蝶々結びが

縦になっているのは目をつぶろう。


〈下手くそな蝶々結びだな……不器用か……〉

狼はこっそりため息をついた。


「これで一先ずよし!」


狼はその姿にギョッとした。


〈乙女の恥じらいはないのか!こいつ。

太ももまでみえているではないか!〉


本人が意図せず大胆にスカートを引き裂いたために

かなり上の方まで切れ目が入ってしまったようだった。

目のやり場に困り、視線を宙にさまよわせる狼であった。


「もう大丈夫だよ、痛くないよ」

心結はそっと狼の頭を撫でた。


〈くそぉ……魔力を使いすぎた、抵抗できねぇ……〉


心結に撫でられて、そのまま促されるように引き寄せられた。

膝枕状態になり、心地よさからか大型の狼は目を閉じた。


モフモフ凄い!奇麗な毛並み……。

胸元の毛皮が特に極上のモフモフ!!

ん?あっ!ディーくんみたいにペンダントしている。


胸元のモフモフの毛に埋もれて気がつかなかったが

金色の鎖に、黄金の宝石と紫の宝石がついていた。


鎖は少し色あせており、年季が入ったものだとわかる。

紫の宝石は、何故か真ん中から折れて半分しかなかった。


(どこかのお家の獣体なのか……

もしくは獣人が変身した獣体なのかな……

眼帯しているしな……)


まさか……まさか違うよね!!

心結は狼をまじまじとみた。


「ラウルさん……」

呟いてみるが、狼からの返事はもちろんない。


しばらくすると遠くから心結を呼ぶ声が聞こえる。

その声に大型の狼がガバッと勢いよく飛び起きた。

一瞬ふらついたが、しっかりと四本足で大地を踏みしめた。


「無理しちゃだめだよ」


「グル」


大丈夫だとでも言うように、鼻先で心結の頬をつついた。


同時に心結と狼の間にガレットと数匹のモンチラが

勢いよく飛び込んできた。


『オオカミ!! ダイジョウブカ!! ミユウ!!』


ガレット達の攻撃をかわし、狼は後ろへ飛びのくと

心結の顔を一瞬みて、そのまま森の奥へ消えた。


モンチラ達の本気の攻撃だったのだろう。

地面にかなり深く抉られた爪痕のようなものが見てとれる。


『チッ、ニガシタカ』


数匹のモンチラが後を追おうとしたがガレットが止めた。


『オワナクテイイ。

アレハオレタチダケデハ、シトメラレナイ』


そのまま凶悪顔で心結に向き直った。

そして凄い剣幕でどなった。


『ムラヲデルナトイッタダロウ!!

オマエノスガタガミエナイトキイテ、カケツケレバコレダ。

シンゾウガトマルカトオモッタ!!』


「ガレット……。ごめんなさい」


人間驚きすぎると思考回路がショートするのだろうか。

それとも暗殺仕様のガレットを見てしまったからだろうか。


(なんでわたしモンチラにこんなに本気で怒られているのだろ。

しかもかなり怖かったし)


感情が追いつかなかった。

驚きと心配してくれた嬉しさの両方で心結はついに泣き出した。


「…………っ、ごめん……っ……ごめ……」


涙が止まらない心結をみて、ギョッとするガレット。

周りのモンチラ達も狼狽えて、ジト目でガレットを見る。


〈ボス……泣かしちゃだめじゃないっすか〉


〈あ~あ~、聖女様泣かしちゃった、どうするんですか〉


〈ボスの顔……通常運転でも怖いのに、あんなに凄んで……〉


なにやっているんですかボスという空気があたりに漂った。


えっ?悪いの俺?俺ぇぇぇぇ??

くらいの勢いで……萎れていくガレットであった。



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