表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/168

47.生きるための進化……

狼はひたすら草原を駈けていた。

体長2メートル以上はあるだろうか、均整が取れた体躯で

銀色と金色が交じりあう毛並みをもつ美しい狼だった。


その周りには数匹の狼が、並行して走っている。

よく見ると、先頭には道案内役だろうか更に狼がいるようだ。


〈アオオオオ~~ン!!〉


どこからともなく遠吠えが聞こえてくる。

それに答えるように、先頭の狼も遠吠えを返す。


〈オオオオオオ~~ン!ワオ~~ンンンン!!〉


そしてその狼一行は、崖の上でいったん足を止めた。

眼下には森が広がり、その間から村が僅かにみてとれる。


飛び降りるにはかなり危険な高さだった。

実際狼たちは、耳を伏せ尻尾をさげて緊張している。


その中の一匹の狼が頭を伏せて、大型の狼に言った。

『コノサキニ、モンチラノカクレザトガアリマス』


大型の狼は大きく頷いた。


「お前たちは村の近くの森で待機だ。

いいな、くれぐれもモンチラの縄張りに入るなよ。

遭遇しても手をだすな、いいな」


そう告げると一人崖から飛び降り、森の中へとダイブした。




心結はガレットとの心の交流?を終えた後

しばらくは幼体モンチラ達とログハウスでまったりしていた。


が、やはりじっとしているのが性に合わず交渉してみた。


『ムラカラケッシテデルナヨ』


念を押され、呆れながらも渋々了承してもらい……

“村を散歩してもいいよ権利”をガレットからもぎとった。



日よけの帽子よし!水筒持った!お弁当持った!

ピクニックか?

とツッコミが入りそうな装備で出かける事にした。

幼体モンチラちゃん達は、お昼寝の時間なのでお留守番だ。


改めてモンチラの村をみると地の利を生かした村作りを

しているのがすごく見て取れる。


まず幾重にも森に囲まれていること。

深い森の中は鬱蒼としげっていて、魔物とかでそうな雰囲気だ。

何処が村の出入り口かわからないこと。


村と森の境目の各要所には、仕掛けが施してあるらしい。

詳しくは教えてくれなかったが……うん、まぁ、ね。

くれぐれも引っかかるなよとガレットに言われた……。


侵入者に備えて、交代で見張りもしているらしい。

唯一侵入できる可能性があるといえば……

心結は空を仰いだ。


北側には切り立った高い崖が見える。

あそこから飛べるのは鳥族か……

もしくはかなりの身体能力の持ち主じゃないと無理。

 

(凄いな、モンチラの村は自然の要塞なんだな……)


何故ここまで慎重かつ厳重にしなければならないのかを

ガレットに聞いてみた。

そこには、悲しい歴史があった。


『オレタチノソセンハ、ツネニネラワレテイタ。

ランカクサレテイタ……』


心結は衝撃を受けた顔になり、動揺しながら言った。

「もしかして……そのモフスベの毛皮のせい?」


忌々しそうに怒りを込めた声でガレットは言った。


『ソウダ……。

コノケガワホシサニ、ヨウシャナクカラレテイタ。

ジュウジンノキゾクガ、コゾッテホシガッタカラダ!

ゼツメツノキキニヒンシタ』


「ひどい……」


『ソレニ……ミタメモアイラシイカラナ』


「フフ…………」


愛らしい……

目の前の凶悪顔モンチラと正反対のワード出た!

心結はちょっぴり笑ってしまった。


『オマエ、マタシツレイナコト、カンガエタダロウ』


「ごめんなさい。真面目な話の途中なのに」


『ダカライキノコルタメニ、シンカシタ。

ヤラレルガワカラ、ヤルガワヘトホウコウテンカンシタ』


「生きるために頑張ったんだね」


『ホンライハ、オトナシイシュゾクダ。

デキレバシズカニクラシタイ』


ガレットはしみじみ言った。

反発している若いリーダーモンチラ達の事を思って

今の現状を憂いているのかもしれないと心結は思った。


「全ての人とは仲良くできない事はわかっているけど。

平和が一番だよね……」


『ソウダナ』


本当は暗殺家業なんてしたくない……。

というガレットの心の声が聞こえてくるようなきがした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ