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46.ボスの素質

心結はガレットが切り出すまで、辛抱強く待っていた。

やがてぽつりぽつりと絞り出すように話し出した。


『サキホドモハナシタガ……

オレタチノダイタスウハ、()()()()()()()()ダ』


「ガレットのように他の種族と話をする事ができる。

戦闘能力が高いなど、特別な力を持っている個体は

ある意味……特別なモンチラなんだね。

特異変種してそうなるのかな?」


『ナゼカソウイウコタイガ、マレニウマレテクル。

カズハスクナイガナ』


「そういう子たちが将来リーダー候補になったり、

暗殺部隊として活躍していくという認識でいい?」


『ソウダ。ソノナカデイマ……

ニンシキガワカレテイル。

ワカイリーダーモンチラノイチブガ、ボウソウシテイル』


「なるほど。

自分たちには自分たちのやり方がある!

たとえ群れの決まりでも気に食わないって

反抗的な態度をとる感じ?」


『ソウダ。オレモスベテヲ、ハアクデキルワケデハナイ』

ガレットは自嘲気味に呟いた。


「群れの中では力のあるモンチラとして扱われるから

勘違いしちゃうこが出ちゃうのか」


『タショウノハンパツハ、シカタガナイガ……

ショウショウメニアマル』


「難しい問題だね。

ボスはどうやって決まるの?

やっぱり先代を倒して交代するの?」


『イヤ。リーダータチデオコナウ、トウヒョウダ』


(マジか!以外に民主主義だったよ!

モンチラ会議……ちょっと覗いてみてみたいなぁ。

あ……でも大多数がおじさまモンチラの集まりか……。

モフモフには違いないけど渋いな)


ちょっぴり失礼なことを考えながら

心結は改めて、上から下までガレットを見て言った。


「先代を力で倒してもぎ取るのかと思ったよ」


『オレノカオデ、ハンダンシテナイカ……オマエ』


憮然とした顔で、心結を軽く睨んだ。


「フフ……ばれた?ごめん」

まったく悪びれた様子もなくニヤっと笑った。


『マァ……チカラガツヨイコトモ、ジョウケンノヒトツダ。

ソレイジョウニ、ダイジナコトガアル。

ムレヲヒキイテイクノウリョクト、マモッテイクキモチダ』


外見に似合わず本当にまともなんだよね……ガレットって。

ある意味いい男の部類なんだよ。

と頭の隅で考える心結であった。


「今までは、ただの軽い反抗で収まっていた。

けれども今回の件は、その暴走の果てに起きた事で

しかもその後で誰かが糸を引いている可能性が

あると思っている?」


確信をつかれたのか、ガレットは目を見開いて息を飲んだ。

顔を強ばらせて一瞬黙り込むが、ぽつりとこぼした。


『オマエニアウマデハ、ナニモウタガッテイナカッタ』


「…………」


神妙なガレットの表情と声に、何と答えていいのか困惑した。

心結はただ次の言葉を待つしかなかった。


『アノヒ、ギョウショウニツイテイッタノハ

ソノワカイリーダーモンチラタチダケダッタ」


「…………!!」


『ヤツラハコウイッタ……。

ギョウショウカラノカエリミチノコトダ。

キュウニ、ミシラヌジュウジンタチ二オソワレタト」


「まさかその獣人達がランベール王国の者達だったとでも?

なんでそんなことがわかるの?」


『ソノジュウジンタチガ、イッタソウダ。

ヒトガタノセイジョニ、ササゲルタメニツレテイクト』


「はぁぁぁぁぁ?

言うわけないじゃない。

凄い迷惑なんですけど。濡れ衣も甚だしいわ!

そもそも暗殺部隊のエリートでしょうが!!

あっさりと幼体を渡したの?おかしくない?」


心結は怒り心頭だった。

名前を語られた上にモフモフ誘拐の犯人に仕立てられるなんて。

どうしてくれよう!!


「そもそも悪人が何故自分で自分の正体をばらすのよ。

そこからしてもおかしいでしょうが!」


『ワカイモンチラタチハ、キズダラケデカエッテキタ。

タタカッタガ、ウバワレタトイッタ』


「えっ?大人の行商モンチラ達はどうなったの?」


『イッショニツレサラレタト』


心結はその一言を聞いて、真っ青になった。


「まさか仲間に手をかけたりはしないよね!!」


大人の行商モンチラ達は唯一の目撃者だ。

本当に幼体モンチラと共に連れていかれたのならいいのだが。

怖い考えが一瞬よぎって、背中に冷や汗が流れた。


『イマトナッテハ……ワカラン』

ガレットは遠い目で答えた。


「確証はないけれど、若いモンチラ達が裏切り行為を

働いた可能性は捨てきれないな……。

ボロボロになって帰ってきたのも、話を信じてもらう為の

演出だったかもしれないし」


『……………』


ガレットの苦悩が伝わってきて辛い。

仲間を信じたい、でも冷静に考えればおかしなことばかり。

ボスとしての決断が迫られている状況だよね……。


「でも、モンチラって仲間を大事にする種族じゃないの?

どうしてそんなことしたのだろう。

もしかしたら、逆に何か脅かされてやむを得ずとか」


『サアナ……。

ソコマデシテホシイナニカガ、アッタノダロウ……』


ガレットは哀しそうに顔を歪めながら呟いた。


「今そのモンチラ達は何処にいるの?」


『ケサカラ、スガタガミエナイラシイ』


「完全に黒じゃない……」

心結は愕然とし、しばらく声がでなかった。


(なんてことしてくれるんだ!若いモンチラ達よ。

やんちゃするにも程があるだろうが。

みつけたら教育的モフ指導してやるわ!!)


「これからどうするの?」


『ヤツラヲサガシダシテ、シンソウヲハカセル。

ナントシテモ、ヨウタイヲトリモドス』


そう言ったガレットの目には、もう迷いはなかった。

自身満々の凶悪顔のボスモンチラの姿がそこにはあった。


「本当にそれでいいの?

ガレットはその身内のモンチラよりも……

私を信じてくれるの?」


『オレノチョッカンガ、オマエハチガウトイッテイル。

イママデハズレタコトハナイ』


きっぱりと言い切るガレットに、驚きつつも納得した。

「そっか。ありがとう信じてくれて」



とそこに深刻な顔をしたモンチラがやってきた。

そっと何かをガレットに耳打ちした。


『なんだと!それで被害は?』

『今のところは……』


深刻な顔で話すガレットとモンチラの様子をみた心結は

服についた草を払いながら言った。


「私席外そうか?

モンチラちゃん達とその辺でも散歩してくるよ」

立ち上がろうとすると、ガレットに止められた。


『イヤ、ヘヤニモドレ。

ムラノマワリニ、オオカミタチガウロツイテイルラシイ』


「狼……。それって獣体の狼?」


『ソウダ、ムレデコラレタラヤッカイダ』


(狼といえばあの方だけど、まさかね)


心結は村の先にある、森をみつめながら狼執事の事を思った。


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