42.快適な空の旅へ出発!
一方さらわれた心結はと言うと……。
悠々自適な空の旅を思いっきり満喫していた。
「すごいね……。速いし快適!」
目をキラキラさせながら、鳥になった気分を味わっていた。
(俯瞰図な景色を生でみられる日が来るなんて!!)
あの後モンチラたちに連れられて、森の奥へと向かっていた。
しばらくついていくと開けた場所が見えてきたかと思ったら
その中心には大きな籠のようなものが、ドンっと置かれていた。
気球のゴンドラ部分といったところのようなものだろうか。
『コノナカニハイレ』
グイグイと籠の前まで、モンチラ達に背中を押されていく。
「えっ?これに?入るかな……」
すると牙を剝き出しながらボスモンチラが言った。
『イツモジュウジンヲハコブトキニハ、コレヲツカッテイル』
(いつも運んでいるって……。どういう状態かな。
ちょっと怖いから突っ込むのはやめよう)
心結は半分諦めて、大人しく籠の中に入ってみた。
「おっ!以外に中は広い」
籠の周りにはいくつものロープのような蔦が繋がっており
よく見ると、その先端はモンチラ達の足に繋がっていた。
「えっ!もしかしてこれで空を飛ぶの!?
この数十匹のモンチラ達が、私をのせて運ぶの!?」
心結はぎょっとした顔で、ボスモンチラをみた。
『ソウダ。コノママヤマヲコエテ、オレタチノクニヘカエル』
それをきいた心結は籠から飛び出し、ボスモンチラに詰め寄った。
「大丈夫なの!?モンチラ達の足が千切れない!!
私こう見えて以外に重いよ。心配でしかないんだけど」
急にオロオロしだす心結。
挙句の果てには、思いつめた顔で言い放った。
「私……歩こうか?」
まさかの行動と発言に、いかついボスモンチラを始め
大人モンチラ達がざわつき始めた。
「こんなに可愛いモフモフのモンチラ達に重労働なんて!!」
思わず心結は近くにいた幼体モンチラ数匹を
ぎゅっと集めて抱きしめた。
(はぁぁぁぁ……幸せ!!
モフモフの上にスベスベ。極上のモフスベ!!)
頬ずりをし、優しく撫でてこれでもか!
とモフスベを堪能した。
「モフスベまみれ最高!!
イヤッフゥゥゥ~パラダイス!! 究極のご褒美、たまらん」
心の声がだだ洩れまくっていた……。
そんな心結の狂喜乱舞をみて……
そこにいたモンチラの大人たちは全員思った。
〈こいつヤベェ、ガチの人だ〉と…………。
肩にも、膝にも、腕の中にもモンチラフィーバー!!
心結は恍惚の表情で浸っていた。
が、ハッと我に返って冷たい声で言った。
「まさかこの可愛い幼体モンチラちゃん達に重労働とか
させてないよね!ね!」
ズイッと険しい顔でボスモンチラにつめよる。
「よくわからないけど……。
難しい法律とかに引っかかるからね、たぶん。
とにかく幼体は大事に!!
だからといって皆が無理して言い訳じゃないからね」
モンチラ達は心結の剣幕に、ただただ黙って頷いた。
言っている内容はよくわからないが、すごく自分たちを
大事にしてくれているのは十分伝わったからだ。
「わかればよし!」
めちゃめちゃいい笑顔に戻ると、またモフスベを堪能する
旅(精神的)に出かけてしまったらしい……。
〈おかしいな、人質ですよね? あなた……〉
とは、もうもはや誰も突っ込めなくなっていた。
『アノ……ソロソロシュッパツシテモ、イイデショウカ』
「あ!は~い。本当に行ける?
時々休憩とか交代とかしてよ」
心結は再び自ら、籠の中に戻っていった。
『アリガトウゴザイマス』
「この子達は、そのまま抱いていてもいい?」
『オスキニドウゾ』
リーダー格のモンチラ達は慄いていた。
なぜなら、泣く子も黙る厳ついボスが人型に敬語を使っている。
もう一度言う。
他国から暗殺集団のボスとして恐れられているボスが敬語だと!!
〈やっぱり色々な意味で聖女様……ヤバい〉
〈人型……怖い!!〉
暗殺集団を恐怖に陥れたのは、過去にも先にもこの
無類のモフモフスキー 変態Lⅴ8の聖女候補だけだったらしい。




