41.まさかの一報!!
ジェラールたちがその一報を聞いたのは、ランチの後だった。
ちょうど家族でお茶を楽しみ、穏やかな時間が流れていた。
「ラウル、今日もハーブディーが美味しい!
やはりお前が入れてくれるのが一番だな」
イリスがそう言って一番お気に入りのカップを優雅に
ソーサーに置いた時にそれは起こった。
何故かカップが中央から、真っ二つに割れたのだ。
「大丈夫か!イリス」
ジェラールが心配して駆け寄った。
「平気だ、でもなぜ……。何か嫌な予感がする」
そこにディーヤと護衛騎士が、泣きながら飛び込んできた。
「ジェラール様、イリス様!申し訳ございません」
護衛騎士達は頭を床に擦り付けるようにひれ伏した。
「ミュー様が…………」
ディーヤはただ泣き崩れるだけだった。
只ならぬ雰囲気にジェラールの激が飛ぶ。
「何があった!! 言え!!」
圧倒される殺気に空気がビリビリと震える。
「心結様が、隣国のモンチラに攫われました。
圧倒的数に囲まれてしまい、なす術がありませんでした」
悔しそうにハスキー獣人が鼻を鳴らす。
「モンチラの集団だと!何故にそのようなものが我が国に」
イリスも牙をチラつかせながら激しく唸った。
「詳しいことはわかりませんが、モンチラの幼体を
この国のものが攫ったと訴えていました。
しかもその原因が心結様だとも言っておりました」
「…………!!」
さらにジェラールの怒気が膨らんだ。
尻尾も苛立たし気に何度もソファーも叩いている。
「なので幼体を返さないのなら、心結様を人質にして
隣国に連れ帰ると」
「馬鹿な……。それで黙って渡したのか。
というよりかあいつが自らそう望んだか」
そう呟いたラウルの目は、ぞっとするほど冷たく憤っていた。
「ミュー様は私たちの命と引き換えにモンチラの元へ。
どうか助けてください。
私たちを信じていると笑顔で言っておりました……」
ディーヤは顔を覆って泣き出した。
「心結さん……」
「みゅー」
ユーゴもディーノも激しい怒りで尻尾が揺れている。
「すべての影を使って構わん、モンチラの幼体の情報を集めろ」
その言葉に、何かが屋敷の中から数匹飛び去って行く気配がした。
深いため息をつきながら、ジェラールはソファーに座って言った。
「お前たちもいい加減に頭を上げろ。
相手が悪い。モンチラの集団……しかも大所帯!
ボスも名のあるものだろうおそらく」
「右目から頬に二本の斜め傷のある……
青紫色のかなり厳つい大型のモンチラでした」
力なくハスキー獣人が答えた。
「その線からも捜索をかけるか。
まぁ……戦っても誰かが命を落としただろう。
悔しいが心結ちゃんの決断が正しかった」
そう言いながらも、悔しさが言葉の端々に滲み出ていた。
「さぁ、反撃開始だ!!
このジェラール=レオポルドに喧嘩を売った事を
後悔するがいい」
不敵に笑うジェラールに、周りの者が息を飲んだ。
「ラウル、俺たちは心結ちゃんの行方捜索だ。やれるな」
「はっ!かしこまりました」
ラウルは奇麗に一礼すると、慌ただしく部屋を出て行った。




