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38.疑惑の嵐

屋敷に帰った後が大変だったよ……。

心結は猫足バスタブの中で、お湯に浸かりながら遠い目になった。

今日の担当は急遽、三毛猫獣人のメイドさんになっております。



心結たちが馬車を降りた途端、まず一番初めに護衛騎士の

イヌ獣人さんたちがやられた。

甘い香りが鼻を直撃したらしく、涙目になりながら

その場に崩れ落ちた。


どうしようもないので、庭師のクマ獣人親子を呼んだのだが

かなり遠いところからの断固拒否!!


埒があかないので、気合でラウルが温室兼研究施設?

に花を運び入れたらしい。


「ディーヤぁぁぁ、会いたかったよ。

もう大変だったよ!モフモフが足りない!モフモフをおくれ」

「あらあら、ミュー様!? ミュー様!!」


いつものように優しく出迎えてくれるはずのディーヤの

顔が険しい!若干鼻に皺も寄っている。

が、急にスンッと真顔になった。


そのままお風呂場に有無を言わさず連れていかれ

またもや剝ぎ取られ、全裸コース。


後できいたら、信じられないほどの甘い香りの発生源に

私がなっており、正気を保つのが大変だったそうです。


因みにイリス様筆頭に、ユーゴくんもディーくんも

全く平気でした。無味無臭だったそうです。



お風呂上りでホコホコな身体で、ベッドの上でゴロゴロ

しながら今日のことを考えてみる。


(一体誰がリオネル王太子を?

継承権争い?それとも何か別の事!?

一番得するのは、第三王子のセラフィン殿下だけど。

やり方がまわりくどいのは何故?)


そこに、コン、コン!

ノックが聞こえてきた。


「どうぞ~開いてるよ」

ディーヤだとおもってゴロゴロしたまま振り返ると

奇麗な碧眼が飛び込んできた。


「あっ……」


その姿をみたラウルは、ぽかんと目を見開き

しばらく無言だった……。

心結はガバッっとおきて、何事もなかったようにさっと

身支度を整えて向き直した。


「屋敷の中とはいえ、気を抜きすぎやしないか?お前」

デフォルトの冷たい視線と共に明らかに呆れた口調だ。


「ここしか心が休まるところがないのですよ、執事様。

まぁ一番は、ディーヤのモフモフリス尻尾ですが」

拗ねるように口を尖らせながら、少し顔を赤らめた。


「お前が持ち帰った花や香炉の成分がわかるには

2~3日はかかる。だからその間は大人しくしていろ」


(言い方!! どうしていつもこういう感じかな……。

本当にこの人って、人嫌いなのか心配性なのか

まったくわからないよね!!)


「ねぇ、聞いてもいい?」


ラウルは冷たい表情を一切変えずに頷いた。


「王族ってやっぱり敵が多いの?」


少しの沈黙の後、淡々とした口調で答えてくれた。


「そうだな、あそこはいつでも悪意が渦巻いている。

誰もがいつの間にか、気がつかないうちに

それに取り込まれて、染まっていき……」


ラウルはそこまで言いかけて、ハッとしたような顔をして

言いかけた言葉を飲み込んだ。


(俺はこの娘に何を言おうとしているのだ……)


「お前が気にすることではない。

もうこれ以上かかわるな。できることにも限度がある」

話は終わりだと言うように、部屋を出て行った。



 その頃、執務室では難しい顔をしたジェラールが

資料を読んでいた。

読めば読むほど、闇に近づき疑惑が確信に変わりそうだった。


「はぁ……厄介だ、どうすっかな」


「失礼します」

そこにラウルがお茶を持って入ってきた。


「心結ちゃんの様子どうだった?」

「相変わらず平和ボケした顔で寛いでいましたよ」

「心結ちゃんらしいな。彼女はそれでいい」


「何かわかりましたか?」


ジェラールは、資料をみながらため息交じりに言った。


「一年前くらいから、リオネル様の周りがきな臭い。

表向きは円満退職や寿退職のようだが……

大量に解雇された者がいる。

その後補充された護衛やメイドたちが、何故か不自然な

くらいネコ科獣人に偏っている」


「確かにおかしいですね……。

リオネル様はもともと他種族重視派だった記憶があります」


「そうだ。幼いころから何度も()()()()()()()()()()()

ネコ科の暗殺者に命を何度も狙われたせいでな!

どちらかというと、ネコ科嫌いだ」

ジェラールは語気を強めた。


「確か側近中の側近の二人がいらっしゃいましたね。

狼族と大鷲族の方ではなかったですか?

そういえば先日はお見かけしませんでしたが……」


「二人は国王の命令で、辺境に一時期駆り出されている」


「……!! それはそれでおかしな話ですね。

側近が主の傍を離れるなんて。

それを受け入れてしまった、リオネル王太子もそうとう

弱っていらっしゃる……。

周りに本当の味方が一人もいない状況ですか」


「おそらくあのお方が間違いなく一枚嚙んでいるだろうよ」


ラウルは、ジェラールの言わんとしていることを察したが

それ以上は追及しなかった。


「さぁて……どうすっかな」


ジェラールは不敵に笑った。


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