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37.人の気持ちは……

心結とジェラールは、離宮の執務室に向かう為に歩いていた。

お互いに大量のバニーユリリィを抱え前が見えないほどだ!

全部で100本近くはあるだろう。


(あぁあああ!花に罪はないけど、ごみ袋に入れて焼却したい!)



ガンッ!ガンッ!

青い扉の前にくると、ジェラールは足で乱暴にドアを蹴った。


「なんですか!騒々しい」


扉が開くと、苛立たし気な顔をしたラウルが出迎えてくれた

が、二人の姿を見た途端叫んだ。


「グハッ…………!! 

この脳天をさすように甘ったるい香りはなんですか!!

殺す気ですか!」


ラウルは両手で鼻と口を押え、よろめいた。


「一先ず説明はあとだ!中に入らせろ」


執務室の窓を全開にして、ラウル指導のもと大型の布袋に

厳重に花が全部詰められて密封された。


「説明願えますか」


絶対零度の微笑みのイケメン狼執事が現れた!

逃げる? 戦う?

いっそうの事……コマンド画面が出ないかなぁ。


現実は命を大事にしたいので、諦めた結果がこれです。

蛇に睨まれたカエルのように、執務室のソファーで

二人小さくなっています。


「心結ちゃんの言った通り、他の種族には匂うのだな。

これで間違いないな」

ジェラールが確認するように、小声で心結に囁いた。


「ネコ科殺しですね」

二人はこっそり顔を見合わせて頷きあった。


「だから何がですか!聞こえていますからね!

しっかりと……。

二人で勝手に納得しないでください!!」


(狼執事は地獄耳と!メモしておかないと)


「あ、その前にこの部屋での防音や盗聴は大丈夫ですか?

天井裏に忍者とか忍んでいませんか?」


「忍者が何かわからんが、影の者たちって事か?

俺の結界魔法が張り巡らせているから大丈夫だ。

因みにリオネル様の部屋も同様に安心だからな」


ラウルが尻尾を機嫌悪そうに、左右にゆらりとふっている!

これ以上、雷が落ちないように、先ほどリオネルの部屋で

起こったことを説明した。



「………………。まったく。

またなんでそんな厄介事に巻き込まれてくるのですか」


額に手をやり心底呆れたように、盛大なため息をつかれた。

尻尾も膨らんでピンと張っている。


「だって……」


「人型の特殊スキルなら、なんでも出来るとでも?」

少し侮蔑を含んだ、淡々とした冷え切った声で言われた。


「そんなことは思っていないよ。

でも目の前で苦しんでいる人がいて、それを解決できる

手だてを自分がわかっているなら力になりたいじゃない」


「それは()()()()()()()だからか?」

更に冷ややかな口調で問い詰めた。


「どういう意味?身分ってこと?

誰だろうと困っていたら、関係ないでしょ!そんなこと。

当たり前なこときかないで!」


「…………」

心結のその発言に、ラウルは目を見開いた。

そのような答えが返ってくるとは思っていなかった表情だ。


「そこまでだ!身内で争っている場合じゃないだろ」

ジェラールが二人の間に割って入った。


「ラウル、お前の気持ちもわからなくもない。

でも思い込みは時に……

人の気持ちを曇らせて大事なことを見落としてしまう。

視野を広く見ろ!過去にとらわれるな」

優しく諭すように、しみじみとそう言った。


「失礼しました」

ラウルはハッとして、ばつが悪そうに視線をそらした。


「心結ちゃんも、な」

心結の頭を少し乱暴に撫でた。


「はい、ごめんなさい」


「これ以上ここで話すよりも、屋敷に帰ろう。

そちらの方が施設もそろっている。

何よりも安全度がさらに増す」


「わかりました。馬車を手配してきます」



その様子を離宮の窓から見つめる視線があった。

フードを深く被っているので、誰だかわからないが……。

じぃぃぃぃっと息を殺して、伺うように見ていた。

はっきりとわかるのは、味方ではないということだ。


「ん?」

ラウルが馬車に乗る前に、上を見上げた。


「どうかしたか?」

ジェラールが馬車の中から声をかけた。


(気のせいか……視られている視線を感じたが)


「いえ、行きましょう」

三人は急いで屋敷へと帰っていった。





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