31.真面目かっ!?
ラウルたちと合流する為に、神殿広場へと戻りました。
なんか寿命が縮んだ気がするよ……。
「ミュー、グルグルグルゥゥウ」
「心結さん!」
ラウルと共にたくさんのお菓子や食べ物を抱えた二人が
心結の姿をみつけて手を振りながら駆け寄ってきた。
「ユーゴくん達、凄くいっぱい買ってもらったね」
(二人の顔をみるとホッとして癒されるな。
獣耳モフモフしたい!モフモフで魂を癒されたい!!)
「どうした!!顔が真っ青だぞ!何かされたのか!」
心結の顔を見た途端、ラウルが詰め寄ってきた。
「えっ?」
自分が想像していた以上に、ひどい顔色だったらしい。
「セラフィン殿下の発言と行動がちょっとな」
イリスが苛立ち気に軽く牙をみせて唸り、尻尾をしならせた。
「あぁ……、あの腹黒バカ王子ですか」
(この人いい笑顔で腹黒バカ王子って言っちゃったよ!
不敬罪にならないのか!?)
「一応、アルテュール国王がとりなしてくれたのだが。
どうだかな……。
諦めてくれればいいのだが……。
エーデル妃も要注意だな」
心結の顔色は相変わらず優れない。
「大丈夫か…………」
更に心配そうに自分の顔を覗き込むラウルの姿を
見たときに、不覚にも爆笑してしまいそうになった。
だって、右手の手首には、紫のバラが中に入っている
フラワーハートバルーンとリスを模ったバルーンが
巻き付けられていたし……
おまけに猫の形をしたキラキラと光る綿あめも
手に持っているし。
左手には抱えるのが大変そうな、大きな瓶入りキャンディー
(蓋の部分にモフモフの獣耳がついてる!!)
をガッツリと抱えていたし。
しかも中に入っている色とりどりのキャンディーの形が、
狼と肉球とハート型なの、可愛いすぎでしょう。
「フフ……ラウルさん、装備が可愛すぎなんですけど」
「…………っ!」
自覚はあるのか、赤面しながら睨んで呟いた。
「誰のせいでこうなったと思っている……」
「え?」
その時、ユーゴとディーノが、キラキラした目で
嬉しそうに報告してくれた。
「心結さんの為に一所懸命選んでいたよね!
広場何週もしていたよね、ラウル」
「グルグルグルルル!」
ユーゴの発言を後押しするように、ディーノも吠えた。
「……!ユーゴ様!ディーノ様まで」
「ラウル様……」
「何を勘違いしている!!
先ほどお前が言ったことを実行したまでだ。
借りはつくらない主義なんでな」
そう言いながら、買ったものをすべて心結に
グイグイ押しつけてくる。
(私とディーくんに、美味しそうな出店のお菓子
全部買ってくれたら許してあげなくもない
と言ったことを、真に受けたのか!!
変なところで真面目なんだなこの人)
「それでも嬉しい。ありがとう」
心結は手に余るほどの大瓶のキャンディーを胸で
ギュッと抱きしめた。
「フン……食べ過ぎるなよ、太るからな」
捻くれた発言をされても、ただただ可愛いとしか
思えなくなっていた。
「心結ちゃんを中心に、ハーレムが出来ているな」
何か肉の串焼きのようなものを頬張りながら、
ジェラールが乱入してきた。
「ガォォォ!!グルグルグルゥゥウ」
その串焼きを見た途端、凄い勢いでディーノが
ジェラールの足元に飛んでいき
くれ!と言わんばかり跳ねて強請っていた。
「父様!もしかしてそれは!!」
あのユーゴくんさえ目を輝かせている。
「おい……ディーノわかったから、落ち着け。
ほい、心結ちゃんにも一本上げよう。旨いぞ」
「ありがとうございます」
(なんの肉の串焼きだろう!?見た目は鶏肉っぽいけど)
一口齧りついて食べてみた。
(味はやっぱり鶏肉に近いかな、意外に美味しい)
「あっさりして美味しいです。
甘い照り焼きみたいなタレもいいですね」
ユーゴくんもディーくんも一心不乱に食べている。
イリス様も優雅に、でも夢中で食べている!!
「ところでこの串焼きは何の肉ですか?」
「ん?カイマンだ。俺たち種族の大好物だ。
最近天然物が、なかなか手に入らなくなってな。
毎年この祭典に出店する店が、唯一天然物を出すので
家族で喰らうのが恒例行事になっているな」
「カイマン……!?ですか」
(カイマンってなんだろう…………)
心結の疑問がガッツリ表情に出ていたのであろう。
「ワニだ」
ラウルが横からさらっと答える。
「ん?え?ワニ!?って……あのワニ?」
「あなたの言っているワニが、どのワニか知りませんが。
正真正銘ワニです」
「……?………………!!」
(ワニたべちゃったよ!!ワニかよ!)
驚きのあまり喉に詰まらせそうになり、目を白黒させて
冷徹狼執事を大いに慌てさせた。
やっぱりジャガーはどこまでいっても肉食獣でした!




