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25.自覚症状レベル1

ラウルは足早に廊下を歩いていた。

人がいない一画までくると、不意にその足を止めた。


何なんだ!あの娘の恰好は!

碧色のドレスに……百合のシルバーアクセサリーだと!

俺の目の色と髪の色……

あれでは、まるで俺のものだと周りに、言っているようなものだ……。


意識したとたん、先ほどの心結の姿が浮かんできて、顔が赤く染まる。

獣耳もへにゃっと後ろにさがり、尻尾も力なくだらりとさがった。


「はぁ……勘弁してくれ…………」

恥ずかしさに耐えきれず口を覆い、壁に背中をつけてそのまま

ずるずると床にしゃがみ込む。


正直に言えば、初めて心結の着飾った姿を見たとき美しいと思った。

自分の色を纏って恥じらう姿を、嬉しくもあり……

その反面、他の男に見せたくないとさえ思った。

そんな自分を認めたくなくて、ついまた憎まれ口を叩いてしまった。



いままでジェラールの付き添いで、数えきれないほどの夜会や晩餐会

などの行事に参加してきた。

その中でたくさんの着飾った、王侯貴族の令嬢をみてきたし、

確かに美しいとはおもったが、ただそれだけの感情だった。

むしろ自分に向けてくる、媚や色目を含んだ視線が煩わしいとさえ思っていた。


それなのに、なぜこんなにも自分の心を騒めかせるのが心結なのか。

異世界からの転移者……人型なのか。

何か怪しげな術でも使って、自分は操られているのではないか!?

一層それならば、その方が納得できる。

迷いなく、人型を排除できる口実にさえなるのだから。


恨めしそうに天を仰ぎ、独り言ちる。

「あいつが……同種族ならば……」


何を馬鹿な事を、自嘲気味に笑うと自分に気合を入れる為に

頬を両手でパンと叩いて気合いをいれて立ち上がる。


俺も焼きが回ったか、こんな事をしている場合ではない!

今から対峙する相手は、伏魔殿の住人たちだ。

こんな事では足元が救われてしまう。


スッといつも通りの表情に戻ると、何事もなかったように持ち場へと

戻っていった。



たまたま、その様子を通りがかり、現場をみてしまったメイド達は

〈あわわわわわ……ラウル様ご乱心!?〉

〈思い悩んでいらっしゃるラウル様も色っぽくて素敵……〉


などまたしてもこっそりと、その噂が屋敷中に横行してしまうのであった。



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