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2.こういうオプションは望んでおりません

とりあえず一旦冷静になろう。

状況確認大事!


森の中の開けた場所に出た模様

そして、目の前には湖……。


そして見たことない花々や木の実とか虫たちとか……。


鳥とか?

鳥なのかな……?


鋼のようなメタリックな羽が6枚もついていながら

矢じりのような先端の尻尾も装備……。


鳴き声はというと、地を這うような低音ボイスで

”ゴギュルワ!ゴギュルルワ!!”


えーっと……

鳥という事にしておきましょうか。


「…………」


なんとなく心によぎる事はあるけれども……

感情が追いつかない。


いや、本当はわかっているのだけれども

その感情を拒否していると言ってもいいのかもしれない。


(ヤバい、心臓がどきどきしてきた。落ち着こう)


一度深く深呼吸を行った。


「ふぅ……」


さらにもう一度、深く息を吸って吐いた。


なんならこの流れで、あの国民的な〇ジオ体操を

踊ってやろうかとも思ったが……

流石に怪しいので、なんとか思いとどまった。


それくらい動揺していたのだと思う。



目の前にはエメラルドグリーンの湖……。


そんな色にもかかわらず、透明度は高いようだ。

水面が日の光に反射して、キラキラ光っている。


(綺麗だな……魚とかいるのかな?)


もっと近くで観察しようと歩き出した途端

水面近くで何か大きな影が現れた。


パシャンンンン!!


大きな水音と派手な水しぶきが上がり

スケスケの透明骨格標本を思わせる骨魚が跳ねた。


サイズは、鮭くらいかな。

まぁまぁ大きなサイズの魚だ。


が、しかしなんせビジュアルが骨格標本だ……。


「ええっ、ないわ……。

あれのどこ食べるの?誰得?」


ガッカリ感が、半端ないのですが。


そういえば、お昼は鮭おにぎりだったな。

しかも奮発して、ちょっとお高いプレミアム鮭おにぎり。


「そうじゃないだろ!私!」


二度目のセルフツッコミみが完了したところで。


わかったことは、ここは恐らく日本ではないと言うこと。

というか、地球ですらないかも。


もうため息しか出ないわ。

そう思ったら、腹の底からなんだか怒りが沸々とわいてきた。


「はぁ、何故に?

轢かれそうな子犬を助けてとかでもないし……

過労で倒れてそのままとか。

もしくはお家のタンスが異世界につながりました!

とかでもないのに……。

まったりしていただけで、異世界へようこそとかある?」


思いの丈を、一気にぶちまけていた。


そして、膝から崩れ落ちましたよ、ハイ。

しばらくその場に項垂れてました。



「はー、あの雲の形、メロンパンみたい」


体育座りのまま、空を見つめて数十分ほど経っていたと思う。


「………………」


(このままでいいわけない)


「よしっ!」と気合いをいれてがばっと顔を上げると

湖に映る美少女が視界の端に見えた。


(えっ?今、人らしきものがいたよね!!)


もう一度その方向をおそるおそる見てみた。

確かにいる、間違いない!!


「人いたぁぁあああ!」


嬉しくて振り返るが誰もいない。


ん?どういう事?


背後にいるだろう人物を探してみても

何処にも見当たらない。


もう一度湖を覗いてみる。


黒髪でサラッサラッの腰までのロングヘアー。


紫水晶を嵌め込んだ様な紫眼!

肌も透けるように白い17才くらいの少女。


(王道な美少女ですな)


思わず顔がにやけると、湖に映る美少女もにやける。


(嫌な予感がする……)


試しに手を振ってみる。


すると、湖の中の美少女も同じように手を振る。


「ええっと、もしかして私なのでしょうか!

この美少女は」


声にだしていうと、なかなか恥ずかしいなぁ。


(パワーワードだな、私は美少女!)


思わず苦笑して呟く。


「こういうオプションは望んでおりませんがぁ!

女神様ぁぁぁ!

もっと他にあるでしょ!モフモフパラダイスとか!

子犬まみれとか!」


思わず天を仰ぎ見る。


「そうですか?

大概の方は、よろこんでいただけるのですが」


森の奥から澄み切った優しい声が、聞こえてきた。


「へっ?」


まさか返事が返ってくるとは思わなかったので、

恐る恐る声のする方へ振り向いた。


が、しかし、森の奥は暗くてよく見えない。


「め?女神様ですか?

ど……どちらにいらっしゃいますか?」


とりあえず暗い森の奥の方へ、声をかけてみる。


「こちらです」


微かな羽音と共に返事が返ってきた。

眼を凝らしてよくみてみた。


大ぶりの枝に金色に輝く梟が、一羽とまっているのが見える。


「えっ?

梟、鳥の女神様なのかな?

モフモフっていえばモフモフだけど……。

せめてリスの女神様とか、ね、

ほら、微妙なモフモフ?」


あくあまでも心結の基準は、モフモフであった。


「異世界人よ、思っていることが全部口にでていますよ」


「へっ!?あっ、つい、申し訳ございません」


反射的に頭を下げて謝ってしまうのは……

会社員の悲しいサガなのか。


「恐ろしいほどブレないモフモフ好きですね」


そう言いながら、心結の傍にある切り株まで、

黄金の梟が飛んできた。


「私はアナースタシア。

このリンデナザールを司る女神の一人です。

今はこの仮の姿を通じて、あなたと話をしています」


美少女と梟、初めての出会いだった。



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