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162.番外編~メニュー開発も楽じゃない~

心結は食材の前でうなっていた。




来週からは大型連休に入るので、通常よりも客足が増える。

だから急遽“一緒にランチメニュー”の試作品を作っていた。


愛犬や愛猫、もしくは愛フェレットや愛リス……。

動物の種類は問いません!


とにかくできるだけ、飼い主さんと同じメニューで

カフェを楽しんで貰いたいと思っていた。


この前は大型の亀さんと一緒にご来店されたお客様がいらした。

正直いって何をお出ししていいのかわからなかった。


が、試しにフルーツ盛をだしたところ……

ぶどうとリンゴを美味しそうに食べてくれたので

事なきを得たが……。

まだまだ勉強不足ね……。


飼い主さん曰く、パイナップルも好きらしい。


ライウルドカフェで提供する食事メニューで使う食材は

もちろん無添加で無農薬のものばかりだ。


やっぱり豚肉や鶏肉を使ったメニューが

飼い主さんにも動物達にも人気あるのよね。


そこを中心に開発かしら?



心結がまな板の前で食材を切っていると

急に後ろから抱きしめられた。


「心結……おはよう……相変わらず早いな……」


ラウルが心結の首筋に顔を埋めながら甘えてきた。


「ひゃぁ……。ラウルさん……おはよう。

刃物持っているときに急に抱き着いたら危ないよ、もう……」


軽く睨みながら、振り返る。


「朝起きたら……隣に心結がいない方が酷いと思う……」


これはちょっぴり拗ねていますご機嫌斜めモードだな。

獣耳が横に倒れ、ヒコーキ耳になっている。


こうなると一日中甘えて我儘いってくるからな。

早急に立て直さなければ……。


今日はどうしても新メニューの開発がしたいのだ!


心結は心を鬼にして飛びきりの笑顔つきで微笑んだ。


「ラウルさんの寝顔が可愛すぎて……

起こすのが忍びなかったの……。

疲れているのに、私に会いに来てくれてありがとう」


そう言いながら、ちゅっとキスをした。


「心結……」


獣耳が復活して左右にピコピコ揺れている。

尻尾はこれでもかと高速回転をきめている。


「あんな無防備な寝顔を見られるのは、私だけの特権でしょ。

幸せだな……」


そういいながらラウルにぎゅっと抱き着いた。


「俺もだ心結……好きだ……」


よしよし、これで今日一日……平和に過ごせるわ。


新しいつくねのハンバーグを開発したかったんだよね。

飼い主さんの方には、しゃきしゃきのレンコンと

紫蘇の葉なんかもアクセントに入れてもいいかも。


ワンちゃん達は、どうしても薄味になっちゃうから

あごだしで味をつけようかな……。

軟骨とか入れた方が、食感がいいかな。


馬肉とかにも興味があるのよね。

後でラウルさんにも意見をきいてみようかな。


なんて抱き着きながら密かに思っていた。


が、当のラウルは何かのスイッチが入ってしまったのだろうか。


「心結……」


かなり色気の含んだ甘い声で名前を呼び……

心結の頭をなでながらその手は背中を降りていき……

今は腰を撫でている……。


こ……これはまずい。

このまま行くと、お布団の中に引き込まれる案件に……。


顔をあげると碧眼の瞳孔が大きく広がっている。


ちょ……ラウルさぁ~ん、朝から本気モードやめてぇぇ。


次の瞬間、激しく口づけをされていた。


「ん……っ………ぁ……ちょ……!」


一瞬で場の空気が妖艶な色に支配された。


「んんぅ…………」


酸素を求めて開きかけた口から、舌が侵入し……

ラウルの右手が心結の服の中に入ろうとしたその時だった。


「にゃぁ~~ん……」


やけにドスのきいた猫の一鳴きが足元から聞こえてきた。


二人は荒い息の中ビクッと一瞬身体が固まった。

そのまま視線を下に下げると凶悪顔の猫がこちらを凝視していた。


「兄貴……」


「ト……トラ吉……」


トラ吉はまた一声鳴いた。


「グルニャ~ナアアアン!」


もちろん人の言葉は話していないのだが

二人にはちゃんと変換されて聞こえたのである。


『盛るのはかまわねぇが、俺の飯が先だ。

先に作ってからにしろ!』


心結達は顔を見合わせた。


「はい……」


二人ともトラ吉には頭が上がらないのだ……。


心結は急いで“スペシャル猫様ランチ”を作り。

ラウルさんは何やら兄貴に説教をされていた。


その後、ちゃんと新作メニュー開発も無事に終わったのだが

その晩のラウルさんはまさに狼だった……。



「ここまで我慢したのですから、ここからは私のターンです」


「えっ?」


凶悪なほど美しい男が舌なめずりをして自分を見下ろしていた。


「ラウルさん……えっ?えっ?」


「心結……覚悟はいいですか……」


「なんのぉぉぉ?」



次の日……全く起きられなかった事はいうまでもありません。


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