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155.その時が来た……

それぞれ三人の思いは違うけれども……

どれも思いやりの心からできているものだ。


そして一見かかわり合いなどないようにみえて

心結とラウルとトラ吉は密接に関係していた。


その人を思う気持ち……

そしてそれにまつわる物が複雑に絡み合い一つになる。


それはもうもはや偶然と言うよりか必然だ。


案外物事というものはそういうものなのかも知れない。


気がついていないだけで……

小さな一つ一つの出来事の積み重ねによってできているのだ。




「本当に不思議な縁だね。

まさかそのおかげで異世界転移するとは夢にも

思わなかったけれどね」


「心結の事だ。

そっちの世界でも思う存分モフモフを満喫してんだろ。

こっちの世界でも俺を見かける度にモフりまくっていたしなぁ」


トラ吉は意地悪そうな顔をして笑った。


「当り前じゃない。

()()()()()()()()()()()()()()()()だよ」


心結は満面の笑顔を浮かべてそう答えた。


「ククク……お前らしいや」


「その中でもラウルさんは私にとってとびきり幸せな……

ウルトラスーパーデラックスモフモフなんだから」


心結はラウルの尻尾をスーハースーハーしながら

モフりまくっていた。


「ブハッ……なんだよ、それ。

シルバーも災難だなぁ」


トラ吉は心結の言葉に吹きだしていた。


そんな二人のやり取りにラウルも幸せそうにクスクスと笑っていた。


「その変態……じゃなくて……

モフモフ愛も世界を超える原動力になったに違いねぇ」


トラ吉は目を細めて笑った。


「トラ吉……変態は余計だから」


心結はムッと頬を膨らませてジト目で睨んだ。

ラウルはその横で口に手を当てて笑いを嚙み殺していた。



しかしそんな楽しい時間も終わろうとしていた。

少しずつだが、画面が乱れるようになった。


ジジ……。

そんな音が聞こえ始め……トラ吉の姿が歪む。


「み…………、お前………こ………」


言葉も途切れ途切れにしか聞こえなくなってきた。


それに合わせるかのようにラウルの胸に揺れている

紫の宝石の光も弱くなってきていた。


「トラ吉!!」


「シルバー……お前に……あ……よ……った」


「兄貴!!」


だんだん見えなくなるトラ吉に向かって

心結達は必死に話しかけた。


「会えてよかったぜ……」


トラ吉のその声を最後にテレビ画面が消えるように

プツンと音がして鏡は何も映らなくなった。


紫の宝石も完全に光を失った。

きっとトラ吉の胸の中にある片割れの宝石も同じように

光を失っているのだろう。


役目を終えたと考えるべきなのか?

砕け散らなかっただけでも不幸中の幸いなのだろうか。


その後、何度も二人でコンパクトを開けたり閉めたり……

画面を覗き込んだ。


しかし鏡がトラ吉を映すことは二度となかった。

普通のただのコンパクトの鏡に戻ってしまったようだ。


「何も映らなくなちゃったね……」


心結は力なく笑った。


「そうだな……。

でもたとえ一時的でも兄貴に会えてよかった」


ラウルは余韻を噛み締めるかのように目を伏せた。


「よくよく考えれば凄い事だよね。

ありがたいと思わないとね……。

私がラウルさんに会えたのも奇跡だし……

ジェラール様達やモンチラ達……それにラオさん達……

それに……」


心が焦れて何かに追い立てられるかのように……

捲し立てて言葉を紡ぐ心結をぎゅっとラウルは抱きしめた。


「心結……大丈夫だから……」


そう言って優しく背中をポンポンとあやす様に叩いた。


「ごめん……。ラウルさん……私……」


心結はラウルにすがる様に背中に手をまわした。



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