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150.時間を司るもの

意図もしない展開でゲットしてしまった最後の肉球の欠片。

心結はただ黙ってその物体を見つめていた。


(とうとうその時がきてしまったか……)


いっそうの事、見なかったことにして捨てちゃう?


心結はそのまま草むらに向かって投げようと

手を振り上げたが……。

直ぐに思い直して手を下した。


(そんな事をしてもなんの解決にもならないよね)


大きなため息をついた。




すると今度はモフっとした塊が頭に落ちてきた。

痛くない……モフモフだ。

いや……ちょっと痛かったかな。


「えっ?」


その物体は心結の肩にぶつかり目の前に跳ね上がってきた。

思わず手を出してそれを受け止めてしまった。


「きゅ…………」


それは目を回しているであろう、小さいモフモフだった。

しかもその個体はなぜか黄金に輝いていた。


「シマリスなのか……?」


木から足を滑らせた?

いや、その前に黄金のシマリスってどういうこと?


そこにラウルが戻ってきた。


「心結、気分は大丈夫か?」


「うん……」


微妙な返事の心結にラウルは心配そうに眉尻を下げた。


(いかん、このまま抱き上げられて公爵家へ直行コースだ。

モフモフの狼ラウルさんに抱きしめられて

ベッドの上で一日中看病させられてしまう!)


「違うの、ラウルさんこれ……」


心結は慌てて、自分の手の中にいる黄金のシマリスをみせた。


「シマリスの獣体か?

しかしこんな毛色の個体見たことない」


ラウルも首をひねっていた。


「ん……」


そんな二人に見つめられること数秒……

黄金のシマリスが意識を取り戻したようだ。


徐々にその目が開かれた。


「君たちは……」


目を擦りながらシマリスは二人を捉えた。


(喋った!!)


心結とラウルはその獣体が言葉を発したのも驚いたが

それ以上に驚愕したのは、その瞳の色だった。


右目が虹色の瞳をしていた。

いわゆるオッドアイだった。


「大丈夫ですか?」


心結は動揺を隠しながら黄金のリスに話しかけてみた。


「助けてくれてありがとう。

僕は……時間を司る神“ウール”だよ」


黄金のリスはあっさりと自分の正体を明かした。


「桐嶋心結。

よくここまで辿り着いたね」


そう言って嬉しそうに尻尾を振った。


「そして黄金の魂をもつ狼ラウルよ。

君も道を間違えないでここまで来てくれた。

僕は嬉しいよ」


心結達はどうこたえていいかわからず困惑した。


「二人とも、もうわかっていると思うけど

()()()()()()()()()がもうすぐやってくるよ」


さらりと重要な事を告げてきた。


その言葉に、ヒュッっと心結は息を飲んだ。

足元が急にグラついた。


ラウルはそんな心結を支えるために肩を抱いた。


「最後の欠片は手に入れたね」


ウールの問いに、心結は悲痛の表情で頷いた。


「心結……肉球の欠片とはなんだ?」


ラウルは初めてきく単語に、説明を求めるように

心結に目で訴えた。


「狼よ……。はやるな。

まずはそうだな、何から話そうか」


黄金のリスは顎に手を当てて思案し始めた。


「ウール様、ここではなんですから

場所を移動いたしませんか?」


ラウルはそう切り出した。


「そうだな、死者が安らかに眠るところで

話す話でもないな」


ウールはそう言って、心結の手からぴょんと飛び上がると

ラウルの肩に乗った。




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