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15.モフモフチャンスは逃がさない

部屋に通されてからも、ディーヤの尻尾に顔を埋めて離さない心結。


ぎゅうううううう。


(尻尾がフッカフッカ……

スーハースーハ……お日様の香りがする。

渦巻リスしっぽ最高かよ!

モフモフの醍醐味を、胸いっぱい堪能させて頂いております!)


若干、ディーヤの困惑が伝わってきている。

が、今は甘えさせてもらおう。

どんな状況でも、モフモフチャンスは逃さない。

これ大事!


本当は柴犬の醍醐味、モフモフ胸毛に顔を埋めたい。

しかし可憐な女子のディーヤにそんな事はできない。

くぅぅぅ……残念。


あなたのその考え方のほうが残念です!

と、女神さまの呆れた声が聞こえそうです……。



「ミュー様、よほど怖かったのですね」


ディーヤは自分の尻尾を必死に抱きしめて離さない心結を

慰めて差し上げなくては!

と、訳の分からない使命感に燃えていた。


怖かったわけではない。

しかしディーヤが来てくれたことに……

心の底から安堵したのは事実だ。


心結はこくりと神妙な顔のまま、無言で頷いておいた。


「本当にあのお二方には困ったものです……。

でも決して悪いお方ではないのですよ」


ディーヤは心結の心配をしながらもラウルたちを

誤解しないでほしいと言っているようだ。


「うん、わかってる。

あの方達の立場で精一杯の対応をしてくれているんだよね。

私の存在はこの世界にとって異質だから……。

扱いを慎重にならざる得ないよ」


そっと、尻尾から顔だけあげて自嘲気味に呟く。


これは、本音だ。


だがしかし!!

何故あそこまで敵意をむき出しにされなければならないの。

あの美形陰険執事めっ!許さん!


初対面なのにあの塩対応。

一瞬でもときめいた私の時間を返してほしい。

やっぱり美形コワイ……。


(私とは相容れない世界に生きている生物なんだ)


心結は怒りを飲み込んで無理やり納得した。

と同時に、今後の自分の行方が不安になってきた。


「これから私このままどうなっちゃうのかな……」


呟くようにポツリと言った。


まず王様とかに差し出されて、聖女とかに祀りあげられるのかな?

そしてお約束のように顔だけいい王子様と婚約させられるんだ。


その後、”このニセ聖女め!”とか言われて……

婚約破棄させられてからの国外追放!!


その先々で陰謀に巻き込まれ!!

やがて……世界の危機とか訪れて……。


挙句の果てにモフモフの滅亡とか起きて……。

キャー無理!無理!無理!無理!

モフモフは全世界の宝!!


そんな世界はあってはならないし、認めん!!

考えただけで……あっ……ちょっと本気で泣きそう。


考えているうちにおかしな方向に妄想が膨らんでいっていたが

それすらわからないほどプチパニックになっていた。


「…………。無理……」


心結は声を震わせた。

もしかしたら目に涙が溜まっていたかもしれない……。


「キューン……」


心結の悲しみが伝染してしまったのだろうか……。


(あぁ……ディーヤまで悲しげな声上げさせちゃった。

いけない、話し変えよう)


もっと現実的な話をしなければ!!

なんとか持ち直して自分の精神状態を起動修正できたらしい。


「ところで……ディーヤ。

異世界人って定期的にやってくるものなの?」


藪から棒の質問にディーヤは若干驚いた様子だったが

わかる範囲で答えてくれた。


「詳しくはわかりませんが、定期的ではないと思われます。

しかしどの国にも、異世界人様の物語は語り継がれています。

少なくとも何人かはいらっしゃっているのかと」


(なるほど、やはり私のように何かの要因でこの世界に

不定期で落ちてくるんだな……)


「物語とかではなく、詳しい事実を調べる事とか可能かな?」


「…………。難しいと思います」


ディーヤは首を横にふった。


が、少しばかり思案して。

ディーヤはいい事を思いついたとばかり……

可愛らしい肉球をポンッと打った。


「あっ!ラウル様にお聞きしてはどうですか?

きっと私などよりも詳しくご説明できるかと……」


(あの美形陰険執事に教えを乞うだと!!

なんの罰ゲームですか、断固拒否だよ!

むしろ無理ゲーでしょうが……)


「えぇっと……嫌かな」


心結はいい笑顔で、やんわりとお断りした。


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