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141.三つ巴合戦!!

心結は幼体フェネックを抱きながら目を瞑っていた。

そうでもしないと緊張のあまり叫んでしまいそうだからだ。


「よし、せりあがるぞ。気をつけてな」


そう言ってトラ獣人はボタンを押した。


心結は舞台装置に乗せられたまま、上へ上へと上がっていった。




「今宵……最後の商品となりました。

こちらもめったにお目にかからない一級品でございます。

おおとりを飾りますこの商品をご堪能くださいませ」


司会の美しいキツネの獣人の男が大げさにそう叫んだ。


〈心結を商品だと!! あの男後で噛み殺す〉


もう既にラウルは臨戦態勢だった。


横に座っている犬の獣人とタヌキの獣人がすでに

殺気に気圧されて真っ青な顔になっていた。


バタンと盛大な音が後ろからしたので振り返ると

ネズミ獣人が白目をむいて泡を吹いて倒れていた。


〈ついに犠牲者が出てしまったか……

大丈夫か、ラウルさんが暴れないか心配だ〉


更にアレクシの胃がキリキリと痛むのであった。



またもや舞台の中央にスポットライトがあたり

何かがせり上がってきた。


と同時にさっき以上の歓声が会場中からあがった。


そこには予想通りというか……

艶めかしい姿の心結が横座りで登場してきた。


泣きそうな顔で幼体フェネックを抱きながら

不安そうにキョロキョロしていた。


「…………!!」


ブチン!!

何かが切れる音が聞こえた気がした。


恐る恐るアレクシは横の男をみた。

ラウルの顔から表情が消えていた。


「許さない……俺の心結にあんな格好を……。

よっぽど死にたいらしいな……」


ぞっとするほど感情がなくなっていた。


ラウルの手の中に青い光の玉が発生しそうになったが

アレクシが力づくで止めた。


「耐えてくれ、ラウルさん。

問題を起こして出禁になったらそれこそもう救えない!!

何の為にここまでがんばってきたんだ!!」


アレクシはもうそれは力説した。

そんな様子を見て少し頭が冷えたのだろう……。


「くっ……」


ラウルは苦悶の表情で思いとどまった。


「すみません。取り乱しました」


「かまわないぜ。

俺だって嫁があんな姿で登場したら耐えられん」


そんなやり取りをしている間にもどんどん値段が

つり上がっていっていた。


「8,000,000!!」


最前列のイノシシ獣人が叫んだ。


すると後ろの方であらたに誰かが叫んだ。


「10,000,000!!」


大台に乗ったことでまたもや会場からどよめきが起こった。


そんな光景を見ながら心結の顔はひきつっていた。

恐ろしい値段合戦が続いているからではない。


気がついてしまったからだ。


前の座席の中央のあたりから尋常じゃない冷気と殺気が

この舞台の上まで流れてきているからだ。


(ラウルさん……本気で怒っているよね……。

目が光っているのが見えるよ……。

あれは暗闇に潜む猛獣レベルだよ、うん。

どうしよう違う意味で怖い……)


心結は心臓が縮み上がっていた。

思わず震えながら目を閉じた。


「やはり愛らしいですね。

あなたは怯えた顔が一番美しい……」


そんな物騒な発言と共に驚異の金額が聞こえてきた。


「15,000,000!!」


ラウルがハッとして斜め後ろを振り返ると見知った男が

どや顔でこちらをみていた。


〈コウモリ!! なぜこんなところに〉


ラウルは驚愕した顔で男を見つめた。


「驚愕しているのはこちらですよ。

なぜ心結があんな楽しい事になっているのですかねぇ。

相変わらずヘタレ狼ですね……クスッ」


肩をすくめながらコウモリは目を細めた。


「…………」


ラウルは悔しいがぐうの音も出なかった。


確かに自分がしっかりしていればこのような事に

ならなかったのかもしれないからだ。


「心結は私がいただきますよ。

なんせ熱い一夜を交わした仲ですから……フフ

あの時の事を思うとこの身が震えます」


そう言ってラオは身悶えた。


「あぁ?寝言は寝てから言ってください」


ラウルの背中からゴゴゴゴゴゴと何か出てきそうだ。

狼VSコウモリのラウンドが始まりそうになった。


そんな中後ろから更に高い金額が聞こえた。


「20,000,000!!」


〈なんだと!!〉


ラウルとラオがその金額に驚き……

後ろを振り返るとまたもや見知った顔だった。


仮面はつけているが……あの特徴的なヒレは……。


その人は二人に気がつくとニヤリと笑って手を振った。


〈シレーヌ様まで何をやっているのですか〉


ラウルはもう溜息しかでなかった。

すこし投げやりに言った。


「25,000,000」


またもや会場にどよめきが走った。


「27,000,000」


軽く野菜でも買うような口調でラオが値段をつり上げてきた。


アレクシは目の前で繰り広げられている光景にひいていた。

夢なのかな?と思い自分で頬を抓ったくらいだ。


「あの男……コウモリだよな。

ラウルさん知り合いなのか!?」


「……心結を通してちょっとな……」


ラウルは嫌そうに吐き捨てた。


アレクシは動揺のあまり木札を落とした。


「もしかしてあの派手な魚人らしき方も知り合いだとか言わないよな」


「…………」


ラウルの顔をみて悟ったのだろう、アレクシは狼狽していた。


「これ、決着つくのか?」


果てしない三つ巴の戦いが続きそうな雰囲気だった。




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