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136.バザールの流儀

結局緊張のあまり……よく眠れなかったわ。

心結はベッドの上でボーッと天井を見上げていた。


そこに昨日の猫獣人の女性達がやってきた。

今日の見張は、若いトラ獣人の青年だった。


「おはようございます。

ご気分はいかがですか?」


「…………」


「それでは準備に入りましょう」


心結は本気で眠かったので、素直に頷いた。


あのお茶飲んだら駄目だって言ったでしょう!!

と猫獣人の目が若干責めている気がする。


〈違うんです……。飲んでいません。

おっちょこちょいの羊獣人の少女がガッツリ零しましたから。

これは単なる寝不足モードです……〉


とは言えず……

目をしょぼしょぼさせながら身をまかせるしかなかった。


そんな心結をまた痛ましそうな顔でみる猫獣人であった。




その頃ラウルは、一先ず“闇のバザール”会場へと

アレクシと向かっていた。


今日もラウルは、顔半分のみ隠れるキツネ面をつけ

ローブを纏ったお忍び貴族仕様での格好だ。


いつの間にか大きなテントが広場にできていた。

豪華なサーカスでも始まるかのようだ。


会場の入り口でブレスレットをみせて入場するらしい。

その際にひとりひとり木札のようなものを貰った。


数字のような幾何学模様の入った美しい木札だった。

一つとして同じ模様はないらしい。


“闇のバザール”の太陽は、ブレスレットのおかげで

すんなりと入場することができた。


しかも宝石4つ持ちなので、オークション会場が見渡せる

二階席でバルコニーにある個室に案内された。


そこには、果物や軽い軽食、飲み物などが取り揃えられていた。


「至れり尽くせりだな……」


ラウルはその光景に苦笑した。


「この木札はどう使えばいいのですか?」


「まず、この木札をあげて競り落とす。

商品を落としたら、木札をその場で割ってその半木を

売り主に渡すという仕組みだ。

買主はお金と商品を引き換える時に、自分の半木を差し出して

二つが綺麗に合わさるのを確認してはじめて商談成立だ」


アレクシが闇のバザールのルールをラウルに説明した。


「なるほど、不正を防ぐ為によくできた方法だ」


木札をまじまじみながらラウルは感心していた。


「ラウルさんの目当ての“砂漠の花”は

闇のバザール太陽の目玉商品の一つだ。

おそらく後半に出てくるだろう」


「まだ時間がありますね……。

それならば二手にわかれませんか」


「そうだな……。

それが賢いやり方かもしれん」


アレクシはラウルに頷いてみせる。


「ならば、この闇のバザールをよく知る

アレクシさんがここで待機していてください。

“砂漠の花”が出たらお願いいたします」


ラウルは金貨と宝石がぎっしり詰まった

革袋をアレクシに託した。


「わかった。何が何でも競り落とすぜ。

任せときな。

あまり値段がつりあがらないようにうまくやるから

安心していいぜ」


そう言って悪い顔でニヤリと笑った。


アレクシさんはその身一つでこの砂漠を渡りあるいて

商売をしてきた男だ。

目利きはもちろん、ここぞと言うときの勝負強さは

折り紙付きだろう……。


ラウルは力強く頷いた。


「俺はこれを頼りに……

もう一つのバザールの参加方法の情報を探してきます」


そう言って、4つの宝石がついたブレスレットをみせると

ラウルは人ごみの中に消えて行った。



二人はまだ“闇のバザール”月の参加方法がわからなかった。

どうやら宝石4つ付きのブレスレットだけでは駄目らしい。


それはあくまでも参加資格があるという事だけに

過ぎない事がわかった。


〈参加さえできれば、なんとか二人を競り落として救う〉


その前に助け出せる手だてがあればいいのだが……

現状その方法はないに等しい。


〈心結無事でいてくれ……〉


ラウルは心結を思って目を閉じた。



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