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135.びっくりした

しばらくすると少女の羊獣人がお茶を持ってきた。


「寝る前にこちらを飲んでくださいね」


そう言ってお茶を心結に差し出してきたのだが

幼体フェネックが、牙を剥き出し唸り始めた。


その香りが嫌だったのだろう。

お茶を持っている手に飛び掛かった。


「きゃぁ……」


羊獣人はびっくりして、すべてお茶をこぼしてしまった。


「…………」


(こういう場合はどうしたらいいのだろう。

でもこれってさっき猫獣人さんがいっていた

曰くつきのお茶だよね……)


羊獣人は唖然としてお茶の零れた床をみていた。

しかし直ぐに顔をあげて心結をみてへらっと笑った。


「あの……怒られちゃうんで。

飲んだことにしてもらってもいいですか?」


「はい?」


心結は羊獣人の少女のお願いに一瞬耳を疑った。


「明日の朝には眠そうにしていてください。

そして何か言われてもはいとだけ答えてください。

そうしたらばれませんから」


(ヤバイお茶じゃねぇか!!

というか、この羊獣人の少女もある意味やばい。

そんな感じでいいのかい?

管理が厳しいのかユルユルなのかわからんな)


心結の一人ツッコミが止まらなかった。


「いいですよ」


心結がそう言うと少女はあからさまにほっとした。


「それではおやすみなさいませ」


そういうと逃げるように部屋から出て行った。



「なんだかな……」


心結は幼体フェネックちゃんを抱きながら

ベッドの上で途方にくれていた。


「ラウルさん……」


(今頃めちゃくちゃ心配しているだろうな)


そんな事を考えながら壁に凭れたその時だった。


カチッ……

何かボタンを押したような小さな音がした。


「へっ?」


心結はそのまま壁ごとぐるんと一回転した。

あまりにも一瞬のことで驚く暇もなかった。


しかし一回転した先には、もっと驚くものが待っていた。


そこには絶世のモフモフ美女が目を大きく開いて

心結をみつめていた。



二人の美少女はお互いに固まったまま見つめあっていた。


そんな沈黙を破ったのは、心結の腕の中にいた

幼体フェネックちゃんだった。


「姉たま……」


嬉しそうに目の前の美少女目がけて飛びついていった。


「…………!!」


二人は嬉しそうに頬ずりしあっている。


(モフモフ美少女と可愛いモフモフの夢の競演。

はぁぁぁぁ……尊い。

スマホが欲しい、この一瞬を切り取りたい)


残念な顔のまま身悶えしていた。


いかん、落ち着け心結。

現状把握大事、うん。


「あの、もしかしてリシュくんのお姉さんですか?」


そう言うと美少女フェネックの獣人は

更に大きな目をこぼれんばかり見開いて震える声でいった。


「リシュをご存じなんですか?」


心結は頷くと、今までの経緯を美少女に話した。


「そんな事があったのですね……。

助けて頂いてありがとうございました」


フェネック獣人のモフモフ美少女はそう言いうと

涙ながら心結に深々とお辞儀をした。


因みにこの美少女フェネックさんの名前はリラさん。


リラの花といえば……

香水の原料になるほど甘くやさしい香りを放つ

ライラックの花の事だよね。

外見にぴったりの名前だな。


「ところでリラさんはどうしてここに?」


「はい……あれは一昨日の事です……」


要約すると何か大きな力が働いたようだった。

あの宿屋のバカ息子のせいじゃなかったのか……。


リラさんはその日も相変わらず言い寄られていたらしい。

いい加減かわせなくなりそうになっていたので

宿屋をやめたい旨をオーナーに伝えたそうだ。


オーナーは納得してくれたらしいのだが……

息子はどうしても諦めきれなかったらしく。

いつもの帰り道に待ち伏せされていたそうだ。


だから普段は通らない少し細めの道を歩いていたのが

それがいけなかったらしい。


背中に何かピリッとしたものを感じた時には

もう意識を失っていた。


(私の時の状況と同じだ。

という事は……あのへっぽこ盗賊団の仕業か!?)


「気がついたら……訳も分からずこの部屋にいました」

困ったように獣耳を下げてリラは微笑んだ。


「その前にガゼルの獣人とは会わなかったですか?」


「いいえ、私は会っていません」


(んー、もう標的がリラさんと決まっていたとか……。

確かめる必要性はなかったのかな?

って、いう事はやっぱり私はミュゼさんと間違えられて

攫われてしまったという事か……)


心結はがっくりと肩を落とした。


(どうしよう。

このままだと私たちかなりヤバイんじゃないの)


挫けそうな気持になったが、その時心に浮かんだのは

ラウルの顔だった。


「大丈夫、かならず来てくれる。

今までもそうだったから……大丈夫!!」


心結は自分にもリラにも言い聞かせるように言った。


「信じている方がいるのですね」


「はい。とても大切な人なんです。

皮肉屋でちょっぴり意地悪で……

でもその癖にとても心配性で心の温かい人です」


そう言って心結は破顔した。


「その方が大好きなのですね……フフフ」


「えっ!?」


心結は真っ赤になった。

そして恥ずかしそうに頷いた。


「片思いなんですけどね……」


そういって目をふせた。

しかしすぐ顔をあげると……


「よし、悩んでいても仕方がない。

ここは腹をくくって立ち向かいましょう!」


心結は拳を握って立ち上がった。


が、しかし意気込んだまではよかったが

この後自分がいた元の部屋に帰るのに四苦八苦したのだった。


(またあの謎のぐるん一回転で帰れるのか……私!?)


何度かトライした結果、5回目で帰れました。

でもちょっと気持ち悪い……。


マジでなんなのあの仕掛け……。

金持ちの考える事はわからん!!


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