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131.秘密の……

夜の帳が降りる頃……。

二人の男は裏路地にある店に向かっていた。


一人の男は頭からローブをすっぽりと被っており

顔の半分はキツネ面で覆われていた。


はっきりいってかなり怪しい格好だ。

しかし高貴な貴族は身元がばれないように

このような姿で遊びに行くのは普通の事らしい……。


〈心結はこの姿を見て大爆笑していたな〉


「ラウルさん怪しすぎるんですけど!

なんですかその仮面……フフフ。

ラオさんみたく普通の仮面は、なかったのですか……。

まぁ、あれが普通の仮面なのかも不明ですけど。

ランベール王国だったら捕まって職質されるところですよ」


「……。職質がよくわかりませんが、私だって好き好んで

このような格好をしているわけではありません。

あのコウモリと一緒にしないでください!!」


思い出してちょっぴり切ない気持ちになるラウルだった。




看板も何も出ていない木の扉をノックした。

すると少し間をおいて……

ガラリと扉の真ん中にある小窓だけが開いた。


アレクシが黄金色のカードのような物を見せた。


「…………どうぞ」


抑揚のない声で返事が返ってきた。

その男はチラリと二人のいで立ちとブレスレットを見ると

黙って扉をあけた。


そのままそのハイエナ獣人に案内されて二人は

個室のような部屋に案内された。


こぢんまりとした部屋だったが、趣味のいい家具で

統一されており、ソファーもふかふかだった。


「どうぞ……ごゆっくりお楽しみください」


そう言って男は部屋を出て行った。


「ここは特別室か何かですか?」


ラウルはソファーに軽く腰掛けるとアレクシに聞いた。


「そうだ。

この黄金カードは貴族にしか発行されない特別なものだ。

使う日なんて来ないと思っていたがな……」


薔薇の模様の入ったステンドグラスの窓の横にたちながら

アレクシは苦笑していた。


そこにノックの音が響いた。


「入れ」


「失礼いたします」


先程よりも年嵩のいった目付きの鋭いハイエナ獣人が

高級な酒とつまみを乗せた銀のお盆を持って入ってきた。


「ようこそお越し頂きました。

うちは何でもそろえております……。

まずどの子にいたしますか」


そういっていやらしそうに目を細めて二人の顔をみた。


「お前が支配人か?」


少し上から目線でアレクシはぞんざいな物言いをした。


「いえ、私ではございません」


その男は薄気味悪く笑うとへりくだって言った。


「この方はある国の高貴なお方だ。

今回バザールの為にお忍びで遊びにいらしてな。

特別な物を所望しておられる」


そういってラウルの方をみた。


ラウルはソファーにふんぞり返って、ただ男を見下ろしていた。


「それはそれは……」


そういって更に目をほそめて頭をさげた。


「…………。例の物をみせてくれるか?」


少し圧をこめてアレクシは男に言った。


「はて、なんのことでしょう?」


その男はわからないと言うかのように口元を歪めて微笑んだ。


ラウルは相変わらずふんぞり返ったまま、そのハイエナ獣人に

こっちに来いと首で合図をした。


「…………はっ」


そういうとその男は腰を低くしたままラウルの傍まで行って

片膝をついて見上げた。


ラウルはスッとブレスレットを見せた。


その男はブレスレットに宝石が4つあるのを確認すると息をのんだ。


「これは失礼いたしました」


先程のまでの慇懃無礼な態度は消えた。


「顔をつないでくれ。

これはこの方からのお気持ちだ」


そういってアレクシはその男に小さな宝石を渡した。

それはなかなか手に入らない青い宝石だった。


「このような貴重な物をありがとうございます。

しばしお待ちください」


そう言って男は部屋を後にした。



「ふぅ……」


ラウルはため息をついた。


「ククク……なかなか様になってるじゃねぇか。

あんた、本当は貴族かなんかじゃないのか?」


アレクシは揶揄うように言った。


「公爵さまには仕えていますが、おれはただの狼ですよ」


そういってラウルは苦笑した。



暫くするとまたノックの音が聞こえた。


「失礼いたします」


そう言って入ってきたのは見目麗しい青年だった。

しかも驚くことにフェネックの獣人だった。


「支配人のギースと申します」


予想もしない種族だったので、ラウルたちは一瞬ぽかんとした。


「予想外でしたか、私のような種族が店を持って……

このような地位にいるのは」


そう言ってギースは笑った。


「いや……その」


アレクシはなんと答えていいのかわからず少し狼狽した。

しかしラウルは直ぐに自分を取り戻した。


わざと地声を低くして言い放った。


「そんな事はどうでもいい。早くみせろ」


二人ともその一言にハッとした。


「はい、失礼いたしました。

先程は身に余るものを頂きありがとうございました」


ギースはラウルの前にいって片膝をついてお礼をした。


「…………」


そんな言葉に眉一つ動かさず、ラウルは黙っていた。


ギースは手元に持っていた大きな皮張りの薄い本のようなものを

ラウルに恭しく差し出してきた。


「こちらが今回の月のリストでございます。

若干の変更はございますが、それはご容赦ください。

なお、こちらの持ちだしや、商品の予約などはできません。

あくまで情報のみの提供でございます。

それではごゆっくりとご覧ください」


ラウルは黙って頷いた。

アレクシも横に座り二人で見ながらその本を捲った。


その中には、珍しい植物や獣体が3つほど書かれていた。


〈以外に普通なんだな……〉


ラウルとアレクシがそう思っていた時だった。

恐らく最後のページだろう。


衝撃的なリストが載っていた。


「うそだろ……」


思わずアレクシは声を上げてしまった。


ラウルに至っては本を破壊してしまいそうな殺気が

背中から立ち上っていた。




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