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129.情報収集開始!!

すっかり心結と幼体フェネック達は打ち解けていた。

ベッドの半分を占領して楽しそうに戯れていた……。


それを血の涙をながしながら恨めしそうに見つめている狼がいた。


〈俺が風呂からもどってきたらこれだ。

これから夫婦の至福の時間なのにこの仕打ち……

酷すぎるだろう〉


ほとんどベッドの隅に追いやられてふて寝する狼であった。

普段なら狼のラウルにくるまれて寝る心結。


しかし今日は頭の先からつま先まで……

幼体フェネックに心結は占領されていた。


「フフフフ……。

君たちは本当にふかふかのモフモフだね」


そう言いながら心結は、幼体フェネックを一匹ずつ

スーハースーハしてモフモフを心の底から堪能していた。


「可愛い……一晩中でも見てられるよ……。

奇跡のモフモフ!!」


そう言いながら幸せそうに微笑む心結であった。




次の日の朝……

艶々の元気いっぱいの心結とげっそりやつれたラウルをみて

ミュゼ夫妻は何があったのかを悟った。


またもや無言でラウルの肩をたたくアレクシであった。


そこにフェネックの少年もやってきた。

今日は力が戻ったのか獣人姿になっていた。


「おはようございます。

昨日は大変お世話になりました。

それから動揺していた為に、ご挨拶も遅れてすみません。

俺……リシュと言います」


そう言って深々と心結達に頭を下げた。


「元気になってよかったね」


心結はそう言ってにっこりと笑った。


「兄ちゃん……」


心結に甘えてまとわりついていた幼体フェネック達は

一斉にリシュの元へ駆け寄った。


「お前たち……」


それをぎゅっと抱きしめながら嬉しそうに微笑んだ。


〈はう……尊い……。

朝一でこんないいものが見られるなんて……幸せ。

モフモフは正義だな、うん〉


心結は目をキラキラさせながらその光景をみていた。


そこにミュゼが焼き立てのパンをもってやってきた。


「おはようございます。

は~い、みなさん席についてくださいね。

早く食べないと冷めちゃいますよ」


〈この絶妙なタイミングで現れるところとか

ディーヤそっくりだな〉


心結は感心しながら、ミュゼをみつめた。


「心結……頼むからミュゼさんの尻尾には抱き着くなよ」


そうラウルは心結の耳元にこっそり呟いた。


「流石の私もそんなことしませんよ。

アレクシさんに怒られちゃうじゃないですか。

あれはディーヤだからモフモフしているんです」


心外だなというように口をとがらせながら答えた。


〈ディーヤでも本当はアウトだからな〉


と言いたいところをぐっと我慢するラウルなのであった。


皆でミュゼの作った美味しい朝食に舌鼓をうっている時だった。


「ラウルさん、今日は情報収集にいきませんか」


アレクシが話を切り出した。


「何か伝手をお持ちですか?」


「んーまあな、マユツバもんの噂だが……。

一軒心当たりのある店があってな」


少し歯切れ悪そうに言って、ちらりとミュゼと心結をみた。


「ん?」


心結はその視線の意味が分からず首を傾げるが

ミュゼは明らかに怒っていて尻尾を膨らませている。


「あなた……」


「いや、その……あくまでも情報収集にいくだけだから

ほら、ラウルさんのブレスレットがあればきっと

何か掴めるはずだろ、な……」


しどろもどろになりながらアレクシは冷や汗をかいていた。


「とりあえず、詳しい事は後で俺の部屋で」


そう言いうとアレクシはそそくさと席を立って部屋を出て行った。


「もう……」


まだミュゼは怒っているようだった。


残された心結達はどうしていいかオロオロしていたが

ミュゼは直ぐに笑顔を取り戻した。


「ラウルさんは、主人の部屋に行ってください。

心結さん達には片づけを手伝ってもらおうかな」


「はい」


心結とフェネック達はお皿などを片付け始めた。




ラウルはアレクシの部屋を訪ねた。


「来たか……」


アレクシは窓の近くに立って外の景色をみていた。


「よくも悪くもこの街は大きくなりすぎた」


そう言ってアレクシは遠い過去を思い出しているかのように

目を細めて水路をみていた。


「…………」


「これでも昔はここまで身分差はなかったんだ。

厳しい不毛の地だったからな……。

それぞれの種族の特色をいかして補っていた。

それがいつからか、こんな事に……」


アレクシは小さくため息をついた。


「どこの国にも闇はあります」


「そうだな……。

しかし光が大きければ大きい程、闇も大きく深くなる」


「そうですね」


ラウルもしみじみと頷いた。


「話がそれてすまない。

情報収集の話だが……一軒気になる夜の店があってな。

表向きは普通の店なんだ。

まぁ、いわゆる可愛い女の子と楽しくお酒を飲める店だ。

しかし噂によると、どうやら裏の顔があるらしい」


「裏の顔とは?」


「闇のバザールには表向きの太陽と言われるバザールと

特別に選ばれた者の為の月と言われるバザールがあるんだ」


「ほう……」


「月のバザールは主に()()()()()()()らしい。

その商品の情報を事前に教えてくれると聞いた事がある。

それすら噂の域を出ないからな。

本当かわからん……。

その月ができたのも、あの男が国王になってからだ」


アレクシの顔にはっきりと怒りと嫌悪が現れていた。


「その前に確かめたいことがあります。

俺はまどっろこしい事は嫌いです。

だから直球に聞きますが、アレクシさん。

あなたは国王の関係者ですか?」


ラウルの問いに微かに目を見開いたが

やがてぎこちなく切り出した。


「…………。無関係だ……。

群れが違うからな。

俺たちの種族は群れを大事にする」


「ガゼルの群れがいくつもあるのですか?」


「そうだな……。

大きいものだと4つくらいあるな。

その中でも俺たちの群れは穏健派で中立を保って

いるものが多いな」


「しかし知らない者からみれば、ガゼルの獣人というだけで

高い地位にいるように感じるのですが」


その質問に対してアレクシの瞳が動揺に揺れた。

やがて絞り出すようにぽつりと言った。


「それは正直いって否めない。

やつが国王になった時からさらにその傾向が強くなった」


「それをよしとするか、変わらず生きていくかは

その人しだいということですか……」


ラウルは静かに目を伏せた。


「だから国王一派とは交流はない。

よって俺には全く情報も入ってこない……」


「わかりました。一先ず今夜その店に行ってみましょう」


「今はそれしかないな」


二人は難しい顔で頷いた。




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