13.イケオジ獣人降臨!
(何か声が聞こえる……)
「……。……ちゃん。……。……ん」
緊張と疲れからか、公爵を待つ間ソファーに凭れて
うつらうつらしていたらしい。
若干荒く肩を揺さぶられている?
「ん…………」
だんだんと意識が覚醒してきた。
(私、もしかして寝ていた?)
まだぼんやりとしながらも……
自分の置かれている状況を思い出し
心結はハッと我に返った。
「あっ!」
気がついたら目の前に大柄の獣人が
自分の顔を覗き込んでいた。
「…………!!」
「やっと起きたか、おじょうちゃん」
(イケオジの獣人降臨したぁぁぁぁぁ!!)
「もしかして、公爵でいらっしゃいますか?」
「おうよ」
心結は慌てて、ソファーからぴょんと飛び退いた。
「初めまして、桐嶋心結と申します。
この度はお言葉に甘えてここまでやってきてしまいました。
右も左もわからない若輩者ですが……
どうかよろしくお願い致します」
角度45度に腰をおり、公爵に一礼した。
挨拶は基本!第一印象は大事!
「ブハッ……真面目かっ!とりあえず落ち着きな」
公爵は、自分の隣の空いているスペースを
ポンポンと叩き座るように促した。
「俺は、ジェラール=レオポルド。
このペタラ地方一帯を治める領主だ。
おじょうちゃん……
じゃなくて心結ちゃんは、異世界人に間違いないな」
「はい、私はこの世界の者ではありません」
あっさりと認める心結に苦笑しながらも
困ったように眉尻をさげた。
「どうするかなぁ……。
一応イレギュラーすぎる案件なんでな。
国王に心結ちゃんを紹介しなきゃなんねぇんだわ」
ジェラールは頭をガシガシ搔きながら……
尻尾で何度も軽くソファーを叩いた。
(なんですと!!いや、いや、いや。
とてつもなく不穏な事に巻き込まれ案件ですよね!
嫌以外の回答はありませんが……)
「嫌か……?」
どうやら、不機嫌きわまりない顔をしていたらしい。
「へっ?
私また心の声が、ガッツリでていましたか?」
「顔をみればわかる。
国王はいいやつだぞ。周りはともかくとして」
「…………」
(一番ダメなパターンじゃん、それ)
「もちろん俺もその場には同席するから安心してくれ。
それに……こう見えてこの国の宰相だよ、俺」
心結はにわかに信じられない様子で目を見開いた。
「えっ!?
騎士団長とか軍のトップの方じゃないのですか?」
偉丈夫のワイルド系イケオジの公爵様が宰相だと!
燃えるような紅い髪!
右頬から顎にかけて斜めに走る傷!
よく見ると……
右の獣耳の先端の一部分が、欠けて無くなっている。
名誉の負傷なのかな……。
それなのに、見た目を裏切る文系役職……。
「ハハ、よく言われるわそれ。
まぁ、これでも若いころはな……軍部でならしてたくちだ。
今は平和な世の中になったからな。
今度は内部から支える側にまわったというところだ」
「なるほど。失礼いたしました」
ソファーの端で夢から覚めたら、イケオジの公爵様に出会ったよ!!




